「炎上商法であれば、“炎上”ではないんですよ。自分が意図して起こし、その後も継続して活動できるわけですから。
そう語るのは、これまで学校や企業などで2,000回以上の講演実績があるネットリテラシー専門家の小木曽健氏だ。
8月7日配信のYouTube動画で、生活保護受給者やホームレスの命を軽視するような発言で批判を浴びたメンタリストのDaiGo(34)。その後、2度の謝罪をするも、今もなお批判の声は止んでいない。
DaiGoの発言が炎上したのは、今回が初めてではない。過去にも《タバコ吸いすぎで、認知能力低下してるのかな?》や《大して税金払ってない奴ほど、税金の使い方に敏感なとこあるよね》など、Twitter上での発言にも批判が寄せられていた。
DaiGoが過激な発言を続ける背景について、小木曽氏は次のように考察する。
「DaiGoさんは最近、YouTubeの再生回数が伸びていなくて、『怒られちゃいました』というような動画を上げたら再生回数が伸びたといったことがありました。やっていることは堀江貴文さんや西村博之さんなどと同じで、炎上商法に近いものですが、それに失敗したのだろうという気がします」
確かにDaiGoの動画を確認すると、それまで約10万回台で推移していた再生回数が、7月3日配信の「ついに芸能界のボスに呼び出されました、すべてお話しします。」と題した動画では195万回に跳ね上がっている。
■「炎上商法をするほどのコントロールスキルがない」
「炎上商法ってすごく難しいんですよ」と指摘する小木曽氏は、インフルエンサーとして著名な堀江氏や西村氏などは「“鋼のハート”を持っている」と言及する。
「世の中から反発を受けるような投稿が拡散すると、9割はバッシングなんですが、残りの1割くらいはビジネスの網に引っかかる。その1割の人が自分のファンになってお金を払ってくれたり、オンラインでセミナー会員になってくれたりします。
ではDaiGoは今回の炎上を受けて、今後は“失言”を控えるようになるだろうか。
「意図的にしろ、通常はあそこまで危うい発言はしません。YouTubeのアカウントが停止されるリスクがあるくらいの発言であって、その危機管理ができていないということは、彼は炎上商法をするほどのコントロールスキルがまだないので、何とも言えません」
2度謝罪するも騒動が鎮火しないDaiGoだが、どのような謝罪の仕方が適切だったのだろうか?小木曽氏は次のように指南する。
「ネットやメディアで炎上した際の謝罪は『世間はなぜ今、自分を批判しているのか』を理解し、それに合致したものでなければ高い確率で火に油を注ぐことになります。DaiGoさんの謝罪で炎上が鎮火しなかったということは、その内容がズレていたのでは。『再生回数が伸びず焦っていた』など、自分の弱さをさらけ出す謝罪に加え、そのことを気づかせてくれたバッシングに対する『感謝』のコメントがあれば、また違った反応だったと思います」
■「表現の自由には制限が伴う」
今回のように著名人などの問題発言に遭遇した際、受け手である我々はどう受け止めるべきなのか? 小木曽氏はこう答える。
「炎上発言に対しては、“自分はどう考えるのか”と考えるキッカケにする程度で良いと思います。私たちはロボットではなく人それぞれ。考え方もバラバラです。
『この人はこんな危うい発言をしたことで、訴訟のリスクを抱えるかな。バッシングで仕事が上手くいかなくなるかもしれないな』くらいの距離感で眺めていれば良いのではと思います」
今回のDaiGoの発言をめぐっては、「表現の自由」の意義や制限に言及する声も上がっている。
「誰しもが責任を負いながら、その自由を行使しているので、発言した後には必ず、その発言に対する責任が生じます。ただし、それ以上に踏み込んで『発言すら許さない』というのはナシなんですよ」
自由な発言には当然、責任も伴うーー。昨今、SNS上での誹謗中傷は社会問題に発展し、被害者が法的措置に踏み切る事例も増えてきている。小木曽氏は法律の観点から次のように説明を続ける。
「法律というのは基本的に『~をするな』ではなく、『~をしたらこんなペナルティを負え』というものです。その一番シンプルなのが『表現の自由』です。“表現の自由には制限が伴う”というのは、『発言する前に黙らせることではなく、発言した後に責任を取らせる』ということでしかないんですよ。私はこれを『表現の責任』と呼んでいます」
果たしてDaiGoは、今回の炎上で「表現の責任」を痛感しているだろうか。