さまざまなゲームに登場するヒロインたちの魅力をあらためて掘り下げていく連載企画「僕たちのゲームヒロイン録」。第18回は、1998年にPlayStationで発売された『みつめてナイト』のソフィア・ロベリンゲを紹介します。

近世ヨーロッパ風の世界で紡がれる重いドラマ
『みつめてナイト』は、『サクラ大戦』をセガと共同制作したレッドカンパニー(現 レッド・エンタテインメント)と『ときめきメモリアル』で知られるコナミの共同制作による恋愛シミュレーションゲームです。『ときメモ』は現代の架空の高校での明るいラブコメが描かれましたが、本作はタイトルから受ける印象とは裏腹にシリアスで重い物語が数多く用意されていました。

物語の舞台は近代ヨーロッパ風のドルファン王国。主人公は、功績次第で外国人でも騎士に取り立ててもらえるという話を聞いてこの国にやってきた元傭兵の東洋人です。

ところが、ドルファン王国は外国人を流入させすぎたせいで治安が悪化。さらに、仕事を取られて貧困にあえぐ一部の国民がそんな外国人たちに強く当たり、外国人を追い出したい貴族たちもそんな現状を見て見ぬフリ…というのですから、『ときメモ』から入った人はそのギャップにビックリしたことでしょう。


ソフィア・ロベリンゲはそんな本作のメインヒロインで、そして実に不幸の塊でした。元騎士の父親は大きな敗戦の責を負わされて軍を除隊され、今は酒浸りの日々。母親は病弱で医療費がかかり、弟は心の病。そうしてかさみ続ける借金を返済できず、貴族の三男坊であるジョアンとの望まぬ婚約を受け入れるしかない…という超ハードモードの日々を送る15歳の少女です。

そんな彼女がチンピラに絡まれているところを主人公が助ける…というのが2人の出会いですが、名前を聞いてくる彼女への応対を決める選択肢で「貴様に教える名などあるものか!」を選ぶとソフィアルートへの道がボッキリ折れて、彼女は転落人生を真っ逆さまです。

厳密には、ゲーム内でそういう描写があるわけではないのですが、本稿で彼女がその後に歩む激動の日々を知っていただければ、そう言いたくなる気持ちが分かっていただけると思います。


爆弾テロに国外退去…悲しみの連鎖が止まらない!
素直にソフィアへ名を名乗れば、そこから交友関係がスタート。好感度を上げていくと、彼女は「いつの日か舞台で歌う」という夢を叶えるべく受けたオーディションがきっかけで、大きな劇場で公演される舞台での端役の座をつかみ取ります。

夢への第一歩だね!と喜ぶのも束の間、晴れの舞台である公演当日になんと劇場で爆弾テロが発生。主人公のそれまでの行動次第ではテロの阻止に関わることができますが、阻止に失敗すると彼女は巻き込まれて帰らぬ人となってしまいます。

ソフィアルートの正解は「テロの阻止には関わらない(阻止に関わるイベントを発生させたうえで阻止に成功すると、ソフィアルートから外れてしまう)」こと…なのですが、そうすると彼女は当然テロに巻き込まれ、一命は取り留めるものの恐怖のあまり言葉を話せなくなってしまいます。ちなみに、このタイミングでソフィアルートから外れるようなプレイをすると、彼女は言葉を取り戻せぬままゲームが終わります。
あんまりすぎる…。

「側にいることが少しでも支えになるならば」という思いで入院しているソフィアを見舞い続けると、彼女はやがて恐怖を乗り越えて言葉を取り戻します。しかし、完治には至らず歌うことはできないまま。いつか舞台に立つという夢は断たれてしまうのでした。

そして物語のクライマックスは、そんな彼女とジョアンの結婚式。ここで式場に威勢よく乗り込んで、沈んだ表情でジョアンと結ばれようとする彼女を救い出せば、ソフィアとのエンディングに。
ソフィアは「たとえ家族を失うことになっても、誰にどんな目で見られることになろうとも、私は自分に正直になりたい(≒主人公と共にいたい)」と覚悟を決め、2人だけの明日を願って主人公のために懸命に歌を歌います。

しかし、ここまできてもまだ「めでたし、めでたし」とはならないのが『みつめてナイト』流。この頃には王国が外国人を広く招き入れる要因のひとつでもあった大きな戦争が終結しており、国は手のひらを返すように「外国人排斥法」を可決。東洋人である主人公は国からの強制退去が待っており、今すぐ出国しなければなりません。思いが通じ合った2人ですが、一緒に暮らせる日はくるのでしょうか。誰かこの子を幸せにしてあげてよ!

しっかりした世界設定と重いストーリーにビックリの本作ですが、筆者は今回紹介したソフィアのほかに、鉄面皮といえるレベルでクールな謎の少女ライズや、出会ったその時からなぜか主人公に超好意的なアンが推しでした。


しかし、ライズは途中で選択を誤ると自害してしまったり(王国と敵対している凄腕傭兵団の団長の娘、という素性でした)、アンは人魚姫がモチーフのキャラで最後には悲しい別れが待っていたりなど(主人公が一途なままでもダメなのがむしろ人魚姫よりひどい)、重いドラマを正面から描くゲームだったなと思います。

しかし、だからこそ今もこうして筆者の中で忘れられないタイトルのひとつになっているのかもしれません。いやでもやっぱりヒロインともうちょっと幸せになりたい…。