「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

弱気相場に勝つ7大投資法

「週刊東洋経済」(2022年6月18日号)の特集は、「仕込み場到来! 株の道場」。2022年6月14日の日経平均株価は一時600円下落するなど、株価が冴えない。しばらくは軟調相場が続きそうだが、こうした時こそ、長期投資家にとっての仕込み場だというのだ。

同誌の「四季報先取りランキング」では、四季報の発売前に、注目企業を紹介している。

まずは「最高益更新」企業から。1位は半導体大手のルネサスエレクトロニクス。主力の車載向けに加えデータセンター向けなども拡大、前期に買収した英国の半導体企業の寄与や円安の効果も大きい。純利益は過去最高だった前期から倍以上に膨らむ見通しだ。3位のアウトソーシングは、工場製造ラインへの人材派遣が主力。DX(デジタルトランスフォーメーション)特需で国内の技術者派遣事業が成長を牽引している。

上方修正率でトップになったのは、業務用通信カラオケ最大手の第一興商だ。純利益予想は前期の18億円から、今期は90億円に大幅増額された。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う営業規制が解除されたことが追い風になった。3位のハイデイ日高や4位のラウンドワンなども、コロナの影響が後退し、徐々に正常化すると見込んでいる。

5期連続増益では、有料老人ホームを展開するチャーム・ケア・コーポレーション、外国人買いでは、マリコン大手の東洋建設、連続増配では花王、高配当利回りでは電設資材大手の日東工業がそれぞれトップにランクインしている。

弱気相場に勝つ7大投資法を取り上げている。

その1が、「調整局面こそ仕込み場」ということだ。弱気の理由が消えれば「買い」だ。弱気の理由は何か。その前提となる原油価格、小麦価格、為替などの水準はいくらか。多くの企業は高止まりを想定しているが、想定に反して下落すれば、株価は好反応する。減益要因がはっきりしている今期は、その前提となる原料価格などをチェックすることで、上方修正銘柄を先回り買いできるという。

このほかに、「損切りルール」を必ず守る、「下値支持線」近くで分割買いなどの投資法について解説している。

ところで、今株式市場の人気テーマは何か。

10大テーマの関連80社をまとめている。

「防衛」では、防衛関連の本命である三菱重工業など、「値上げ浸透」では、練り製品の値上げ浸透で採算が改善された一正蒲鉾など、農業ではエジプトの農業用灌漑ポンプで年間100億円規模の特需が発生した酉島製作所など、「メタバース」では、アプリ「リアリティ」を展開するグリーなどをピックアップしている。

◆今後株価はどう動くのか

日本政府は6月7日に「骨太の方針」と「新しい資本主義」の実行計画を閣議決定した。NISA(少額投資非課税制度)やiDECO(個人型確定拠出年金)を拡充し、貯蓄から投資へのシフトを進める。

わが国の個人金融資産2000兆円のうち、その半分以上が預金・現金で保有されている現状を考えると、株式市場にどれだけのカネが流れ込むのか、予想は難しい。

今後株価はどう動くのか。強気派の「外国人の買いで年末3万円超へ上昇」という見方と、弱気派の「金融緩和バブル崩壊で株価は半値へ暴落」という見方をそれぞれ取り上げている。

後者は澤上篤人・さわかみホールディングス代表が、「ほとんどの金融商品は一刻も早く売っておくべきだ」「生活者の目線で見て、なくなったら困る企業、心の底から応援したいと思える企業の株を買っておくとよい」とアドバイスしている。投信業界のカリスマの発言だけに重みを感じた。

「歴史」から示唆を得て「未来」を見通そう

「週刊ダイヤモンド」(2022年6月18日号)は、「世界史日本史 戦争・民族」を特集している。題して、「ウクライナの後が分かる歴史入門」。ロシアによるウクライナ侵攻を機に、世界秩序は大きくきしみ始めている。

こういう局面こそ、歴史から示唆を得て未来を見通そうという企画だ。

人気のポッドキャスト「コテンラジオ」パーソナリティーの深井龍之介さんと室越龍之介さんがウクライナ侵攻を歴史の視点で語っている。

「ロシアは周辺国を脅すことでもしなければ、自国が縮小に追い込まれる脅威に歴史を通じてさらされてきた。この事実を理解する必要があります」と深井さん。また、室越さんは「ソ連はロシア帝国よりも大きく『版図』を広げたのですが、その結果、広い地域にロシア人やロシア語話者が増えました。ウクライナもそうした地域の一つです。ロシアにとっては、この人たちは守るべき仲間。この仲間に離れられると国が弱体化するという恐怖もある」と続ける。

プーチン大統領の属人的な問題に帰すのではなく、ロシアの内在的な論理が今回の侵攻につながったという解説は、腑に落ちた。

編集部による解説記事も充実している。

ロシアと中国を中心とする権威主義的陣営と、欧米を中心とする民主主義陣営との対立を古代ギリシアの大国の攻防に見立てている。

各地のポリス(都市国家)の中で、特に有力だったのが、スパルタとアテネだ。

軍事国家のスパルタが最終的に勝利したが、「アテネの敗北は外部からの力によるだけではなく、衆愚政治という内側からの崩壊でもあった」と指摘。ポピュリズムが台頭する現代への教訓と見ている。

グローバル経済は2度目の終焉を迎えるかもしれない、という予測にも驚いた。世界はすでに一度、グローバル経済が拡大し、その後衰退していく過程を約100年前に経験しているというのだ。

欧米列強と日本が資源と市場を求め、アフリカやアジアに次々と植民地や勢力圏をつくった。いわゆる帝国主義の時代だ。だが、第1次世界大戦が勃発、グローバル経済は減退した。

現在のグローバル化の水準はもちろん当時と比べようがない。だが、歴史を踏まえれば、この水準が未来にわたって維持されるとは断言できないという。「グローバル化と国家主権、民主主義は同時に成立しない」という経済学者のダニ・ロドリック米ハーバード大学教授の言葉を紹介している。

歴史思考をつかむブックガイドとして、「陸と海 世界史的な考察」(カール・シュミット著、日経BP)、「ゲームチェンジの世界史」(神野正史著、日本経済新聞出版)などを挙げている。ウクライナ侵攻という事態を理解するには、さまざまなジャンルの勉強が必要なようだ。

対ロシア制裁でドル離れ

「週刊エコノミスト」(2022年6月21日号)の特集は、「歴史と経済で解くドル没落」。巻頭レポートは、基軸通貨ドルという「最強の武器」を抱えてきた超大国アメリカへの反乱ののろしが上ってきた、という衝撃的な内容だ。

対ロシア制裁でドル離れが起き、「非親米」国が顕在化してきたという。対ロ制裁を実施しているG7など36の国と地域のGDPが57・4兆ドルであるのに対し、対ロ中立・対立回避・友好維持各国と被制裁国は145カ国で71兆ドルと、経済規模は制裁に加わらない非G7側のほうが大きいのだ。

外交評論家の孫崎亨(元イラン大使)さんは「米欧は制裁で通貨を武器にした。在外資産保有や貿易取引で過剰にドル(やユーロ)に依存するのは危険だと、非G7側は鮮明に感じただろう」と話し、ドル離れが進む契機となる可能性を指摘している。

また、元財務官の行天豊雄さんも「米一極集中は限界。『ブレトンウッズ3』の不在は大失策だ」と話している。

「ウクライナ危機の深層」と題した米在住ストラテジストの滝澤伯文さんのレポートは、「ドル覇権の死守」が至上命令で、米英最強硬派は戦線の拡大をいとわない、と書いている。

さらに、経済評論家の加谷珪一さんは「ブロック経済化で台頭する人民元。世界から消えるドルは数百兆円規模」と指摘。国際社会は、絶対的な基軸通貨なき世界に近づく可能性が高まっているという。

(渡辺淳悦)

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