完全にやってしまった。10月4日投開票の自民党総裁選で有力候補のひとり、高市前経済安保相が急減速。
高市氏は地元・奈良県の奈良公園にすんでいる鹿について「気にかけずにはいられない」とし、外国人観光客の中に「足で蹴り上げる、とんでもない人がいる」と発言。神社の鳥居を鉄棒のようにして遊ぶ人がいる、とも言っていた。
いわゆる「外国人問題」を提起する文脈での発言だったが、24日の日本記者クラブ主催の討論会で「根拠はあるのか」と問われると、高市氏は「自分なりに確認した」と言い張った。ところが、いつ、どう確認したのかといった詳細を語ることはなかった。そのため「SNSで流れている動画を見ただけで発言したのでは」(政界関係者)と疑いの目を向けられているのだ。
さらに、首相就任時の靖国神社参拝について、前回総裁選では「参拝する」と言っていたのに、今回はゴニョゴニョ。「適切に判断しなければいけません」と態度を後退させたのは、保守色を出し過ぎないようにし、広く支持を集める狙いがあるのだろう。だが、逆に「岩盤保守層が離れるのは確実」(自民関係者)とみられている。
急に“よそ行きの服”を着たところで、ゴリゴリ右派の本性を隠せると思ったら大間違いだ。
さらに、投票資格のある党員・党友が前回総裁選時の約105万人から14万人も減ったのも高市氏の逆風となりそうだ。
「離れたのは、自民党に失望し参政党や国民民主党に流れた保守層がメインだとみられている。
陣営もドン引き
議員票も厳しくなりつつある。「何より痛かったのは、『鹿ショック』です」と言うのは、ある自民党関係者だ。
「ウケを狙ったのでしょうが、まるで奈良市議選か何かの候補者の演説かと見まがうほどローカルな中身。総裁選で言う話ではない。陣営関係者の一部も高市さんの演説にはドン引きしているほどです。党内で唯一、40人規模の派閥を存続させている麻生最高顧問も高市さんを見限ったと聞きます。議員票もどこまで伸びるのか」
時事通信が25日までに実施した党所属議員への支持動向調査によると、小泉農相が2割超を固めてリード。高市氏は1割強と苦戦する一方、林官房長官が2割弱と健闘しているという。ダークホースとみられる林氏の後塵を拝すとは、やはり「鹿ショック」の影響は大きいのか。
高市氏とは別の候補を支援する自民党議員はこう言う。
「ギョッとしたのは、所見発表演説会で万葉集に収められた大伴家持の和歌『高円のぉ~』と歌いだしたこと。
奇策は完全に裏目だ。
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自民党総裁選めぐる高市氏の“奇策”は、【もっと読む】【さらに読む】で詳しく報じている。