経済産業省が発表した2022年度の「大学発ベンチャー実態等調査」によると、大学発のベンチャー企業数と増加数は過去最多となった。ただ、経営面での大きな課題も明らかとなっている。

1位は東大、3年連続で300社以上 躍進が目覚ましいのは慶應義塾大学

2022年度の大学発ベンチャー企業数は、前年度比477社(14.4%)増加して3782社となった。このうち、2021年度末までに未把握だったのが356社、大学との関連がなくなったのが83社、解散等を行ったのが40社あり、22年度に新規設立されたのは244社だった。(グラフ1)

それでは、どのような大学からベンチャー企業が出ているのかを個別大学ごとに見ると、1位は東京大学で371社となっている。東京大学は3年度連続で300社以上のベンチャー企業を生み出しており、絶対的な1位に君臨している。

2位は京都大学で267社。同大学も3年度連続で200社以上のベンチャー企業を生み出しており、2位の座を守り続けている。

躍進が目覚ましいのが慶應義塾大学で、2020年度には90社で10位だったが、2021年度には前年度比で倍近い175社となり5位に上昇し、2022年度には236社で私立大学としては最高位の3位となった。

企業数が200社を超えているのは4位の筑波大学までで、100社を超えているのは13位のデジタルハリウッド大学まで。2022年度に新たに上位20校入りしたのは、2021年度は26位だった近畿大学の17位、25位だった千葉大学の20位の2校となっている。(表1)

また、2020年4月に専門職大学として開学した情報経営イノベーション専門職大が2021年度の69位で7社から15社に設立数を倍増させて47位に入った。秋田大学も78位の6社から11社に伸ばして58位に入る躍進を見せた。

回答のあった480社の資本金は「1000万円以上5000万円未満」が最多

活発な設立が続く大学発のベンチャー企業だが、その経営実態は決して楽なものではない。

回答があった474社の正社員数は「5人未満」が52%を占め、「5人以上10人未満」が24%と、10人未満が76%の連載企業に近い状況だ。

回答のあった480社の資本金では、「1000万円以上5000万円未満」が最も多く122社、次いで、「100万以上500万円未満」の119社となっている。500万円未満の企業は32.7%と3分の1を占め、1000万円未満の企業が49%と約半数にのぼっている。(グラフ2)

直近事業年度の売上高では、回答のあった385社のうち、「1000万円以上5000万円未満」が最も多く116社。次いで、「1億円以上10億円未満」が73社だが、「0円」も71社にのぼっている。500万円未満の企業が33%と全体の3分の1を占め、5000万円未満では全体の71.2%にのぼる。

(グラフ3)

この結果、回答のあった363社の直近事業年度の営業利益は、「0円」の企業が最も多く87社。次に「100万円以上1,000万円未満」が82社、「1000万円以上1億円未満の赤字」が46社などとなっている。

赤字企業は116社、黒字企業は160社と黒字企業の方が多いものの、赤字企業は全体の33%と3分の1にのぼり、営業利益「0円」を含めると57%と半数以上が利益を生み出していない。(グラフ4)

研究費500万円未満の企業が全体の55%と半数以上

これだけ利益が苦しい状況になると、研究開発費へも影響が及ぶ。

回答のあった339社のうち、直近事業年度の研究開発費では、「0円」の企業が87社と最も多く、次に「1000万円以上 5000万円未満」の80社となっている。

500万円未満の企業が全体の55%と半数以上を占めており、ベンチャー企業設立後の研究開発が厳しい状況に追い込まれていることがわかる。

(グラフ5)

大学発のベンチャー企業は毎年度増加を続けているものの、ベンチャー設立後の売り上げは厳しいとなり、なかなか利益が生み出せないことで、研究開発にも影響が出ているという状況に陥っている。

可能性を持ったベンチャー企業が継続して研究開発を行え、世の中の役立っていけるように支援を行う必要がありそうだ。