食べられるにもかかわらず捨てられた「食品ロス」の2021年度の推計値が、523万トンだったことが、消費者庁・食品ロス削減推進室の調査でわかった。2023年6月9日の発表。

国民一人当たりに換算すると、1日約114グラム、年間で約42キログラムの食品を捨てていることになる。21年度は、前年度と比べて1万トン増で、15年度以来6年ぶりの増加となった。

新型コロナウイルスの感染拡大による度重なる行動制限で、食品製造や外食、小売りなどの事業者が消費者の需要の変化を読み切れなかったことで、廃棄が増えたとみられる。

食品ロス問題、20代の33.9%が「知らない」

食品ロスは、食品製造や外食。小売りなどの事業者からの報告に基づき推計する「事業系廃棄量」と、市町村への実態調査などから見積もる「家庭系廃棄量」に分類される。

2021年度の内訳をみると、事業系廃棄量は前年度比4万トン増の279万トン。

家庭系廃棄量は3万トン減の244万トンだった。

消費者庁の「2021年度 消費者の意識に関する調査」によると、「食品ロス問題を知っているか」(n=5000)との問いに、「知っている」と答えた人は80.9%(「よく知っている」23.1%と「ある程度知っている」57.8%の合計)にのぼった。前年度(79.4%)から、1.5ポイント増えた。

一方で、「知らない」と答えた人は19%(「あまり知らない」12%と「まったく知らない」7%の合計)だった。

次に、食品ロス問題の認知度を年代別に集計したところ、「知っている」と答えた人の割合が最も高かった年代は70歳代以上で90.7%(「よく知っている」30.9%と「ある程度知っている」59.8%の合計)だった。

その一方で、20歳代は33.9%(「あまり知らない」18.8%と「まったく知らない」15.1%の合計)の人が、「知らない」と答え、最も高かった。

【図1参照】

また、「食品ロスを減らすための取り組み」(複数回答)を聞いたところ、「残さずに食べる」と答えた人が69.3%と最も多くなった。次いで、「賞味期限が過ぎてもすぐに捨てるのではなく、自分で食べられるか判断する」が47.2%、「冷凍保存を活用する」45.1%、「料理を作りすぎない」41.7%と続いた。

一方で、「取り組んでいることはない」と答えた人も10.1%いた。【図2参照】

食品ロス問題を認知して食品ロス削減に取り組む人はどれくらいいるのだろうか。

今回の集計では、食品ロス問題を「知っている」と回答し、食品ロスを減らすための「取り組みを行っている」と答えた人は78.3%だった。前年度(2020年度)の調査と比較したところ、食品ロス問題を認知して食品ロス削減に取り組む人は1.7%増加した。

食品ロス問題を認知して、削減のための行動に移している人は着実に増えていることがうかがえる。

消費者行動の変化は? 「外食の回数減った」「食材の購入が増えた」

調査では、新型コロナウイルス感染症の拡大による食品に関する消費行動の変化について集計したところ、「外食の回数が減った」と答えた人が60%にのぼった。

その他の消費行動の変化をみると、「(自身や家族が)家庭内で料理を作る回数が増えた」と答えた人が24.3%、「冷凍食品や加工食品など保存がきく食材の購入が増えた」が23.1%、「食材の買い物(一度の購入量)が増えた」と答えた人は19.7%だった。【図3参照】

また、「賞味期限と消費期限の違いを知っているか」との問いに、「知っていた」と答えた人は71.9%にのぼった。その一方で、「知らなかった」と回答した人は10.2%だった。

これに関連して、「フードバンク活動やフードドライブ活動について、知っているか」との問いには、「両方の活動とも知らなかった」と答えた人が51.4%と最も多かった。

次いで「フードバンク活動のみ知っていた」の30%、「両方の活動とも知っていた」と答えた人が13.4%、「フードドライブ活動のみ知っていた」が5.2%となった。

ちなみに「フードバンク」活動は、食品の製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設などへ無料で提供する活動。「フードドライブ」活動は、家庭で使いきれない未使用食品を持ち寄り、それらをまとめてフードバンクの活動団体や地域の福祉施設・団体などに寄贈する活動をいう。

さらに、形や見た目が悪い、傷ついたなどの理由で市場に出回らない「規格外農産物・食品について知っているか」と聞いたところ、「知っていた」と答えた人は48%と最も多かった。次いで、「知らなかった」が32.1%、「言葉は知っていたが、内容は知らなかった」と答えた人が20%いた。

規格外農産物・食品について、「どのように考えているか」という質問では、「形や見た目が悪くても品質(味)が変わらなければ購入する」と答えた人が51.1%と最も多く、「通常品よりも値下げされるのであれば購入する」が36.6%で続いた。

「購入しない」と答えた人も、12.3%いた。

なお、規格外農産物・食品の認知と規格外農産物・食品についての考えとの関係を集計したところ、規格外農産物・食品を「知っていた」と答えた人は、「形や見た目が悪くても品質(味)が変わらなければ購入する」との回答が73.1%と最も多かった。次いで「通常品よりも値下げされるのであれば購入する」が26.2%と多く、「購入しない」と答えた人は0.7%とわずかだった。

その一方で、規格外農産物・食品を「知らなかった」と答えた人は、「通常品よりも値下げされるのであれば購入する」と答えた人が41.3%と最も多く、次いで「購入しない」の35%と、「形や見た目が悪くても品質(味)が変わらなければ購入する」と答えた人(23.6%)を上回った。

「てまえどり」を知らなかった人は最多の49.4%

調査では、消費者庁がコンビニエンスストアなどと連携して2021年6月から実施している「てまえどり」の取り組みについても聞いた。

「てまえどり」は、消費者が食品を購入する際に、陳列棚の手前にある商品(販売期限の迫った商品など)から買っていく活動で、販売期限が過ぎて廃棄されることによる食品ロスを削減する効果が期待されている。

そんな「てまえどり」の取り組みを「知っているか」と聞いたところ、49.4%の人が「知らなかった」と答え、最も多かったことがわかった。

次いで、「取り組みは知っていたが、店舗で掲示物を見たことがない」と答えた人が27.5%、「店舗で掲示物を見たことがある」の23.1%となった。

また、「てまえどり」について、「どのように考えているのか」聞いたところ、「『てまえどり』を実践している」と答えた人は39.4%(「ふだんから『てまえどり』を実践している」33%と「店舗で掲示物を見て『てまえどり』を実践した」6.4%の合計)だった。

一方で、60.6%の人が「『てまえどり』は実践していない」(「店舗で掲示物を見ていないが、『てまえどり』は実践していない」54.9%と「店舗で掲示物を見たが、『てまえどり』は実践していない」5.7%の合計)と答えた。

なお、「てまえどり」の認知と、「てまえどり」についての考えとの関係も集計した。それによると、「店舗で掲示物を見たことがある」と答えた人は、「『てまえどり』を実践している」と回答した人が75.3%(「ふだんから『てまえどり』を実践している」47.7%と「店舗で掲示物を見て『てまえどり』を実践した」27.6%の合計)。「『てまえどり』は実践していない」と答えた人は24.7%(店舗で掲示物を見たが、『てまえどり』は実践していない)だった。

一方で、「『てまえどり』を知らない」と答えた人は、「『てまえどり』を実践している」と回答した人が21.4%となっており、「『てまえどり』は実践していない」と答えた人は78.6%にのぼった。

政府は食品ロスを、2000年度の約980万トンから30年度までに半減させることを目標としている。