「私が20代だった’90年代は、きれいとか、かわいいの幅がすごく狭かったんです。海外でも日本でもスタイルがいいといえば細い。
そう語るのは、コラムニストのジェーン・スーさん(48)。雑誌『美ST』での連載「それゆけ!私立美魔女学院」をまとめたエッセイ集『きれいになりたい気がしてきた』(光文社)も好評発売中だ。
アラフィフになって、考え方や生き方が変わってきたというスーさん。古い価値観を押しつけられてきたアラフィフ女性も、「自分なんてどうせ」という思い込みを捨てて、自分のことを好きになってほしいと話す。
「まずは、自分の好きなところを1個作ってみる。たとえば、手先をきれいにするとか足の裏をツルツルにするとかでもいいんで。そうすると自尊感情も上がっていきます。そこから自分の好きなところを増やしていけばいいじゃないですかね。私は髪の毛がきれいだと言われることが多かったんで、それを大事にしました」
自尊感情の高まりとともに、スーさんはさまざまなことに挑戦するようになった。
「メークをいい加減にしていたんで、YouTubeのメーク動画を見てやってみると、確かに違う! きれいな人は起き抜けからみんなきれいなわけじゃなくて、ちゃんと努力してることがわかりました(笑)」
こんな発見もあった。
「20代で、肌がつやつやになるサプリを飲んでも爪が伸びるのが速くなるくらい(笑)。でも40歳を超えると、てきめんに効いて、めっちゃおもしろい! たとえばエステで顔の輪郭を引き上げるマッサージをやると、本当に引き上がる。『自分の顔がこんなふうに変わるんだ』とか『そういえばこんな顔してたな』って」
■8年ぶり“シングル”に。恋愛の新ルール勉強中
年齢を重ねることを楽しんでいるスーさん。更年期による心の変化すらも楽しんでいるという。
「最近、今までになくメンタルが落ち込むことが増えてきて。前までは、喜怒哀楽がないみたいな感じで、心を鍛えて一生懸命頑張って働いていたんですよ。なのに、気づけば『私なんてホント生きている意味もない』みたいな感じで家でしょんぼりしたりして……。『また人間らしい感情が戻ってきた?』と思ってびっくりしました(笑)」
そんなときは、心が不安定だった10代のころに戻るという。
「めちゃくちゃ悲しい曲や映画を聴いたり見たりします。10代20代のときの懐かしい曲を聴いてソファから起き上がれないぐらいまでボロボロ泣いて、一回底まで落ち込む。そしたら『はぁ~スッキリ』って。
更年期だけではなく、親の介護にも直面し始めるのがアラフィフ世代だ。スーさんの父は84歳。母は20年ほど前に亡くしている。
「父と一緒に“ピンピンコロリ”を目指してます。父は一人暮らしなんですが、まずプロの清掃を入れて、自宅で転んだりしないようにして。食事は毎食写真を撮ってLINEで送ってもらって栄養のバランスを見たり、ふくらはぎが鍛えられる電動の機械を郵送してやらせるとか。父は『監獄みたいだ』って言ってますけど(笑)。まぁ遠隔介護って感じですね」
自尊感情を高めて、ものの見方をちょっと変えるだけで、多くのことが楽しくなっていく。これから、スーさんはどんなふうに人生を楽しんでいくのだろう。
「20代は『男女を超えたところの人間として評価してくれ』みたいなことをやってたんですよ。だから今後は髪の毛を伸ばしたり、巻いてみたり、服も今まで付き合ってこなかったピンクとかを積極的に身につけてみるとか、女性に生まれたことを楽しむつもりで50代60代を過ごせればいいなと。
“好きな自分”でいるために、あなたもきれいになりたい気がしてきませんか?
(取材・文:インタビューマン山下)
【PROFILE】
ジェーン・スー
’73年、東京生まれの日本人。コラムニスト、ラジオパーソナリティ。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』、ポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」などのパーソナリティを務める