「たまに、自分でおにぎりを握って食べてたんだけど、それを加瀬くんに“ご苦労さん”って渡したりしてましたね。あいつ、すごい悩んでたし、大変そうだったから」
あの渡辺謙(60)が、自らおにぎりを握る。
「そんな代わり映えしませんよ(笑)。最近見て面白かった映画の話とかね。ただ、劇中では言葉の壁があって、うまく意思疎通がはかれない関係という設定だから、そのもどかしさとか距離感は、カメラが回っていないところでも、お互いすごく意識していましたね」(渡辺・以下同)
本作のストーリーは、’96年にペルーで起きた、日本大使公邸占拠事件にヒントを得ている。実は、ちょうどそのころ、渡辺も撮影のためペルーに滞在していたのだという。
「僕が帰国してちょうど1週間後に事件が起きて。もし、少しでもスケジュールがずれていたら、僕もその場にいたかもしれない。人質とテロリストとの間で友情が芽生えたという話もすごく鮮明に記憶に残っていて。だからこそ、僕がやらないといけない仕事なのかなと思いました」
武装したテロリストにとらわれるなか、渡辺演じるホソカワは、既婚者にもかかわらず、ジュリアン演じる憧れのオペラ歌手と激しい恋に落ちてしまう。
「もちろん、極限状態に陥ったからこそ、惹かれ合ったというのはあるかもしれない。かといって、一時の過ちというわけではないと思う。僕だったら? いやあ、こういう状況にはなかなかならないからなぁ(笑)」