【その他の写真:質疑応答を行うDe Art Filmsのカウンゴンティンさん(右)とパインサンさん(右から2人目)と茂野さん(左から2人目)】
新聞記者志望だった茂野さんはヤンゴン編集プロダクションのインターンシップ生として2018年4月に来緬。このインターンシップでは記者としての業務に加え、自ら設定した課題に取り組む事が出来る。茂野さんは以前から興味のあった映画制作を課題とした。
茂野さんが映画制作を志したきっかけとなったのは2017年に開催された国連UNHCR難民映画祭だ。茂野さんは映画祭の運営ボランティアに参加。活動の中で映画「アレッポ 最後の男たち」で多くの観客が感動し、号泣しているのを見た。その時メディアが持つ人の心を動かす力を感じた。そして自らもまた人の心を動かす映画を作りたいと考えたと語る。
一作目「ウェルカム・トゥ・ツナミヴィレッジ」では発展するヤンゴンのすぐ南にある貧困地域のダラ地区で、「ぼったくりガイド」と呼ばれる人々を描いた。茂野さん自身も来緬2日目でこのガイドに連れられ、ダラ地区を訪問した。ぼろぼろの家屋と向こうに見えるヤンゴンの高層ビル。
二作目の「アンセスターズ・メモリーズ」は、日本占領期のミャンマーを、当時を生きていた人々の記憶から探っていく作品だ。茂野さんはミャンマー滞在中に、何度かミャンマー人と戦争の話をする事があった。彼らは「日本の占領については気にしていないよ」と語る一方で、複雑な表情をする。一人の日本人として、ミャンマーでの戦争をどう捉えるべきかを知りたいと思い、今回の映画制作に踏み切った。本作はヤンゴン編集プロダクションとミャンマーの映像制作会社De Art Filmsの共同制作だ。
茂野さんにとって今回が初めての映画制作だ。一作目では無我夢中で取り組み、苦労を感じることは無かった。しかし二作目ではミャンマー人との共同制作になり、休憩に対する考え方の違いを感じた。撮影を迅速に進めたいときでも、彼らが頻繁に休憩を取るのがストレスだった。またクラウドファンディングでも資金が中々集まらず、多くの関係者にお願いをするのも大変だったという。
茂野さんはミャンマーでの一年のインターンシップを経て、貴重な経験を与えてくれたミャンマーに改めて感謝したいと語る。
【取材/執筆:鈴木蒼】