飲酒後、からだからアルコールが抜けきっていないと思いながら通勤や仕事でクルマを運転したことが「ある」人が全体の20.6%と、5人に1人に――。健康総合企業のタニタ(東京都板橋区)の「飲酒運転に関する意識調査 2023」でわかった。

2023年5月30日の発表。調査は、前回(2019年)のコロナ禍前から、3年5か月ぶりの実施だ(今回で3回目)。

今回の調査は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う生活様式の変化や、白ナンバー社用車における運転前後のアルコールチェックの義務化(22年4月施行の改正道路交通法施行規則)など、飲酒と飲酒運転を取り巻く社会環境が大きく変わったことや、この5月に新型コロナウイルス感染症の分類が5類に引き下げられ、さまざまな行動制限がなくなったことで、「生活者の飲酒との向き合い方が変化することを見据えて実施した」(タニタ)という。

飲みすぎても「一晩寝れば、クルマを運転しても大丈夫」?

調査によると、「お酒は飲みすぎても一晩寝れば、クルマを運転しても大丈夫だと思うか」(n=1000人)との問いに、社用車ドライバーの38.1%が「そう思う」(「非常にそう思う」の4.2%と「ややそう思う」33.9%の合計)と答えた。

特に、「お酒に強い」と答えた人(n=415人)の50.8%が「そう思う」と答えていた。【図1参照】

調査レポートの指摘によると、アルコールがからだから抜けるまでに必要な時間は、体重65キログラムの人の場合、2合の飲酒で6~7時間程度、3合の飲酒で9~10時間程度とされる。

社用車ドライバー(n=1000人)に、「からだから、アルコールが抜けるまでにかかる時間を知っていたか」と聞いたところ、「知っていた」と答えた人は59.2%、「知らなかった」は40.8%だった。【図2参照】

また、体内に入ったアルコールを分解するために必要な時間は、飲酒量や飲んだお酒のアルコール度数によって変わり、飲みすぎると一晩寝ても、アルコールがからだから抜けきらない場合がある。そのことを「知っていたか」と聞いたところ、77.0%の人が「知っていた」と回答。「知らなかった」は23.0%だった。【図3参照】

運転予定があっても、時間を気にせずに飲んでいる人は11.4%いる

さらに、「クルマを運転する何時間前にお酒を飲み終えることが多いか」(n=1000人)を聞いたところ、25.6%の人が「12時間以上前」と答え、最も多かった。次いで、「8時間くらい前」の19.6%、「10時間くらい前」の19.2%が続いた。

その半面、「意識していない」と答えた人は11.4%となり、運転の予定があっても時間を気にせずにお酒を飲んでいる人が少なからずいることがわかった。【図4参照】

日頃の飲酒量別にみると、飲酒量が3合以上の人では、「6時間未満」が0.8%、「6時間くらい前」が9.8%、「7時間くらい前」が5.3%、「8時間くらい前」が22.6%となっており、合計した「8時間くらい前までにお酒を飲み終える(お酒を飲んでから約8時間以内に運転する)」人は38.5%だった。

タニタは、

「クルマを運転する予定がある場合は、お酒を飲み終えるべき時間をあらかじめしっかり意識したり、飲酒量を抑制したりする必要があるのではないでしょうか」

としている。

調査では、「アルコールがからだから抜けきっていないと思いながら通勤や仕事でクルマを運転することがあるか」との問い(n=1000人)に、「運転することがある」と答えた人は20.6%で、5人に1人は飲酒運転の恐れがある状態で運転した経験が「ある」という結果になった。

「お酒に強い人」(n=415人)に聞いたところ、「よくある」(1.7%)、「ときどきある」(10.4%)、「1~2回ある」(14.7%)を合わせた26.8%の人が「運転することがある」と回答。「お酒に強くない人」(n=585人)でも16.2%(「よくある」1.2%と「ときどきある」4.1%、「1~2回ある」10.9%の合計)にのぼった。

【図5参照】

職場のアルコール検査...4割超が「運転前に実施」

調査では、「職場で飲酒運転の防止策が取られている」と答えた人が73.2%と7割を超えた。前回調査(2019年、N=700人)の61.1%から12.1ポイントも上昇したことから、「飲酒運転を防止するための具体策」(複数回答、n=1000人)についても聞いた。

それによると、息を吹き込むことで体内に残留するアルコール濃度を計測する「アルコール検知器」による社内チェックを、「社用車の運転前に実施する」と答えた人は、41.7%と4割を超えてトップだった。前回調査から2倍以上の大幅上昇(25.6ポイント増)となった。

また、「職場に飲酒運転防止のための委員会などを設置する」と答えた人は10.0%と少ないながらも、前回調査からは5.3ポイント増えた。

タニタは、

「社用車ドライバーのアルコール検知器によるチェックの義務化は延期となっていますが、飲酒運転となる危険性を数値で可視化することで、防止に取り組んでいる職場が多いことがわかりました」

としている。

その一方で、「アルコールの基礎知識を学ぶ機会を設ける」と答えた人は、前回調査から8.1ポイント下がり、17.3%となった。職場で飲酒と運転に関して正しい知識を学ぶ機会が減少しているという実態が明らかになった。

「飲酒運転防止マニュアルを配布する」と答えた人も、前回調査の24.1%から21.1%に、3ポイント下がった。【図6参照】

タニタは、

「今回の調査では、新型コロナウイルス感染症の5類移行の中で、飲酒の基礎知識やチェック体制の必要性が浮き彫りになりました。飲酒運転を防止するためには、アルコール検知器によるチェックとともに、安全運転管理者をはじめ、ドライバーがアルコール検知器の使い方を知ることやメンテナンスなどを怠らないこと、組織内でドライバーに限らず関係者が飲酒と飲酒運転に関する正しい知識を学べる機会を定期的に設けることが大切です」

としている。

なお、調査は全国の20歳~69歳のお酒を飲む習慣があり、仕事で社用車を運転することがあるドライバー1000人を対象に、2023年4月4日~5日にインターネットで実施した。

飲酒と運転についての知識や行動、組織における飲酒運転の防止策など幅広く聞いた。調査は3年5カ月ぶりの実施で、今回が3回目。