世界3大映画祭の一つであるカンヌ国際映画祭が、今年も5月14日(火)に開幕となる。今年の「コンペティション部門」には、フランシス・フォード・コッポラ監督の「メガロポリス(原題)」、ヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが3度目のタッグを組んだ「カインズ・オブ・カインドネス(原題)」など、名匠による意欲作がズラリと並び、日本からは「ある視点部門」に奥山大史監督の「ぼくのお日さま」が選出されている。
「DISTANCE」(2001年)が「コンペティション部門」に出品され、「誰も知らない」(2004年)では柳楽優弥が最優秀男優賞を受賞。「そして父になる」(2013年)は審査員賞、「万引き家族」(2018年)は最高賞のパルム・ドールを受賞し、自身初となる韓国映画「ベイビー・ブローカー」(2022年)ではソン・ガンホが男優賞を受賞するなど、是枝監督にとってカンヌ映画祭はとても縁の深い映画祭だ。そんな中で「怪物」は、カンヌ国際映画祭で脚本賞と独立部門「クィア・パルム賞」の2冠を獲得。またしても是枝監督作品が、同映画祭で大きな存在感を示したのだ。
(C)2023「怪物」製作委員会
「花束みたいな恋をした」(2021年)やドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021年)などで圧倒的な人気を博す脚本家の坂元裕二と、是枝監督が初タッグを組んだ「怪物」。
是枝監督が自身以外の脚本で映画を撮るのは、デビュー作「幻の光」(1995年)以来初めてのこと。坂元が、プロデューサー陣と企画開発したプロットを是枝監督に持ち込み、初タッグが実現した。是枝監督が「リスペクトしている」と熱く語る坂元の脚本が、なんとも秀逸。観客はまずシングルマザーの視点で子どもたちや教師を見つめつつ、"怪物"の正体を探していこうとする。
(C)2023「怪物」製作委員会
しかし徐々に様々な人の背景や本音が浮かび上がり、観ているこちらも物語に激しく巻き込まれながら、一方からしか物事を見ていなかったことに気づかされていく。
音楽を手掛けたのは、2023年3月に亡くなった坂本龍一。
(C)2023「怪物」製作委員会
奇跡とも言うべき布陣が集結した本作は、役者たちも豪華だ。シングルマザーの早織を演じるのは安藤サクラ。我が子の異変を感じ、担任教師や校長に抗議をする母親の怒りや力強さ、戸惑いを見事に体現し、第47回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた。
安藤と永山の掛け合い、黒川想矢と柊木陽太が表現した2人の少年の心の葛藤も、忘れられない余韻を残す。豪華なメンバーのアンサンブルを堪能しつつ、自分の中に怪物はいないのか?と問いかけたくなるような1作だった。
文=成田おり枝
放送情報【スカパー!】
怪物
放送日時:2024年5月25日(土)20:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります