「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする(「週刊ダイヤモンド」は、先週合併号だったため、今週はお休み)。

33年ぶりの高値に沸く日本株

6月12日発売の「週刊東洋経済」(2023年6月17日号)の特集は、「株の道場 3万円時代に勝てる株」。33年ぶりの高値に日本株が湧いている。

続伸か暴落か。2人の専門家の予想を紹介している。慎重派のブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏は、「上昇理由はいずれも怪しい。夏場に2万7000円へ下落も」と見ている。

ただし、「リーマンショック」や「コロナショック」のような暴落にはならず、海外株安と外貨安・円高が並行して日本株を押し下げるが、その後、世界経済の持ち直しに沿って、今年末までに再度3万円の大台に乗ると予想している。

一方、強気派のマネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は、「年末に3万6000円へ。リスクは割高な米株の調整」と予想する。企業業績は最高益で、それを割り引く金利が当面上がらないとなれば、「業績÷金利」で表される株価が上昇しないわけがない、と説明する。ただし、米株値は割高水準にあり、その調整に巻き込まれるリスクはあるという。

6月16日発売の「会社四季報」夏号の予想をもとに、ランキングでお宝銘柄を発掘している。

最高益更新ランキングで1位となったのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ。国内外とも貸出金残高が法人を軸に高水準で、海外も堅調だ。2位は東京海上HD(ホールディングス)。5位以内にはデンソー、パナソニックHD、三菱重工業と製造業大手が名を連ねる。

過去最高益を久しぶりに更新する企業にも注目している。

更新までの年数が長い順のランキングで1位になったのは封筒業界首位のイムラ。

統一地方選の需要もあり、23年ぶりに最高純益を更新する見通しだ。5位はスポーツシューズ大手のアシックス。訪日客需要も取り込んでいる。

高成長新規上場ランキングで1位は、M&A総研ホールディングス。独自開発のAI(人工知能)搭載マッチングシステムでM&Aの成約期間を短縮すると同時に成約率を高め、売上高を倍々で伸ばすことに成功している。

「会社四季報」元編集長の山本隆行氏は、夏号を読むポイントを挙げている。

1つは、上場企業の大半を占める3月期決算企業の「前第4四半期(1―3月期)に注目すること。これを見ると、信越化学工業やニデックのように悪い会社が意外とある。このような会社は、今第1四半期にいい数字が出ると、倍返しのように株価が大きく反応する可能性もあるという。

2つ目は12月決算企業だ。第1四半期の発表を終えたばかりで、期初に立てた通期予想に対してどれだけ進捗しているかがポイントになるという。この時点で上方修正した会社は、業績によほど自身があると見ていい。

カンロやキヤノンに注目している。

◆東証改革でPBR(株価純資産倍率)にも注目

東京証券取引所が3月、市場改革の一環としてPBR(株価純資産倍率)の低い企業に改善を求めたことについて詳しく解説している。

PBR=ROE(自己資本利益率)×PER(株価収益率)だから、PBR1倍割れの場合、収益性を示すROEもしくは成長期待を示すPERの低い場合が多い。

トヨタ自動車など日本を代表する企業でPBR1倍割れが続出しているが、改善計画を早期に開示し、その達成時期を早期に設定した会社に妙味がありそうだ、と見ている。

企業再生のプロ、経営共創基盤グループ会長の冨山和彦氏のインタビューが興味深い。日経平均株価3万円超えの株価水準について、「2つの点からまだまだ上がってもおかしくない」と話す。

1つは、もともとPBR1倍割れの会社がいっぱいあったが、東証がこの問題に言及したことで、さすがに反応する経営者が目立ってきたこと。もう1つは、ソニーグループや日立製作所のように、事業ポートフォリオを変えてしっかり未来投資を始める企業が増えてきたことを挙げる。

そのうえで、息長い株高を実現するには、観光や外食などローカルなサービス業への人材シフトを進められるか、材料系やフード系など素材関連のディープテックに基づくメガベンチャーが育つかが不可欠だと語っている。

さて、「会社四季報」の記事欄には業績欄の左に材料欄がある。有望テーマが載っている。今夏号では「生成AI」「チャットGPT」が前号4社から84社へ急増した。東証の市場改革により、「PBR」や「プライム」といったテーマも増え、株主還元の拡充を伴うケースが多いという。

会員制投資情報誌「株式ウイークリー」の福井純編集長が、株価3桁の「低中位株」から婚礼が主力のツカダ・グローバルホールディング、製紙業界中位の三菱製紙など6銘柄を厳選している。

ところで、今回の日本株高値の背景には、著名投資家ウォーレン・バフェット氏の影響もあるとされる。そのバフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイの最新投資銘柄を取り上げている。

台湾TSMC株を放出した一方、買ったのはアップルだ。アップルにサプライヤーとして電子部品を提供するのはTDK、日本電子工業などで増益傾向。アップル自体も今期は減収減益予想だが、来期には増収増益に転じる見通しだという。

バフェット氏のポートフォリオの大半は米国株だが、一部の例外は中国のEV(電気自動車)最大手のBYDと三菱商事をはじめとする日本の商社だそうだ。

見えてきた日経平均4万円

「週刊エコノミスト」(2023年6月20日号)の特集は、「日本株 沸騰前夜」。表紙の「見えてきた日経平均4万円」という文字が躍っている。

バブル後の高値を連日、更新する日本の株式市場。今年の夏以降、上昇の勢いが加速するかもしれないと期待している。東京証券取引所を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)が新たに導入する株価指数「JPXプライム150」の算出が7月3日に始まることが、引き金になるという。

これは、プライム市場に上場する企業のうち、資本効率の高い150社を選んだもの。構成銘柄のうち指数の重みが大きい上位には、ソニーグループ(5.6%)、キーエンス(4.2%)、NTT(3.3%)などが並ぶ。

その一方で、トヨタ自動車や3ガバンクは指数から外れた。トヨタ自動車はPBR(株価純資産倍率)が0.93倍(6月2日)と、東証が是正を求めている1倍割れの状態ある。3メガバンクは0.5~0.6倍台とさらに低い水準にある。

東証がPBR1倍割れの是正を求めた背景には、海外投資家に訴える狙いがあったという。日本企業は資本効率を重視していないと見られていたからだ。

「いまの株価を押し上げている外国人のほとんどは短期のヘッジファンドで、いずれ売られるが、グローバル・マクロ系が買いに動くと、日経平均が3万5000円くらいまで上がっても買いを入れる可能性はある」という経済評論家・豊島逸夫氏の見方を伝えている。

日経平均株価は1989年12月29日につけた史上最高値3万8915円を超えることができるのか? 豊島氏は「世界にはとてつもない過剰流動性が存在し、新たな運用先を求めて徘徊している。その一部が日本に来るだけで、あっという間に日経平均は3万8000円くらいには達するだろう」と指摘している。

PBR1倍割れの銘柄に投資家が注目しているというから面白い。本来は市場から「落第」の不名誉な評価を受けたのに、現在は「割安でお買い得な投資対象」に見られているからだ。

◆新NISAも日本株上昇の起爆剤か

一方、社長が交代した1倍割れの企業群に注目が集まっている。三井不動産、ワコールホールディングス、Zホールディングスなどだ。

また、2024年からスタートする新NISAも日本株上昇の起爆剤になりそうだ、と期待している。上場株式や上場投資信託(ETF)などが購入できる「成長投資枠」が、現行NISAの最大600万円の2倍、1200万円になる。成長投資枠が2倍になるから、株式市場に入る資金も2倍になる。

「日本株はもうかる」に投資家の感覚は変化するかもしれないという。バブル崩壊を知る50歳以上の世代はチャンスを逃してはいけない、との指摘に、虚を突かれた思いがした。(渡辺淳悦)