ウクライナ戦争を止められるのか──。15日、米アラスカ州の最大都市アンカレジで予定されている米ロ首脳会談は、あまり期待できそうにない。

米ホワイトハウスは会談の成果に対する「ハードル」を下げようと必死だ。


 レビット米大統領報道官は12日の会見で、米ロ首脳会談に関して「トランプ米大統領からロシアのプーチン大統領への聞き取り」と説明。ウクライナ戦争の停戦にはウクライナ、ロシア両国の合意が必要だと強調し、今回の会談での停戦合意には否定的な見解を示した。


 トランプ大統領も「ロシアの出方をうかがう」とのスタンスで、停戦に前のめりな雰囲気はない。ロシア側への譲歩を警戒するウクライナのゼレンスキー大統領や欧州各国への“配慮”に見えるが、ICC(国際刑事裁判所)から逮捕状が出されているプーチン大統領を米国内に招き入れること自体、反発を受けて当然だ。プーチン訪米は実に10年ぶり、米大統領との対面会談はウクライナ侵攻後、初めてとなる。


 トランプ大統領はゼレンスキー氏も交えた3者会談に前向きだったが、プーチン大統領が要請した米ロ2国間での協議に応じたという。国際舞台で孤立を深めるプーチン氏に権力を誇示する晴れ舞台を用意したも同然ではないか。筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)が言う。


■「戦争継続のための密約を交わすことも可能」


「そもそもプーチン大統領はウクライナから手を引くつもりはありませんし、最終的にゼレンスキー体制を転覆したい。金融危機や兵器不足などに喘ぐロシアにとって、会談の狙いは対ロ制裁の解除だけではなく、いかに戦争を継続するか。そのためには、ウクライナ支援に後ろ向きなトランプ大統領をウクライナから切り離したい。

興味深いのは、ロシアに隣接するアラスカの米軍基地で会談が行われること。協議内容が外に漏れず、身の安全が確保された場所ならば、米国から何らかの支援を取り付け、戦争継続のための密約を交わすことも可能です。今のところトランプ大統領はロシアの思惑通りに動かされているように見えます」


 会談の成果がなくても、プーチン大統領に失うものは何もないが、むしろトランプ大統領はメンツ丸潰れだ。


「米政府は即時の停戦合意を否定していますし、そもそも合意について話し合われるのかどうか。プーチン大統領にしてみれば、してやったりの展開でしょう」(中村逸郎氏)


 トランプ大統領はウクライナ戦争について「24時間で終わらせる」と豪語していたが、今年1月に「6カ月は欲しい」に後退。すでに半年過ぎたが、まだまだ時間はかかりそうだ。


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 プーチン大統領は今年5月、安倍昭恵さんとも電撃会談を行っている。その様子と思惑については、関連記事【もっと読む】で詳しく報じている。


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