自民党総裁選の慌ただしさにカキ消され、すっかりウヤムヤ感が漂う。石破首相が戦後80年の節目に検討している首相「見解」のことだ。
石破首相は8月15日、政府主催の全国戦没者追悼式に出席後、「今までの談話の積み重ねも踏まえながら適切に判断する。戦争の記憶を風化させない、あのような戦争を二度と行わないという観点が大事だ」と意気込みを語ったきり。その後は何も情報発信していない。
石破首相は戦後70年の「安倍談話」以降の新たな談話は不要とする自民の保守派に気兼ねし、閣議決定による公式な「首相談話」の発表を早々に断念。戦後50年、60年、70年の8月15日に続いてきた談話発表を途切れさせた。
それでも石破首相は戦没者追悼式の式辞で、先の大戦の「反省と教訓」の語句を13年ぶりに復活させ、「過去の検証」を重んじる自身の思いをにじませた。日本が降伏文書に調印した9月2日や、9月23日に米ニューヨークで始まる国連総会一般討論演説会への出席に合わせて見解を出す案もあったが、いずれも見送った。
10月4日に自民の新総裁選出後、新たな首相指名選挙まで、残る任期はわずか。石破首相はいつになったら戦後80年の見解を発表するのか。モタモタしているうちに、中国国内では不穏な動きが渦巻いている。
中国は今年を抗日戦争勝利80年の節目の年と位置づけ、9月18日には旧日本軍の通称「731部隊」を題材にした映画が公開される。この日は1931年の満州事変の発端となった柳条湖事件の発生日。
「反日感情が爆発しがちな日だからこそ、9月18日に合わせて『反省と教訓』の首相見解を出した方がいい。反日感情の沈静化はもちろん、日本国内で反中感情があおられることも防げます。安倍談話も、満州事変以降に日本が『進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました』と認めています。“中国に媚びるのか″という保守派の反発を避ける意味合いも含め、広くアジアに向けて見解を出すべきです」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
さあ、石破首相はどうする?
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石破首相のモタモタは、何も「見解」ばかりではない。関連記事【もっと読む】【さらに読む】などで詳しく報じている。