9月7日、ジャニーズ事務所が故・ジャニー喜多川前社長(享年87)による性加害問題について記者会見を行った。藤島ジュリー景子氏(57)は社長を退任。
しかしその後も批判はやまず、ジャニーズ所属タレントを起用していた企業各社による契約の見直しが加速している。
多くのジャニーズタレントを起用していたアサヒビールでは「今後、ジャニーズ事務所のタレントを起用した広告や新たな販促は展開しない」と声明を発表。現時点の契約は満了をもって更新しないとしている。
また日本航空(JAL)では、ジャニーズ所属タレントの広告起用を当面見送る方針を発表。他にも第一三共ヘルスケアや花王など、大手企業が続々と中止や見送りなどを発表している。
芸能ニュースを多数扱うコラムニストのおおしまりえ氏は「事務所による中途半端な対応の結果、結局はまたしても夢見る若者が犠牲になっているのではないか」と話す。その真意を聞いた。
■もっとも辛い立場なのは若手タレント
本件については現在まで各専門家がジェンダーや法的な観点、また国際的な観点などを論じており、今後の動向が非常に注目されています。
筆者個人としては、やはり今回の対応は「ほとぼりがある程度冷めるのを待っている」という印象を懐きました。社長が交代しても、依然としてすべての株を持つのは藤島ジュリー景子氏。それが変わらないことには結局、組織の根本的改善にはつながらないからです。
東山さんがAと言っても、全株を持つ藤島氏がBと希望すればそっちに進んでしまう。それが株式会社のシステムです。
スポンサー企業側からの見直しが進むことはジャニーズ事務所の強制的な対応の変化を加速させますから、今後も進んで欲しいなと思います。
ただそうした問題とは別に“結局、このままだといちばん損をするのは夢を持つ若いタレントである”という現実も考える必要があるのではと思っています。
■芸能事務所が担うべき2つの役割
そもそも、芸能事務所が担う役割には2つあると思っています。1つは「マネジメント」という言葉に代表されるような、タレント活動の後押しやサポート業務です。
「ジャニーズ事務所に所属しているから仕事が取れる」といった看板的な側面も、過剰な忖度を除けば事務所として大切な魅力です。
これはジャニーズに限ったことではありません。業界内では「◯◯に強い事務所」といった認識が存在しますが、これはそうした強みを活用していると言えます。
2点目は、会社組織としての健全な運営です。法律を遵守し、企業としてのイメージを守ることで所属するタレントのイメージも間接的に守るといったものです。
この2点に照らしてジャニーズ事務所を見ていくと、2点目はもちろん達成されていません。
そうなってくると実はもっとも被害を受けるのは、所属タレントのなかでも個人やグループとしての実力や知名度がまだ備わりきっていない10代~20代の若手タレントたちではないでしょうか。
彼らは今、事務所の看板がマイナスに働いて活動にも制限がかっている状態です。独立するにしても知名度やファンの獲得が十分とは言えず、また退所後の苦境などが待っていないともいえません。
こうした状況は彼らのさらなる活躍や、独立といった勇気ある次の一歩を踏み出しにくくさせているのは明らかです。
■ジャニーズ事務所は早期に対応を
重要なことは、ジャニーズ事務所が早期に社会的に見ても妥当だと判断されるような対応を取ることに尽きます。カギを握るのは新社長の東山氏……ではなく、やはり株主として実権を握る藤島氏ということになるでしょう。
近年、創設者であるジャニー喜多川氏がいなくなったことで事務所としての力が低下していたといわれていました。そこへきて、さらにそのジャニー氏による性加害問題が発覚したわけです。それは今後、ジャニーズ事務所にどのようなダメージと転換をもたらすのでしょう。
どうか被害に遭われた方がこれ以上、傷つくことがないように。また今まさに夢を追いかける若手タレントが、不本意に巻き込まれた渦の中で悲しい思いをしないよう祈るばかりです。
(文:おおしまりえ)