石破首相の“延命シナリオ”が着々と進行している。
自民党は参院選の大敗を受けて、敗因の分析などを盛り込んだ「総括」を今月末に取りまとめる予定だったが、来月上旬に後ろ倒しする方向で調整に入った。
「石破おろしの“主戦場”である総裁選挙管理委員会は、党所属国会議員と都道府県連から、総裁選の前倒しに関する要望を確認すると決めています。総裁選の前倒し実施には、国会議員と都道府県連代表の過半数の要求が必要ですが、彼らの意思確認は参院選の『総括』が完了してから。『総括』の時期が延期されれば、石破おろしも先延ばしになるわけです」(官邸事情通)
時期が遅れれば遅れるほど、石破おろしの熱は冷めていくとみられている。国民から「いつまで政争を続けているのか」と、反石破陣営に批判の矛先が向かう可能性が高いからだ。
それだけに、取りまとめの後ろ倒しは、石破執行部による“延命策”ではないか、と臆測が飛んでいる。日刊ゲンダイは、参院選総括委員会の委員長を務める森山裕幹事長を電話で直撃。延期の理由を聞いた。
「参院選全体の結果は敗北でしたが、一部の選挙区では好結果を残しています。敗因だけでなく、いい結果が出た原因も調べるべきとの意見が出たため、取りまとめの時期を後ろ倒しした。2~3日程度延期し、結果的に総裁選管理委の意思確認の時期も遅らせることになります」
妙な理由だ。参院選では、確かに改選数3の北海道選挙区で自民候補が2人当選するなど、一部で好結果が出てはいる。
「総括委の会合では複数議員が専門家に質問し、敗因を調査しています。ところが、質問が『何で負けちゃったんですかねえ』などと極めて雑駁で、本気で検証する気があるとは思えない状況。形だけの総括委で時間を稼いでいる間に世論が『石破辞めるな』に傾くのを待つ──、これが執行部の狙いでしょう。現状、世論調査で『石破首相は辞めなくていい』が増えていますから、思惑通りの展開になっています」
時間稼ぎと名前さらし上げ
手が込んでいるのは、総裁選管理委による総裁選前倒しの「意思確認」の方法だ。森山幹事長はこう言った。
「前倒しが必要だと思う議員には署名した上で書面を提出してもらう。一方、必要ではないと思う議員には提出は求めません」
つまり、石破をおろしたい議員は氏名を明らかにし、わざわざ書類を提出しないといけないわけだ。総裁選管理委は、誰が総裁選前倒しを求めたか公表する方針だという。このハードルは想像以上に高そうだ。
「名前がさらされたら地元支援者に『政争に加担したのか』と批判されかねませんし、石破総理が続投となれば人事で干される恐れもある。そこまで覚悟できる議員がどれだけいるか。反石破派の連中はビクビクしていますよ。日和ってダンマリを決め込む議員も出てくるでしょう」
時間稼ぎと反対派のさらし上げで、石破のペースになりつつある。高市早苗前経済安保相や小林鷹之元経済安保相は威勢のいいことを言っていたが、どこまで貫けるか。
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