どういう風の吹き回しなのか。ロシアとウクライナの和平合意に前のめりなトランプ米大統領が21日、自身のSNSに〈侵略国を攻撃せずに戦争に勝つのはほぼ不可能〉などと投稿。

ウクライナによるロシア領への攻撃を容認する姿勢を見せた。


 トランプ大統領はウクライナ戦争をスポーツになぞらえ、〈圧倒的な守備力を誇るチームが相手への攻撃を許されないようなもの〉と主張。〈勝てるわけがない!〉と続け、〈無能なジョー・バイデンがウクライナに「反撃」を許さず、「防衛」だけを強いてきた〉とウクライナ劣勢の責任をバイデン前政権に転嫁した。


 ことあるごとにバイデンをコキ下ろすのはトランプ大統領のテッパンだが、一貫性はない。バイデン前大統領は昨年、ウクライナが米国製の長距離兵器を使ってロシア領内へ攻撃することを容認。この決定に対し、トランプ氏は「戦争をエスカレートさせる愚かな決断だ」と口を極めて批判していた。


 それがここへきて、方針を百八十度転換。ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領と立て続けに会談したものの、肝心のウ露首脳会談はトランプ大統領の思惑通り「2週間以内に実現」(18日時点)するかどうかは不透明だ。悲願のノーベル平和賞受賞に向け、焦りを感じているのか。


 上智大教授の前嶋和弘氏(現代米国政治)が言う。


「結局のところ、『24時間で戦争を終わらせる』と豪語していたトランプ氏としては、一刻も早く戦争をやめさせて、ウクライナから手を引きたい。ノーベル平和賞も国内の支持も欲しい。

しかし、就任から7カ月が過ぎ、プーチン氏と直接会談しても和平への動きはありません。支持者に向けて『頑張るトランプ』を演出しているものの、プーチン氏に足元を見られている状況です」


 ロイター通信(21日付)によると、プーチン大統領は米ロ首脳会談で、▽ウクライナ東部ドンバス地方の割譲▽ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟断念と中立化▽西側諸国の軍隊の国外退去──を要求したという。トランプ大統領が攻撃容認をほのめかした背景には、妥協する気のないプーチンへのイラ立ちがありそうだ。


「そもそもロシアが有利に進めている戦争なのに、プーチン氏が簡単に妥協するはずがありません。ウ露首脳会談の可能性について欧州各国の期待感は薄く、トランプ氏は空回りしているように見えます」(前嶋和弘氏)


 トランプ大統領は和平実現について「2週間以内」に見通しが分かると説明するが、果たして──。


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