自民党総裁選(10月4日投開票)は後半戦に突入したが、最重要課題のひとつである社会保障改革の議論が深まらない。 28日のNHK「日曜討論」で総裁候補5人は医療・介護・福祉・保育といったケア労働者の処遇改善を訴えたものの、賃金引き上げに必要な財源論はスルー。

「言うだけタダ」の空手形を切ったところで、ケア労働者の不安は拭えない。


 25日、東京・日比谷の野外音楽堂で行われた「もう限界 平和と社会保障を立て直せ! いのちまもる総行動」に、医師や看護師、介護士や保育士の労働団体関係者2200人が参加。政府に対して人材の大幅増員・大幅賃上げなどを求めた。


 主催者あいさつに立った日本医労連の佐々木悦子委員長は「軍事費は過去最高を更新しているのに、医療・社会保障費は抑制され続け、医療機関も介護事業所も経営が立ち行かなくなり、倒産が過去最多となっています」と強調。「もう限界、誰もがそう思っているのではないでしょうか」と訴えた。


 帝国データバンクの調査によれば、今年上半期(1~6月)に倒産した医療機関は全国で35件。倒産が過去最多となった昨年を上回るペースで潰れており、病院の実に7割が赤字という惨状だ。


■人手不足に拍車


 マイクを握った現役の女性看護師は、人材不足がもたらす悲惨な職場環境について、こう語った。


「自分たちのルーティン業務も終わる気がしないのに残業確定。『子どものお迎えどうしよう』『美容院キャンセルだわ』『また夫に何を言われるかな』などいろんなことが頭を駆け巡ります。そのような日々の積み重ねが私たちを燃え尽き症候群やうつ状態、適応障害に陥れるのです」


 ただでさえ人命を預かるというプレッシャーのかかる業務に追われているのに、そこへ低賃金と人手不足が追い打ちをかける。現役のソーシャルワーカーは「多くの介護事業所が報酬改定に不安や怒りを感じている」と訴え、現役保育士も「人件費を削られ、人が足りずに休めない。

トイレに行く時間さえない。給与が安く、生活が困難など、子どもも職員も安心して過ごせない施設が山ほどある」と声を上げた。


 このままでは近い将来、健康保険料を払っていても、子どもを保育園に行かせたくても、まともなサービスを受けられなくなるかもしれない。医療・福祉クライシスが迫っている。


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