最近は俳優が映画監督をすることが増えたが、中でも注目されるオダギリジョーの監督作「THE オリバーな犬、(Gosh‼)このヤロウ MOVIE」が、9月26日から公開される。


 本作に関してオダギリ監督に話を聞く機会があった。

元々彼は映画監督志望だったが、20代で俳優として脚光を浴び、俳優の名声を利用して監督になるのは失礼だと感じ、作り手になりたいという思いにストッパーをかけたという。その後カンヌ国際映画祭に出品された初主演映画「アカルイミライ」(2003年)に出た頃から監督業にも意欲を示し、短編「バナナの皮」(03年)を監督。俳優としては主演作「ゆれる」(06年)がカンヌ国際映画祭に、「蟲師」(07年)がベネチア国際映画祭に出品され、彼の名前は国際的に高まった。俳優業の傍ら2年以上かけて長編初監督作「さくらな人たち」(08年)を完成させ、ロッテルダム国際映画祭でワールドプレミア上映した。しかし幻のさくらを探す男性たちを描いたこのロードムービーは、国内外で賛否両論。酷評も多かった。


 再び俳優業に専念して、中国=香港=ブラジル=日本合作の「プラスティック・シティ」(2009年)や中国=香港=シンガポール=日本合作「ウォーリアー&ウルフ」(09年)、韓国映画「マイウェイ 12000キロの真実」(11年)に主演し、中国映画「サタデー・フィクション」(19年)にも助演。国際的に活躍した後の長編監督作「ある船頭の話」(19年)は、ベネチア国際映画祭に出品され、トルコのアンタルヤ国際映画祭コンペティション部門最優秀作品賞を受賞している。



2021年にはNHKの連続ドラマでは演出・脚本・出演・編集を担当

 ここから監督として注目度が高まり、2021年にはNHKの連続ドラマ『オリバーな犬、(Gosh‼)このヤロウ』の演出・脚本・出演・編集を担当する。こちらは池松壮亮演じる警察犬のハンドラー・一平と、相棒の警察犬オリバーが活躍するコメディーミステリーで、オダギリは一平の目には女好きで着ぐるみを着たおじさんにしか見えないオリバーを演じた。作品は東京ドラマアウォードの単発ドラマ部門でグランプリを受賞し、翌年続編も作られるほどの反響を呼んだ。


 そして今作・映画版は、ドラマに登場した佐藤浩市演じるコニシさんが行方不明になり、一平とオリバーが捜索に乗り出す。

ただこれは導入部で、作品の核になるのは中に入ると不思議な世界へ導かれる謎の扉の存在。常識が通じない不思議な世界を作るため、8月18日の完成披露上映会では、完成品の一歩手前の映像しかお披露目することができなかったほどのこだわりぶりを見せた。


 麻生久美子永瀬正敏などドラマからのレギュラーに、鹿賀丈史深津絵里も加わったクセの強いキャラクターが織りなす、クセの強い物語に、おそらく観客はさまざまな反応を示すだろう。しかしこれまで、オリジナル作品で勝負している彼の監督としての姿勢は頼もしい。監督は作業に時間をとられ、俳優の仕事をセーブする必要があるのでしんどいとオダギリ監督はいう。だがこれまで国内外で作品の評価を積み上げて下地を作って来た彼だけに、今後の活躍にも期待したいところだ。


(金澤誠/映画ライター)


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