この作品をもって『ジュラシック・パーク』『ジュラシック・ワールド』
それぞれ3部作、計6作品が完結した事である。
製作総指揮は80年代以降のアメリカ映画界を牽引してきた巨匠スティーヴン・スピルバーグ(1946年12月18日生れ)である。
(スティーヴン・スピルバーグ イラストby龍女)
最終作は一番、多くの種類の恐竜が出てくるそうだ。
現時点では観ていないので、内容には触れない。
正直、まともに映画館で観たのは『ジュラシック・パーク』の第1作だけである。
『ジュラシック・パーク』のテーマが恐竜と人間のバトルがメインになっている。
筆者は人間が登場する恐竜の映像には正直興味が無い事に気づいてしまった。
恐竜の生態を動物ドキュメンタリーのように眺める方が楽しい。
筆者は、小学校低学年の頃に恐竜にハマっていた。
上野の科学博物館に月1ペースで通っていた。
筆者は中学時代はすっかり熱が冷めて、実は洋楽に夢中だった。
それでも美術の授業で切り絵を教わると、恐竜を画題として選んだ。
今でも自宅のトイレに額装してある。
その様子を写真で撮影した。

(約30年前に筆者が描いた恐竜の切り絵。
左手前からアロサウルス、ヴェラキラプトル、アーケオプテリクス
右手前からブロントサウルス、イグアノドン、ティラノサウルス
撮影by龍女)
高校生2年生の夏に、第1作目の『ジュラシック・パーク』が公開された。
映画館へ行って観賞すると、恐竜が大画面狭しと堂々と歩いている姿に感動した。
監修に本物の恐竜学者がついている。
人間と大きさの比率も正確なのだ
さて、30年前の切り絵について、話を戻そう。
恐竜好きならこの絵がおかしい事に気づく事だろう。
6種類の恐竜が生息していた時代は、バラバラである。
筆者が好きだった種類をあえて、1枚の絵にまとめて構成した作品である。
今回は久々に恐竜の絵に挑戦してみた。
偶然であるがシリーズ6部作と数字も一致している。
6種類を一つずつ描き直した、連続絵に仕立ててみよう。
約40年ぶりに、最新研究に基づく学研の恐竜図鑑
『恐竜 新版 学研の図鑑LIVE』(学研プラス)
を電子書籍版で購入した。
あの頃は図鑑では無く安い学習漫画を親に買って貰った。
今回は自腹で図鑑が買えて嬉しい。
1種類ずつ最新の研究に基づくイラストを参考にしながら複製画にならないよう、恐竜の研究の進化を分かり易く表現してみよう。
まずは恐竜研究の歴史の始まりになったあの恐竜の復元イラストを参考にして自分なりにアレンジしてみた。
もし、恐竜に興味の無い人に
「一番好きな恐竜は何?」
と質問された場合、想定している答えは
「イグアノドン」
である。
残念ながら、『ジュラシック・パーク』には登場しない。
(やっと、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』に出てくると聞いて、頭を抱えた)
理由は簡単で、恐竜研究が始まったきっかけの種の一つだから。
また筆者が恐竜好きの女子小学生の時も、現在でも、イラストが描きやすい。
体を張って、すぐに3段階で恐竜の仮説モノマネもできる。
非常に分かり易い種類である。
コツは最初はタモリが得意なイグアナのモノマネのコピー。
2番目は70年代の想像図を真似て、前傾姿勢で立って親指を突き立てる。
最新は、相撲の立ち会いの待ったなしの姿勢に似ているが親指を地面に付けなければ、バッチリである。
1822年、イギリスの医師ギデオン・マンテル(1790~1852)は、イグアナの歯の形に似た化石を発見した。
ところが歯の化石の大きさは、イグアナの20倍の大きさであったと言う。
学名であるイグアノドンとは「イグアナの歯」と言う意味である。
後にイグアナとは関連性は薄い事が分かってきた。
ギデオン・マンテルは歯以外で角の化石が発見された事に注目し、アフリカの生息するサイのように鼻筋についていると仮説を立てていた。
ところが、マンテルの死後、1878年にベルギーのエノー州にあるベルニサール炭鉱から30体以上の完全な全身骨格化石が発見された!
恐竜の化石で全身骨格が発見される事は希で、30体もあった事は大発見である。
ここでとんでも無い事実が分かった。
角は鼻筋ではなく、親指だった。
この発見が大きく恐竜の想像図の変化をもたらした。
恐竜は当初爬虫類の先祖でトカゲのような生き物として考えられていたので、尻尾を引きずった姿勢で歩いている姿で復元されていた。
イグアノドンは前脚と後ろ脚の長さも異なっていたので二足歩行で復元されるようになった。
ところが他の恐竜の発見も進んでいくうちに、再び四足歩行に戻った。
非常に素早く動けそうな四足歩行に想像図が更に変わったのである。

(イグアノドンの想像図の変化 イラストby龍女)
次はそのきっかけになった恐竜の全盛時代に存在した鳥類の代表である始祖鳥について観ていこう。
始祖鳥は厳密には恐竜では無い。
恐竜全盛時代に存在した鳥類の最初の種と考えられていた。
学名はアーケオプテリクスである。古代ギリシャ語で「古代の翼」という意味だそうだ。
1860年にドイツのバイエルン州ゾルンホーフェン地域のジュラ紀後期(1億4600万年から1億4100万年前)の地層から発見された。
同じ頃、一部の学者が恐竜の子孫が鳥類と言う仮説を唱えていた。
恐竜と鳥類の親和性は認められていたものの仮説を証明する新しい化石の発見が無かった。
アーケオプテリクスの化石はジュラ紀だったが、最古の羽根を持った恐竜の化石群が白亜紀後期と新しかったからである。
2009年に中国東北部のジュラ紀後期(1億6100万年から1億5100万年前)の地層から、現在アンキオルニスと呼ばれる化石が発見された。
ただ、この化石とアーケオプテリクスの関係はまだ研究中で分からない点は多いようだ。
筆者は重い荷物を抱えがちなオタクの習性か、カバンの中でもリュックサックが好きで、買わないまでもついつい新しいリュックの機能を観るのが趣味なところがある。
その中でアウトドアブランドアークテリクスの存在を知った。
これは、カナダのブランドで、クライミングをするために作られたギアが基本に作られている。
ブランド名はアーケオプテリクスを省略した名称だ。
ブランドのロゴも、アーケオプテリクスの標本の中でも、状態が良いとされるベルリンのモノが採用されている。

(始祖鳥ことアーケオプテリクスの想像図と、文化への影響とは? イラストby龍女)
恐竜の仮説が更新され続ける理由は化石の新発見にある。
それを象徴するような巨大恐竜にまつわる項目があるので、次に取り上げよう。
竜脚形類はかつて雷竜などと呼ばれた首の長く巨大な恐竜の種族をさしている。
19世紀後半、南北戦争が終わり、アメリカ合衆国の西海岸でゴールドラッシュが起こった。
金を始めとする鉱山資源がアメリカの資本主義の発展に寄与した。
その副産物があった。
それが恐竜の化石である。
恐竜だけが発見されたわけでは無い。
石炭がよく取れる地層は古生代の石炭紀と命名され、爬虫類の前の段階である両生類が全盛を迎えていた時代と分かってくる。
化石燃料を採掘した時の副産物だったわけではある。
恐竜は中生代の三畳紀・ジュラ紀・白亜紀に生息した。
19世紀後半に化石戦争と呼ばれる古生物学上の新発見を争う二人の学者の戦いがあった。
名門大学群アイビーリーグに属するイエール大学の
オスニエル・チャールズ・マーシュ(1831~1899)。
一方もアイビーリーグのペンシルバニア大学を主に拠点にしていた
エドワード・ドリンカー・コープ(1840~1897)である。
この両者が新発見した恐竜もそれ以外の古生物の種類は100種類以上を越える。
その中で象徴的な古生物学の論争が今までも尾を引いているのが、アパトサウルスとブロントサウルス問題である。
一時期アパトサウルスに一本化するかと思われたら、やっぱり別種類では?
と言うのが現在の状況である。
参考文献の最新の学研の図鑑を観ても、筆者には違いがピンときていない。

(化石戦争の当事者オスニエル・チャールズ・マーシュとエドワード・ドリンカー・コープ イラストby龍女)
さて、『ジュラシック・パーク』の「ジュラシック」とはジュラ紀のと言う意味である。
ジュラ紀を代表する肉食恐竜、アロサウルスについて紹介しよう。
アロサウルスはジュラ紀に恐竜の食物連鎖の頂点にいたとされる肉食恐竜である。
アロサウルスは、アメリカとポルトガルで発掘された。
1877年に初めて報告したのは、前ページでも取り上げたオスニエル・チャールズ・マーシュである。
実は日本でもアロサウルスの仲間が発掘されている。
2020年に学名がフクイラプトル・キタダニエンシスとなった全身骨格の化石である。
学名は、発見場所が福井県勝山市北谷町だった事に由来している。
アロサウルスより後の、中生代白亜紀前期の日本に生息していた。
日本の恐竜の発掘は、ここ30年でめざましく発展しており、その中心地が福井県である。
その為に福井県立恐竜博物館が日本最大級の恐竜博物館である。
同じ勝山市北谷町でイグアノドンの仲間のフクイサウルス(1989年発掘)
2007年にはフクイティタン
2015年に命名されたコシサウルスはフクイサウルスの幼体の可能性がある。

(アロサウルスとフクイラプトル イラストby龍女)
アロサウルスに関して、恐竜好きな小学生の妄想あるあるが
アロサウルスとティラノサウルスが戦ったらどっちが強いのか?
である。
しかし、アロサウルスはスリムで手が長く素早く動けそうな感じ。
ティラノサウルスは極端に手が短く巨体でどこまで動けたか研究の余地がある。
ジュラシック・パークが始まった90年代の大相撲に例えると、アロサウルスが舞の海、ティラノサウルスが曙のような違いがある。
当時の両者の取り組みを思い出すと、スリムなアロサウルスでもティラノサウルスに勝てる戦術がありそうだ。
千代の富士が強いか白鵬が強いかと言う時代の代表する強い力士を比べるような話で、実は安易に結論を出してはいけない論争であろう。
ただの推しの恐竜話に終わるだけだ。
次は恐竜界のスーパースター、ティラノサウルスについて古生物学とはまったく別の話を取り上げよう。
ティラノサウルスは最も有名な恐竜である。
4ページ目に取り上げたエドワード・ドリンカー・コープが脊椎の一部を発掘しているが、その時の学名は別の名前だった。
エドワード・ドリンカー・コープの弟子のヘンリー・フェアフィールド・オズボーン(1857~1935)によって、複数の同種の化石の発掘を経て今のティラノサウルス・レックスと命名され、統一された。
古生物学に詳しくなくても、度々特撮映画にモデルにした怪獣が登場していたので文化への波及もあった。
その顕著な例を取り上げよう。
1968年にデビューしたグラム・ロックのバンド、T・REXは結成当初はティラノサウルスの正式学名に由来したティラノザウルス・レックスと名乗っていた。
スティーブ・ペレグリン・トゥックとのアコースティック・デュオであったそうだ。
1970年にパートナーをミッキー・フィンに変えて音楽性をエレクトリック路線に変更したときに今も知られているバンド名に改称している。
ヴォーカル・ギターのマーク・ボラン(1947~1977)は、30歳の誕生日の2週間前9月16日に交通事故で死んでしまう。
この1ヶ月前の1977年の8月16日にエルヴィス・プレスリーが亡くなっている。
1977年はロック史おいても重要な分岐点となっている。
彼の残した名曲の数々の中で"20th Century Boys"は浦沢直樹の漫画を映画化した『20世紀少年』の題名の由来になっている。
ティラノサウルスは前の脚が極端に小さいので、二足歩行は一貫している。
『ジュラシック・パーク』の頃に前傾姿勢で足が速いと考えられるようになった。
21世紀に入ると、始祖鳥の項で取り上げたように、恐竜と鳥類の親和性が高くなったため、頭から背骨のラインにかけて一部羽毛が生えていたのではないかと考えられるようになった。

(今のティラノサウルスの想像図とロックバンドのTーREXのマーク・ボラン イラストby龍女)
最後にティラノサウルスと並び、シリーズ通して登場するヴェロキラプトルについて取り上げよう。
すでに、筆者の世代がバレているが
最新の想像図の第一印象は、ヴェロキラプトルはまるでシラケ鳥をリアルな感じにしたようにみえた。
今放送されている地上波のバラエティ番組のキャラクターに例えると、
江戸川の黒い鳥キョエちゃんをリアルにした感じにも見える。
恐竜はでかいイメージがあるかもしれないが、種の割合だけ観ると圧倒的に小さなサイズの方が多い。
ヴェロキラプトルは『ジュラシック・パーク』『ジュラシック・ワールド』シリーズにティラノサウルスと並び、全作に登場する。
『ジュラシック・パーク』のテーマである人間と恐竜の関係の変化を象徴するようなキャラクターの恐竜だ。
しかしそれはあくまでも作品の世界観の中での変化である。
ヴェロキラプトルは中国のモンゴル自治区のゴビ砂漠で発掘された比較的小型の肉食恐竜である。
中国のゴビ砂漠は、恐竜の発掘場所としてアメリカに次ぐ最大級の場所である。
筆者は行った事はないが、80年代にはすでに有名な発掘現場だったので、ゴビ砂漠は小学校の高学年で世界の地理の授業を受ける前から、知っていた名称である。
中国の経済発展と共に化石の発掘の資金が提供されるようになったお陰で、中国の恐竜の化石の新発見の数々で恐竜の生態の仮説が次々と塗り替えられている。

(ヴェラキラプトル。『ジュラシック・パーク』と最新研究の想像図の違い イラストby龍女)
映画としては『ジュラシック・パーク』、確かに面白かった。
しかし、高校生の頃にこの映画に出逢ったのが遅すぎもし、早すぎたとも言える。
『ジュラシック・パーク』に高校生位の年齢の登場人物は出てきたであろうか?
子役が二人いた。
『ジュラシック・パーク』を作ったジョン・ハモンド(リチャード・アッテンボロー)の孫の姉弟
アレクシス・マーフィ(アリアナ・リチャーズ 1979年生れ)
ティモシー・マーフィ(ジョゼフ・マゼロ 1983年生れ)
演じたアリアナ・リチャーズは公開年1993年当時14歳、ジョゼフ・マゼロは10歳である。
ジュラシック・パークの主人公のアラン・グラント(サム・ニール)は恐竜好きの子供がそのまま大人になった人物で、実は子供が苦手である。
現在の筆者は精神的には大人になったので今は子供に苦手意識は無い。
筆者が高校生だった時に観た『ジュラシック・パーク』で恐竜におびえまくっている子役や自分の欲望のせいで恐竜に襲われている大人の姿を見るのが苦痛だったのかもしれない。
せっかく大人になろうとしている年齢に観るのは不向きの作品だったのだ。

(世界一有名な古生物学者ジャック・ホーナーと、彼をモデルにしたサム・ニール演じるアラン・グラント イラストby龍女)
筆者は両親と共に小さな野獣である猫のブエナと同居している。
筆者の父はブエナに嫌われている。
その理由は自分の都合で大きな声で近づいて追いかけるからである。
こうした日常を送っていると、わざわざ動物に悪さをして襲われる人間を映画館で観に行きたいとは思わない。
襲われるのは当然で別に驚きもしない。
筆者は非日常を求めて恐竜をめでたいのに、人間と戦うところを見世物として喜ぶ気になれないのだ。
一番タチが悪いのは、争いを他者にさせて笑って喜んで高みの見物をしている権力者である。
『ジュラシック・パーク』シリーズにはその手の人物が繰り返し出てくる。
現実にそんな人間に被害にあった事がある筆者には、辛くて観れなかった事が今ようやく分かったのである。
参考文献:『恐竜 新版 学研の図鑑LIVE』(学研プラス)
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