就職先や転職先、投資先を選ぶとき、会社の業績だけでなく従業員数や給与の増減も気になりませんか?

上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、2023年7月5日に東証グロース市場に上場予定のブリーチです。

ブリーチは2010年、現代表取締役の大平(おおだいら)啓介氏がインターネット販売促進支援事業を目的として設立。2016年にシェアリング型統合マーケティング事業を開始しました。社名の由来は、BLEACHという言葉の語源である「輝くこと」から「世界を照らす」という理念を込めている、とのことです。

顧客企業から「成果報酬」で広告出稿を受注

それではまず、ブリーチの近年の業績の推移を見てみましょう。

ブリーチの売上高は右肩上がりに伸びています。2019年12月期は3.7億円だった売上高は、2022年6月期には14.6億円に。

2.5年で約4倍の成長です。なお、2022年6月期の期首から「収益認識に関する会計基準」を適用しています。

2023年6月期は第3四半期時点の売上高が12.3億円で、前期の売上高を上回ることは確実です。

営業利益率は、2021年6月期の9.5%から2022年6月期には7.0%に悪化。しかし、2023年6月期の第3四半期時点では14.5%と、大幅に改善されています。

ブリーチの事業は「シェアリング型統合マーケティング事業」の単一セグメントです。

事業概要によると、「顧客企業から初期費用やコンサルティング料を受領せず、新規ユーザーの獲得など実際に当社が実現したマーケティング効果に応じて報酬を頂く」ビジネスとのことです。

このような報酬体系の採用により、予算が限られた中小・中堅企業も支援することが可能で、顧客企業は、事前にユーザー獲得コスト(CPA)を確定することができるため、収益の見通しが立ちやすくなるメリットがあるそうです。

顧客企業は「主に化粧品、日用品、機能性表示食品等のインターネット通販会社、及び美容サロンや金融サービス等を展開する企業」で、インターネットを通じた売上拡大を支援しています。

人材紹介会社キープレイヤーズの高野秀敏氏は、自身のYouTube番組で、このビジネスモデルは一般的な広告代理店よりもリスクを取っており、「その分、取り分も大きい」「このやり方のイノベーターがブリーチと認識している」と説明しています。なお高野氏は、キープレイヤーズを通じてブリーチに出資をしています。

特定の広告代理店からの販売実績が7割超

ブリーチの「シェアリング型統合マーケティング事業」について、もう少し噛み砕いた説明を加えましょう。

ブリーチは「主に化粧品、日用品、機能性表示食品等のインターネット通販会社、及び美容サロンや金融サービス等を展開する企業」の広告を作成し、自社負担でLINEやYahoo! JAPANに広告を出します。

そして、その広告を見て一般消費者が商品やサービスを購入すると、その売上から一定割合を報酬として受け取ります。

したがって顧客企業は、実際に計上された売上実績から広告費用を支払えばよく、あらかじめマーケティング予算を確保しにくい中小・中堅企業には都合がよいサービスといえます。

なお、ニュースやコラム(当コラムも)を配信先のポータルサイトで読む読者も多いと思いますが、よく記事の下に「PR」または「おすすめの記事」として、ホワイトニングケアやダイエット食品などの記事広告やランディングページへのリンクが貼られているのを見たことがあるでしょう。

その末尾の「運営者情報」のリンクをクリックすると、販売会社とは別に「媒体運営者情報」が記載されている場合があります。これが、アドアフィリエイト(アドアフィ)会社です。

ブリーチは、読者の目を引くタイトルや画像素材を使った記事を自社で作成し、自社負担でポータルサイトに広告を掲載し、売上に応じて報酬を得ているアドアフィ会社というわけです。

広告案件の受注は、顧客企業との直接取引のほか、広告代理店を介する場合があり、有価証券報告書には主要な顧客として株式会社アールの名前があがっています。

アール社との取引が販売実績に占める割合は、2022年6月期で71.4%、2023年6月期第3四半期で70.1%と非常に高くなっています。

この点について、有報の「事業等のリスク」には「特定の販売先への偏重について」として、「当該企業との契約内容に変更等が生じた場合や計画通りに新規顧客企業の獲得や取扱い商材のユーザー獲得が進まない場合」には、事業リスクがあるとしています。

また、アール社との取引における主な取扱商材は「特定の大手企業グループが企画・製造・販売する育毛剤、美容液、機能性表示食品等の数点の特定の商材」となっており、ここにも事業リスクがあるとしています。

化粧品や機能性表示食品に絞り「D2C支援No.1を目指す」

ブリーチの従業員数は、2017年12月期末にはわずか5人。

そこから17人、24人、39人、42人と順調に採用を行い、2022年6月期末には71人まで増やしています。

2023年4月末時点では、従業員数は94人。平均年齢27.4歳の若さ、平均勤続年数1.8年で、平均年間給与は711.5万円です。平均年齢20代では異例の高さと言っていいでしょう。

ブリーチの採用サイトを見ると、「グロースハッカー」「コンテンツプロデューサー」「コンサルティングセールス」「クリエイティブディレクター」といった職種での募集が行われています。

福利厚生としては、オフィスから2キロ圏内に住めば最大2.5万円を支給する「家賃補助」、上限5000円まで支給される「スポーツジム補助」などがあります。

ちなみに、執務チェアにはHerman Miller社のアーロンチェアを導入。オフィスでは毎日ご飯を炊いており無料で食べられるほか、軽食やR-1も無料で支給されるとか。

ブリーチはウェブサイトで「統合型デジタルマーケティングでD2C支援No.1を目指す」とうたっています。D2Cとは「Direct to Consumer」の略で、企業が直接自社製品を販売する方式を指します。

なぜD2C企業を支援対象とするかというと、そのような企業はマーケティング体制が弱いためといえますが、中間流通業者を通さないため利益率が高く、ある程度高い率のレベニューシェアにも耐えられるためとも考えられます。

ところで、政府が2023年6月13日に公表した2023年版消費者白書は、「SNS関連」「通販の定期購入」で消費者相談件数が過去最多を記録し、高齢者がトラブルに巻き込まれるケースが増加傾向にあると報告しています。

特に化粧品や健康食品などの定期購入契約をめぐる消費者相談は、過去最多の約7万5000件に達し、前年度の1.5倍に急増したとのことです。

アドアフィは一般的に、普通の広告代理店では扱いにくい化粧品や機能性表示食品、美容サロンや金融サービス等を扱うことが多いです。このためユーザーからは、広告の品質面や商品・サービスの信頼性について疑問視されることもあります。

仮にこのような事態に対処するために、Yahoo!やLINEが広告審査を厳しくするようなことがあれば、将来的な事業リスクのひとつになりうるかもしれません。(こたつ経営研究所)