相次ぐ値上げラッシュで、2022年10月には6700品目にのぼる食品や日用品の値上げがピークを迎え、家計への負担がより重くなっている。

そうしたなか、節約志向の高まりを追い風に、食品など生活必需品の「安売り」を前面に押し出すディスカウントショップの存在感が増している。

ドン・キホーテや業務スーパーのBig-Aなど、国内のディスカウントショップ市場は、2022年度に初めて4兆円規模に達する見込みとなった。

国内市場は初の4兆円、店舗は15年間で3倍に

企業信用情報の帝国データバンクによると、2023年に値上げが予定されている食品は、この11月末時点で4000品目を超えた。特に、飲料や酒類、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの生活用品が、来年2月にかけて、再び一斉に値上げされる予定。来年も消費者の生活は「インフレ」(物価高)の波を実感せざるを得ない局面が迫っている。

そうしたなか、低価格を「武器」とするディスカウントショップはより需要が高まっている。

リーマン・ショック直後で景況感が大きく冷え込んだ2008年度(1.7兆円)の2倍超に拡大し、前年度の21年度(3.8兆円)を5.2%上回って過去最高を更新する見通しとなった。

また、消費税が10%へ引き上げられた19年度以降、コロナ禍の巣ごもり、物価高による低価格志向を背景に市場は4年間で約1兆円増加した。2兆円から3兆円に到達した2012年度から18年度(7年間)に比べて、拡大ペースは加速している。今年度以降も引き続き、市場の成長が期待できそうだ。

店舗展開も積極的だ。ディスカウント大手10社の店舗数は、2022年3月時点で2939か店にのぼった。コロナ禍前の19年度からは291か店、リーマン・ショック時の08年度からは1764か店増えた。

店舗新設の動きは今年度に入っても続いている。たとえば、「良い物をより安く」を掲げ、全国の都道府県で「業務スーパー」を展開する神戸物産(兵庫県加古川市)は10月27日、北海道函館市に「函館田家店」を出店。1000店舗を達成している。

10月時点のディスカウント大手の店舗数や予定数を含めると、来年3月までに過去最多となる3000か店を超える見通し。大型の郊外店舗のほか、特定の食品分野に特化した都市部の中小型店舗の出店なども旺盛で、年間平均で約100店舗の増加が続いている。

消費者の「生活防衛意識」強まる

ディスカウントショップ市場は、2021年度にはコロナ禍の「巣ごもり」特需を背景とした食品のまとめ買いなどが好調だった前年度から、市場は拡大しつつも、伸び率は下回る水準だった。

しかし、今年度は夏以降に急増した食品や日用品の値上げラッシュの影響で「物価高」が表面化。内閣府の向こう6か月間の消費マインドを示す消費者態度指数では、11月は物価高が響き3か月連続で悪化するという結果だった。

帝国データバンクの「ディスカウント店業界」動向調査」(12月13日発表)によると、食品スーパー各社も取り扱う食品の値上げを背景に価格転嫁を進めるものの、「消費者の節約・低価格志向が続いている」といった声が企業からあがるなど、売り上げは総じて伸び悩む状況が続いている。

景気の先行き不安や賃金の伸び悩みも重なって、消費者の生活防衛意識が急速に強まっている。

こうした「低価格志向」に、ナショナルブランドの商品を低価格で販売するディスカウントショップの利用者は足元で広がっており、引き続き、ディスカウントショップの業績押し上げにつながりそうだ。