夏、それは開放感があり爽やかな一方で、美しくも儚い人間ドラマが起きる魅力的な季節でもあります。様々なゲームの経験を振り返ってみると、印象に残っている作品はより自身の感情を突き動かしたものが多いのではないでしょうか?

今回は夏にピッタリの心がより豊かになる作品を5つ紹介します。
過去に青春を体験した方も、これからの方もぜひ最後までご覧ください。

『BLUE REFLECTION TIE/帝』
とある夏の日、突如として現れた異世界は彼女たちを思いもよらない景色へと導いてゆく。『BLUE REFLECTION TIE/帝』は、異世界「ココロトープ」を舞台に、記憶喪失になった4人の少女たちが学校生活を通して、人間の本質・絆をテーマに青春を描く、3Dアドベンチャーゲームです。

コーエーテクモゲームスが発売し、イラストレーター岸田メル氏がデザインを手掛ける本作ですが、コアゲーマーの方ならこの組み合わせに、思い当たる節があるのではないでしょうか?”ロロナ”や”トトリ”を筆頭とした「アトリエ」シリーズと同じタッグでの制作であり、本作もその雰囲気やゲームシステムのDNAが感じ取れる作品となっています。

見知らぬ世界へと飛ばされてしまった彼女たちは、この世界で生き抜くための物資や食料を持ち合わせていませんでした。そこで、生活拠点となる学校の外に広がるココロトープを探索し、食材や工作の材料などの生活必需品を入手する必要があります。手に入れた素材を使って学校内に施設を建てられる「学校開発」では、たこ焼きの屋台や射的の屋台などの施設を自由に設置でき、特定のイベントや冒険に役立つセット効果などが得られます。

また、ココトトープには「記憶の欠片」と呼ばれるものが点在し、触れることで家族との大事な思い出や、心が締め付けられるような辛い出来事を思い出し、彼女たちは失った記憶を徐々に取り戻していきます。どんな思い出であっても、同じ日々を過ごしてきた仲間たちに支えられながら自身の思い出と向き合う姿に、プレイヤーも心が揺さぶられることでしょう。

少女たちは冒険の行く手を阻むモンスターに立ち向かうため、自らの想いを体現させた姿「リフレクター」に変身して戦います。可愛らしくも打たれ強いその手で、自らの未来を切り開いていくのです。

戦闘への移行は敵に触れると戦いが始まるシンボルエンカウントを採用しているため、「戦いたくなかったら避ける」という選択肢が用意されているのも嬉しいところ。
戦闘システムはコマンドバトル制であり、リアルタイムで蓄積する「エーテルポイント」を消費してスキルを発動します。スキルを使うごとにエーテル回復速度が上昇していくので、強敵とのバトルなど長引けば長引くほど次の行動までの時間が短くなり、戦闘がよりハイスピードに。疾走感と程よい緊張感が物語を一層盛り上げてくれることでしょう。

記憶喪失だからこそ、些細なことでも不安感に襲われてしまいがちだが、少女たちの前向きな姿に心救われていく本作。魅力的なキャラクターたちや世界観に興味を惹かれた方は要チェックです。

『Summer Pockets REFLECTION BLUE』
『Summer Pockets REFLECTION BLUE』は、『CLANNAD』や『リトルバスターズ!』など数々の名作を世に送り出してきたゲームブランド、KeyのPCゲーム『Summer Pockets』をニンテンドースイッチ版としてパワーアップさせた恋愛アドベンチャーゲームです。

「祖母が亡くなった」と、突拍子のない連絡を受けた主人公の鷹原羽依里は、遺品整理のため本土と離れた「鳥白島」へと足を運ぶことに。都会暮らしの彼にとって島での生活はとても新鮮で、様々な自然や習慣、少女たちに出会いながら素敵なひと夏を過ごすことになります。

物語全体の構成は大きく分けて、序盤から中盤にかけて行われる共通パートと、それぞれのヒロインにスポットを当てて描かれる個別パートに分かれており、同ジャンルのプレイ経験がある人なら想像に難くないでしょう。本作の大きなテーマとなっているのは「夏休みを思いっきり遊ぶ」こと。共通パートでは主に主人公と島の仲間たちが夏休み遊び倒す、賑やかなシーンが描かれます。ノベルゲームでありがちな選択肢に加え、おふざけ系が多く用意されていたりミニゲームとして卓球が遊べたりと、プレイヤーを巻き込んで楽しい夏休み気分に浸れるでしょう。


個別パートでは、それぞれ悩み・問題を抱えたヒロインに対し、それらを解決しながら彼女たちと仲を深めていきます。オーソドックスな作りにスパイスを加えているのが、島に伝わる「蝶」の伝承。ネタバレのため明言は避けますが、タイトル画面をはじめとし、至る所で見られるこの蝶は登場人物にとって重要な存在であり、田舎を舞台にした本作と非常にマッチしたものになっています。都会暮らしの方であれば、より新鮮な気持ちで物語にのめり込めるでしょう。

また、PC版からのパワーアップ要素として、サブヒロインゆえ個別パートがなかった2名がヒロインに昇格して攻略可能になったり、新ヒロインが追加されるなど、世界観を損なうことなく新規パートが多数追加されています。PC版をプレイして本作のファンになった方や、仲間と共に夏休みを思いっきり遊びたい方にはおすすめの作品です。

ISLAND
「旅に出よう。僕を殺す旅に。」強烈なキャッチフレーズで始まる『ISLAND』は、元々PCゲームとして発売。アニメ化もされた後、PS4・Vita・ニンテンドースイッチへと移植されたSF恋愛アドベンチャーゲームです。

舞台は本土から遠く離れた南の島「浦島」。この島には罹ると皮膚が炭のように黒く爛れ、ミイラのような姿になってしまう「煤紋病」と呼ばれる風土病があり、過去の事件などから本土とは深い確執がありました。そこに未来から来たという主人公の三千界切那が、この島の行く末を変えるため、鍵となる3人のヒロインたちと問題解決のため奮闘していきます。


本作は明るく楽しい雰囲気もありながら、全体的にシリアス調で描かれており、多数のミスリード、何気ない会話での矛盾や伏線などが盛り込まれています。そのため、「さっきの発言は何だったんだ?」と、ついログを見直して考察したくなるのが特徴です。

システム的にも、シナリオのフローチャートを表示する機能が付いているため、現在の物語の場所や選択肢によって他にどのようなルート分岐があったのかが一目で分かります。より考察が捗り、「あっちを選んだらどうなっていたんだろう」と繰り返しプレイしたくなりますね。また本作はマルチエンディングを採用しており、選択肢次第で異なる結末を迎える楽しみも味わえます。

ジャンルをSF恋愛アドベンチャーとしていますが、基本的には重い雰囲気で物語が進むため、二転三転する状況に目が離せません。息が詰まるような暗い展開もありますが、そこが筆者のおすすめポイントでもあるので、プレイする際にはシリアスな世界観も楽しんでほしいです。

美しく、同時に儚い物語。エンディングにたどり着くころには、一辺倒では終わらない本作の魅力に引き込まれていることでしょう。興味がそそられた方は、真夏の島でのストーリを自身の手でプレイしてみてください。

絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-』
ビルが倒壊し、地面が陥没する。火災、液状化、そして食糧難に争い。
『絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-』はまさに地震大国日本だからこそ生まれたサバイバルアクションアドベンチャーゲームです。

201X年7月。強い日差しが肌とアスファルトをジリジリと焼く中、その悲劇は起きました。就職活動でこの街を訪れた直後に大地震に遭遇した主人公は、土地勘もないまま生きてこの都市から脱出するために、人々協力しながら地震が続く都市を彷徨います。

本作は災害アドベンチャーゲームとしてリアリティーを追及した面と、ゲームとしてのネタ的な面白さを追及した面がバランスよく表現されている作品です。前者では、ひとたび大災害が起きるとスーパーやコンビニから食料が消えたり、電気が使えなくなったり、といった実際に起きるであろう自体がゲーム内にも描写されています。

こういった場所で人助けのサブイベントに出くわす場合があるため、プレイヤーはその選択肢次第で自らの良心を図ることになるでしょう。さらに、主人公には空腹・渇き・排泄・ストレスといったパラメーターが存在しており、道中で手に入る食料やトイレを利用して生き延びていきます。

絶望的な世界観の一方で、プレイ次第ではネタに富んだ面白シミュレーションゲームにもなります。『絶体絶命都市』シリーズの魅力のひとつ、笑いに全振りした選択肢は過去作に渡って実装されており、今作も紛れ込んでいます。さらに、本作には選んだ選択肢次第で上下する善行・悪行というポイントが存在します。メインストーリーにはなんら影響のないものの、限定トロフィーの解放条件になっているなどゲームとしての面白さも十分に味わえる作りになっています。


また、ゲーム内メニューから閲覧できる「防災マニュアル」は、神戸市消防局をはじめとした専門家が監修しており、実際の災害時にやるべきことが分かりやすく読めます。プレイする際には合わせて一読するものいいかもしれませんね。

地震という日本ならではの災害に、ピンポイントで焦点をあてた本作。真面目な要素あり、ネタありとプレイヤー次第で様々な選択肢を選べるので、「1周目とは違う選択肢を選んでみようかな」と何周も遊んでしまうことうけあいです。

『クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~』
「今年の夏も特に夏らしいことをせずに終わろうとしている」、「子どもの頃の夏休みは楽しかったな」そんな方にぜひ遊んでほしい作品が『クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~』です。

国民的アニメ「クレヨンしんちゃん」を題材にした本作。野原一家は、夏休みに九州の小さな町「アッソー」で、1週間の田舎暮らしを体験することになりました。豊かな自然に囲まれて珍しい虫を捕まえたり魚を釣ったりと、最高の夏休みになるはずでしたが、ちょっと変わった博士との出会いから徐々に不思議な出来事が起こり始めます。

本作の雰囲気やゲーム性は、夏休み体験アドベンチャーゲーム『ぼくのなつやすみ』のように、夏休みを味わうことにフォーカスしており、自分が子どもだったころを思い出させるような作品です。メインストーリーを追いながら寄り道として様々なサブイベントの「目標」を埋めていくのが楽しく、また醍醐味でもあります。1日に制限時間が設けられているため「次は何しようか!」と、物語を進めていくにつれ解放される要素を次から次へと味見する姿はまさに童心そのものです。

虫取りや魚釣り、サブイベントなどの出来事は1日の終わりに「絵日記」として記録されるのですが、その結果はプレイヤーによって異なるため、本当に自分が経験したかのようなゲーム体験ができます。
他にも、大人のお手伝いをしてお小遣いを稼いだり、「カード付チョコビ」を買って友だちと「恐竜バトル」をしたりとできることは山ほどあるので、1日1日をどう過ごすかはプレイヤー次第です。

なお、メインストーリーは7日間で終了なので、エンディング自体は比較的早く見られますが、こういった寄り道要素が次週に引き継げるので、やり込み要素は抜群。何度もプレイしてコンプリートしたくなること間違いなしです。

忘れてしまった夏休みの楽しさを、もう一度思い出せる本作。童心に帰って遊ぶ機会などそう訪れないものですが、遊んでいる間は確かに夏休みを感じられると思います。あの頃に戻りたい人には是非プレイしてほしい作品ですね。

今回は、夏にピッタリなアドベンチャーゲームを5つ紹介しました。暑い日が続く季節ではありますが、この時期に合った心を揺さぶる熱いゲームをプレイして充実したゲームライフを過ごしてみてはいかがでしょうか?
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