【HOMINISオリジナルインタビュー】ジョイマン・高木晋哉

「好き」の気持ちを深く掘り下げ、新たな「好き」と出会うきっかけを届けるHOMINISの本企画。

今回は、ラップネタで大ブレイクし、所属している吉本興業の『営業&学園祭出演回数ランキング』にて、2023・2024と2年連続第1位を獲得したジョイマンの高木晋哉が登場する。

彼が幼いころに「好きだったもの」は「本」だという。高木の「読書」の歴史と「文章を書くこと」への想いについて話を聞いた。

――高木さんと「本」との出会いを教えてください

「小学生のころは、親から『マンガを読まずに本を読め』と言われていたこともあって、図書室にあるような『ズッコケ三人組』とか『かいけつゾロリ』とか、そういった児童書ばかり読んでいました。中学になってからはマンガを読みはじめ、高校、浪人、大学生になると小説も読んでいましたね」

――高校生になって小説を読むようになったのは、何かきっかけがあるんですか?

「めちゃくちゃ友達がいなかったんです(笑)。高校は一学年1000人くらいいる神奈川のマンモス校だったんですけど、そこでひとりも友達ができなくて...。3年間、休み時間は机に突っ伏しているような生徒でした。そんなときに、太宰治とか村上春樹を読みだして、ハマっちゃった感じです」

【ジョイマン高木】授業に出ずに図書館で本を読んでいた大学時代「携帯を盗まれて...」
ジョイマン高木晋哉、小説を読むようになったきっかけとは?
ジョイマン高木晋哉、小説を読むようになったきっかけとは?

――たとえば、太宰治作品のなにが高木さんに刺さったと思いますか?

「やっぱり『自分ダメだな』みたいなものが共感できたんじゃないかなと思います。特に太宰治の本は読んでいて脳汁が出る感覚がありました。当時の心境にあっていたし、自分自身を投影していたと思います」

――大学時代も本を読まれていたと

「大学は結果的に3年在籍したんですけど、親には大学に通っている感じを出しつつ、ほぼ授業を受けていませんでした。学校が終わるまで、大学の図書館で本を読んで時間を潰していましたね。"大学には行っている"ということで自分を納得させていました」

――本に関する学生時代の思い出はございますか?

「大学にある図書館では、本当に夢中になって本を読んでいたんです。当時、レアな機種だったドコモのNシリーズの携帯を横に置いて読んでいたんですけど、知らないあいだに盗まれて...。

帰るときに"ない!"って気づきました(笑)。今も行方は分かりません」

――当時、本はご自身の支えになったのではないでしょうか?

「支えでしたね。そのときからナインティナインさんのラジオを聴いていて、お笑いも好きでしたけど、本を読んでいて楽しかった思い出があります」

――芸人さんとなり、20、30代となって、本との関わり方はどうなっていきましたか?

「そこから全然読まなくなっちゃいました。その後、一気に仕事が増えて、一気にバタッとなくなったときに、ヒマになったんで(笑)、また本を読み始めました。僕は同じ本も読むタイプなんで、いまだに太宰治の『人間失格』を読みますし、昔の村上龍の作品も読んでいます」

【ジョイマン高木】授業に出ずに図書館で本を読んでいた大学時代「携帯を盗まれて...」
本を読むジョイマンの高木晋哉
本を読むジョイマンの高木晋哉

――年齢を重ねたいま、学生時代に読んだ本を読むと、やはり感覚は違うものですか?

「入り込み方が違うなって思います。"あのときこう思っていたよな"と思い出すんですけど、いま完全にその気持ちにはなれないなって。もちろん、いまだに内容は面白いんですけど、学生時代のように、他のものが何も見えなくなる...みたいなことはなくなりましたね。だから、携帯を盗まれることはもうないと思います」

――(笑)。現在、本とはどんな関わり方をされているのでしょうか?

「たまに本屋に行って、気になるものがあったらジャンルを問わずに買っています。本当にジャケ買いのように購入することもあるし、タイトルを見て買うこともありますね。

昔は紙にこだわりがあって『この手触りがいいんだ』とか思っていたんですけど、今はiPadでも読んでいます。かさばらないし、いろいろ便利じゃないですか。

そうやって昔とくらべて、肩肘張らずにサラッと読めるようになって、フットワークも軽くなったなと思います。今まで読んでなかったジャンルもスッと手にとるようになりました」

――「本を読む」という行為は、ご自身の芸にどんな影響を与えていると感じられますか?

「僕らのネタが『言葉遊び系』なので、その引き出しの数に関係している気はします。"この言葉とこの言葉をくっつけたら面白いんじゃないか"というとき、やっぱり本の影響を感じるし、本をたくさん読んでいてよかったなとも思います。

あと、文章を書くこともあるのですが、村上春樹さんの本に影響を受けているなって自分でも感じますね。SNSでポエムのようなものを投稿していた時期に、文章を書く仕事をいただいたんですが、いざ書いてみると"文体が村上春樹じゃん"みたいな(笑)。知っている人には分かるくらい完全に影響されています」

【ジョイマン高木】授業に出ずに図書館で本を読んでいた大学時代「携帯を盗まれて...」
Twitter(現:X)のポエムが話題になった高木晋哉
Twitter(現:X)のポエムが話題になった高木晋哉

――お話にも出ましたが、高木さんのSNSのポエムはとても話題になりました。文章を書くようになったきっかけは?

「当時でいうTwitter(現:X)ですね。2010年、仕事がなくなりかけていた時期からTwitterとかブログを書いていたんですけど、やっぱり仕事があるときって『こんなテレビに出ました』、『こんな営業に行きました』とか、仕事のことを書いていたんですよ。でも仕事がなくなって書くこともなくなって、何を書こう...と思ったときに、ポエムチックなものにしようと。これって、ゼロから生み出せるし、あることないこと書けるじゃないですか。だから"なにもしてなくても書けるわ!"と始めたのが最初ですかね(笑)」
<高木晋哉の公式Xはこちら>

――それからどんどんハマっていったと

「そうですね。たまにある営業で『お客さんがこの人数しかいなかった』とか話題ができたとき、むちゃくちゃ脚色して、なんとか140文字におさめて...。

何もなかったのに何かあったかのように書けるので『これはいいぞ』と思いました(笑)」

――ストレートに書くのではなく...ということですね(笑)

「"ドラマティックにしよう"と思って書いていたんですけど、最初は病んでると思われていました(笑)。でもそれを続けていたら見てくれる人も増えてきて、文章を書くのって楽しいなと思えましたね」

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高木晋哉が語る文章を書くことの魅力とは?
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――たとえば「小説やエッセイに挑戦してみたい」と思ったことはないのでしょうか?

「一度、『小説を書いてみませんか?』と言われたことがあって頑張って書いたことがあったんですけど、考えれば考えるほどお笑いの仕事ができなくなっちゃって(笑)。結局それはどこにも出さず、途中で断念しました。僕は本当に不器用で、どちらか一方しかできないんです。小説を書いている芸人はいっぱいいますけど、すごいなと思いますよ」

――最後に文章を書く魅力を教えてください

「自分と対話できるところじゃないですかね。書いていて"この言い回しどうしよう"と考えていくと、自分のなかにフワーッと入っていく感じがして...。やっと見つかったとき『あ、自分ってこんなこと思っていたんだ』と分かる瞬間があるんです。文章を書くことにどっぷり浸かれたら楽しいんでしょうけど、でも、僕の場合、お笑いができなくなるので、難しいところですね(笑)」

取材・文=浜瀬将樹 撮影=MISUMI

リリース情報

「ここにいるよジョイマン・高木のツイート日記 2010-2020」
https://books.yoshimoto.co.jp/yoshimoto-books/post-138.html

高木晋哉の公式Xはこちら
https://x.com/joymanjoyman

高木晋哉が「今のわたしをつくったもの。」について語ったnote
https://note.com/sptv_note/n/ncd0d51f6f8c1

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