第二次世界大戦の終戦から80年を迎えるこの夏、日米開戦の裏側を描いたNHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」が、8月16日(土)・17日(日)に2夜連続で放送される。
猪瀬直樹のノンフィクション小説「昭和16年夏の敗戦」を原案に、演出、脚本・石井裕也×主演・池松壮亮で映像化した本作。

真珠湾攻撃の8ヶ月前となる1941年4月、若手官僚、報道人、軍人といった次世代を担うエリートたちが、将来の日本のリーダーとなるべき人材の養成目的で新設された首相直轄機関"総力戦研究所"に集められる。召集の目的は"模擬内閣"として軍事・外交・経済などの各種データを基に日米が開戦した場合の戦局を予測すること。
もしシミュレーションの結果が上層部の意に沿わない場合、自分たちの身に危険が及ぶのではないかという緊張感を覚える中、議論を重ねる若きエリートたち。そして導き出された日本の敗戦という結論を"本物の内閣"に伝えるのだが...。
豪華俳優たちが名を連ねる本作で主演を務めた池松が演じるのは、産業組合中央金庫(現・農林中央金庫)調査課長の宇治田洋一。模擬内閣の中で総理大臣を任されるものの軍への反感からシミュレーションには消極的だったが、厳しい現実を知り、開戦すべきでないという思いに駆り立てられていく。

池松と石井監督といえば、ドラマ「エンドロール~伝説の父~」(2012年)を皮切りに、「ぼくたちの家族」(2014年)、「夜空はいつでも最高密度の青色だ」(2017年)、「愛にイナズマ」(2023年)、「本心」(2024年)など、これまでに何度も仕事を共にしてきた盟友。「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」が記念すべき10度目のタッグとなる。
「アジアの天使」(2021年)の際には、諸事情によりクランクインまで3年がかかり、撮影自体も3ヶ月も伸びたそうだが、それでも完走しきったというエピソードからも互いへの全幅の信頼関係が見て取れる。
自身にとって初めて戦争を扱った今作において池松を主演に抜擢した石井監督と、その思いに応える池松。複雑な過去や思いを抱える主人公を2人がどのように作り上げているのか、名タッグだけに期待は高まるばかりだ。
そんな主人公の人物像を描く上で欠かせないのが妹弟の存在。日中戦争で夫を失って実家に戻り、娘と兄と弟との暮らしの中、権力に抗する兄を心配しつつも敬い、支える妹・小百合を二階堂ふみが演じる。

弟・英二には話題作への出演が相次ぐ杉田雷麟を配役。兄と異なる楽天的な性格を持つ作家志望の若者で、出版社への就職が決まった矢先に予想だにしない展開に巻き込まれていく。
総力戦研究所に招集された若きエリートたちを演じる俳優陣も豪華で、模擬内閣で"内閣書記官長兼情報局総裁"として、宇治田の苦悩を誰よりも近くで目の当たりにし戦友のような存在になっていく樺島茂雄を仲野太賀が演じる。


模擬内閣の "海軍大臣"として戦況を冷静に見定める海軍少佐・村井和正役には岩田剛典、"陸軍大臣"として植民地にされる前に日本は先に動くべきだと開戦を主張する陸軍少佐の高城源一役に中村蒼、"金で世界は動く"を持論に"企画院総裁"を担当する峯岸草一役に三浦貴大...と実力派が脇を固める。

(C)JUNJI HATA
さらに昭和天皇を演じる松田龍平や東條英機役の佐藤浩市といった大御所まで、右も左も豪華俳優たちばかり。重厚な演技を見せてくれることだろう。

石井監督は「開戦前夜の人間たちの様々な葛藤は、今の私たちにとって決して無関係ではありません。当時の日本社会に漂っていた不気味な"空気"は、確実に引き継がれて今の社会にも存在するからです」とコメント。過去のこととして片付けられない責任ある題材に挑んだスタッフ、キャストたちの思いを、ドラマを通じて感じ取ってほしい。
文=HOMINIS編集部
放送情報
NHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」
2025年8月16日(土)・17日(日)21:00~ NHK総合にて放送