【再発見 ちょうど10年前のテレビ】#3
2016年4月14日、熊本地震が起きた。マグニチュード6.5、最大震度は7。
主人公の青木文(石田)は、突然夫を失ってしまう。通り魔による無差別殺人に巻き込まれたのだ。事件の現場に居合わせたのが弁護士の長部瞭司(井浦新)。犯人と揉み合い、結果的に文の夫を殺してしまう。瞭司はショックで声が出なくなり、弁護士を辞めてトラック運転手となった。6年後、文は亡き夫と始めた街道沿いの食堂「ドライブイン・コントレール」を営んでいる。店の客として出会った瞭司に魅かれるが、はじめのうちは、その素性を知らない。一方、瞭司は文が自分が殺めた男の妻だと分かるが、気持ちは彼女に傾斜していく。さらに、かつて事件を担当した刑事・佐々岡滋(原田泰造)もまた文に思いを寄せていた。さて、3人の運命は……というのがこのドラマの展開だ。
石田ゆり子という女優には、実年齢にかかわらず“永遠のお嬢さん”というイメージがある。それは一つの強みだが、役柄の幅を広げたいという意欲もあったはずだ。少し前から、彼女なりのチャレンジが続いていた。
たとえば、14年の岡田恵和脚本「さよなら私」(NHK)。高校時代からの親友同士が41歳になって再会する。石田は独身の映画プロデューサー、永作博美は専業主婦だ。ところが、ふとしたきっかけで永作は夫(藤木直人)の浮気相手が石田であることに気づく。
2人は言い争うが、突然互いの心と体が入れ替わってしまう。しかも、永作の体(心は石田)が、がんに侵されていることがわかるのだ。難しい役柄だったが、石田は果敢に挑んでいた。
そして「コントレール」では、石田が演じる45歳の未亡人が何とも魅力的だった。自分の思いを表に出すこともなく、淡々と日々を送る文。
瞭司にとっても、出会ってはならなかった女性との危うい恋だ。失声症だった瞭司が、ベッドの上で文の名を呼べた時の戸惑いと喜び。脚本の大石静はその複雑な心情も丁寧に書き込んでいく。
大人の女性の内なる「清純とエロス」を、抑制の利いた演技で表現する石田。鮮やかな軌跡を残し、やがて消えていくコントレール(飛行機雲)から目が離せなかった。
(碓井広義/メディア文化評論家)

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