自分が好きな対象を応援する「推し活」。さまざまな「推し活」をしている人に、活動にかける「お金」について聞いたところ、月平均1万6605円にのぼることが、総合保険代理業のR&C(東京都港区)の調査でわかった。

2023年6月1日の発表。

推し活をしている20代~50代の男女1000人にアンケートを実施した。今回、推し活に使う「お金」をキーワードに、月の平均金額や予算、使い方についての考え方などの推し活事情を調べて、推しの分野による違いも比較・分析した。

コロナ禍もひと段落したことで、推し活を後押しするイベントも増加。関連するグッズやサービスも次々と販売され、推し活の状況はますます盛り上がっている。

舞台俳優の「推し活」に使うお金は月3万1375円

調査では、「推し活に使う月の平均金額はいくらですか?」と聞き、その回答から平均値を算出したところ、月平均で1万6605円となった。

さらに、「推し」の分野別でお金を使うシーンや必要となる金額が大きく異なることを想定。分野ごとの平均金額を分析して比べたところ、1位は「俳優(舞台)」の3万1375円だった。

2位は「声優」の1万6686円、3位は「YouTuber・インフルエンサー」の1万5306円、4位「アニメ」の1万5080円、「マンガ」の1万5037円と続いた。【図1参照】

2位以下の「推し」の分野がすべて1万円台だったこともあり、「俳優(舞台)」の3万1375円が突出していることがわかる。

一方、月に使うおおよその平均金額はすべての分野で1~5000円がボリュームゾーンとなり、分野によっては「0円」という回答もみられた。【図2参照】

「推しのためなら、お金は惜しまない」人は7%

「推し活費は予算内におさめていますか?」との問いで、最も多かったのは「予算の範囲内で楽しんでいる」と答えた人で、40%を占めた。

次に多かった「あまりお金を使わずに楽しみたい」と答えた人(27%)と合わせると、67%にのぼる。堅実なお金の使い方をしているようすがうかがえる。

「ある程度の予算を決めているが、超えることもある」と答えた人は26%。「特に予算は設けず、推しのためなら、お金は惜しまない」という人も7%存在した。【図3参照】

その「推し活」費用のために、「やりくりを工夫していますか?」(自由回答)と聞いたところ、

「グッズのためにお金を貯めるようになり、貯金ぐせがついた」
「ポイ活でたまった分で推し活する」
「家計簿はつけていないけれど、推し活費はメモして金額を把握する」
「グッズを買うときは時間をかけてじっくり選び、本当に欲しいものだけを買う」
「推し活以外ではムダ遣いをしないように節約。推しのためなら我慢できる」
「イベントのために事前に積立貯金をしている」
「使うときは使う。
ガマンするときはガマン。メリハリが大切」
「遠征費はホテル代を格安サイトで調べて少しでも抑える」

など、推し活のために貯金や節約したり、クレジットカードなどでポイントを貯める「ポイ活」で推し活費用を捻出したりするという声があった。

推し活へのお金の使い方に、「予算の範囲内で楽しんでいる」と答えた人が最も多く、「推し活」をしている人が趣味の一環として堅実に楽しみ、意外(?)なほどシビアなお金の使い方をしていることがわかった。

「推し活」する人は「そのときしかない限りあるもの」を求めてる!

また、推し活にかけるお金の使い道を厳選している中で、「何にお金を使っていますか? また、その中でもっとも出費を惜しまないものは何ですか?」と聞いたところ、推し活のお金の使い道として第1位になったのは「グッズ類」だった。507人がそう答えた。

次いで、「チケット代・イベント費用(ライブ配信を含む)」と答えた人が469人、「DVD/BD/CD(音楽配信)」の396人、「本・雑誌」207人と続いた。

「遠征費用(交通費・宿泊費)」と答えた人も172人いた。【図4参照】

さらに、お金を惜しまない消費先の第1位は、「チケット代・イベント費用(ライブ配信を含む)」で、313人の人がそう答えた。推し活に使うお金も、モノ消費よりもコト消費が活発である状況がうかがえた。

第2位が「グッズ類」で233人。第3位は「DVD/BD/CD(音楽配信)」の153人、第4位に「本・雑誌」の93人、第5位「遠征費用(交通費・宿泊費)」の50人が続いた。【図4参照】

こうしたお金の使い方は分野に直結。

「推し活でもっとも出費を惜しまないもの」で、一番多かった回答を分野別にまとめると、ほとんどの分野で「チケット代・イベント費用(ライブ配信含む)」が「推し活でもっとも出費を惜しまないもの」の第1位だった。【図5参照】

R&Cは、

「アニメやマンガ、ゲームなどの分野ではやはり、その特性から『グッズ類』や『本・雑誌』が多いのは納得です。コロナ禍以降、コンサートや舞台などのライブ配信が行われることも多くあり、アーカイブ配信が見られる場合もあるとはいっても、やはり『そのときしかない限りあるもの』がここぞというお金のかけどころなのでしょう」

と、解説する。

「推し疲れ」57%の人が「まったく感じない」!

調査では、「『推し疲れ』を感じるかどうか」も聞いた。それによると、「まったく感じない」と答えた人は57%と、過半数を超えていた。

その半面、「ときどき感じる」と答えた人は33%、「感じることが多い」は10%。

「推し疲れ」を感じている人に、その理由を聞いたところ、第1位は「出費がきつい」だった。「ほかの人と比べてストレスを感じる」が第2位。「推しに飽きてきた」「運営などに対する不満が募ってきた」と続いた。

推し活を楽しむためには、お金が大きな要素となっていることがうかがえる。ただ、「時代も反映しているのか、お金のかけ方はどの世代と分野でも堅実。『推し疲れをまったく感じない』人が多数派であったことも、無理せずにお金を使うという姿勢があらわれているのでしょう」と、R&Cはみている。【図6参照】

推し活での体験談やエピソードを聞いたところ、「うれしいこと」としては、

「すべての嫌なことを忘れられるくらい集中できる」
「推し疲れが出たときも友達と共有することで乗り越えられた」
「推しの活躍を見るたび、自分もがんばろうと思える」
「同じ時代を生きていることが幸せ」
「コロナ禍でライブがなくなってしまったけれど、オンラインイベントがあり、推しと話せた」

といった声があった。また、

「コンサートをきっかけに日本のいろいろなところに旅行できた」
「会場で昔の友達と再会し、友情が復活した」
「コラボ商品で今まで使ったことのない商品を買い、生活の幅が広がった」
「推し仲間ができた」

など、推し活をすることで交流や活動が広がったという声は少なくない。

「推し活をしている」人の男女比は、男性がおおよそ3割、女性が7割で、圧倒的に女性が多かった。また、年代別にみると、若い世代ほど推し活をしている人は多く、20代では、おおよそ3人に1人(31%)がなんらかの推し活をしていることがわかった。30代が21%、40代は12%、50代が8%だった。

なお、調査は全国の20~50代の「推し活」をしている男女1000人を対象に、2023年4月27日~5月2日に実施した。