「今回のニュースで、久しぶりに早川社長の名前を聞きました。私たちが裁判をしてから、すでに20年。

まだ芸能界で活動していたことに驚きました」

そう語るのはAさん。

Aさんが早川社長と呼ぶのは、レコード会社「ニューセンチュリーレコード(以下、ニューセンチュリー社)」の早川寛社長のこと。Aさんはかつて早川氏が芸能プロダクションを経営していた際に、4人組アイドルグループ「フォーラッシュ」の1人として所属していたのだ。

2023年に逝去した歌手・八代亜紀さん(享年73)の生前のヌード写真を特典として付けたアルバムCD『忘れないでね』が4月21日から販売され、物議を醸している。

ニューセンチュリー社のHPには下記のような記載が。

《お宝として八代亜紀が24~25歳の時に同棲していたT社のNディレクターによってポラロイドカメラで撮影されたフルヌード写真2枚が掲載されています 八代亜紀の初めてのヌード写真です》

このCD販売を巡っては、「八代亜紀さんの尊厳を保護し、リベンジポルノを阻止する」というオンライン署名が4月28日時点で8万4千筆以上集まり、批判が高まっているのだ。

また八代さんの所属事務所の「八代ミュージック&ギャラリー」もホームページに《本件問題作の発表そのものは極めて不愉快な出来事であり、絶対に許すことのできないもの》《現在、当社におきましては、刑事民事を問わず、あらゆる手続きの準備を進めている》などとコメントしている。

そもそもなぜ早川氏が、八代さんの写真を所有しているのか? スポーツ紙記者によれば、

「HPで名指しされている“T社のNディレクター”は、八代さんと交際が報じられていた人物です。八代さんは1982年に、N氏が立ち上げたレコード会社に移籍したのですが、この会社は経営不振におちいったのです。その際、出資していたという早川氏が八代さんの曲の音源などを手に入れたそうで、ほかには八代さんの写真もあったようです。早川氏本人は週刊誌の取材に対して“2000年ごろにウチが八代さんやほかの歌手の原盤権や、会社にあった財物一式を買い取った”と証言しています」

■写真の出版を持ちかけていた早川氏

実は、早川氏は20年以上前に八代さんの写真の公表のために動いていたという。ある出版関係者はこう明かす。

「あれは2004年のことだったと思います。当時、早川社長が『八代亜紀さんと交際していたNさんが撮影したヌード写真を持っているから、おたくのところで記事にしないか』と持ちかけてきたのです。

しかし結局、私はその話を受けませんでした。のちに早川社長に会ったときに、『あの写真はどうしたのか』と聞くと、『向こう(八代さん)の事務所に返したよ』と言っていたのですが、20年もたって、まさかこんな騒動になるとは……」

八代さんの原盤権を手に入れたことは、早川氏にとって大きな意味を持っていたようだ。前出のAさんはこう語る。

「当時の事務所には八代さんクラスの方はいませんでしたから、自慢だったのでしょう。事務所に入ってきた若い子たちに八代さんの名前を出しては、『原盤権も持っている』『原盤権を持っている人間がいちばん偉いんだ』という話をしていました。

『ほかにも八代さんのネタを持っている』とも話していましたが、はたして写真のことだったのかはわかりません」

Aさんが“八代さんのネタ”について早川氏に聞く機会は訪れることはなかった。アイドルグループ『フォーラッシュ』のうち、Aさんを含めて3人が早川社長を提訴したのだ。

■事務所社長の早川氏から枕営業を奨励されて

「いま思い出しても、ひどい会社でした。事務所の壁には劇画タッチの漫画の切り抜きが貼ってあったのですが、それが“芸能界で売れるために、オジサンと枕営業しまくる”という内容で。それが会社の標語のようになっていたのです」

実際にAさんも紹介を受けたという。

「突然呼び出されて内装会社の社長さんに会わされました。早川社長としては、“愛人としていかがですか”ということだったと思いますが、私もそんな気はありませんでしたし、先方も愛妻家だったそうで困っていました。

私は大丈夫でしたが、実際に缶詰会社の社長の愛人をやらされていた子もいましたし、旅行会社の社長から愛人になれと言われていた子もいました」

さらにセクハラも日常茶飯事だった。

「早川社長から胸をさわられたり、着替えているところを撮影されたりといったことはふつうにありました」

Aさんら『フォーラッシュ』の3人は、セクハラや売春をさせられそうになったとして損害賠償を求める訴訟を起こしたが、05年12月、東京地裁は彼女たちの主張を認めて、ニューセンチュリー社に約300万円の支払いを命じる判決を言い渡したのだ。

当時、裁判長は「女性の芸能界に向けた夢を踏みにじる行為で、著しい精神的被害を与えた」と指摘している。

■命じられた賠償金も払わず……

勝訴したAさんだったが、早川氏は賠償金を払おうとしなかったという。

「300万円のうち、100万円はなんとか差し押さえることができました。早川社長は払う気はなかったようですが、ニューセンチュリー社の口座情報が入手できたので、弁護士さんに差し押さえてもらったのです。社長はひどく悔しがっていたそうです」

4月28日現在、ニューセンチュリー社はHPで《現在注文が殺到し製造が間に合いません。そのため一時的に 注文をストップさせて頂いています》と告知している。

本誌は、なぜ賠償金を払わなかったのかなど、いくつかの質問をまとめてニューセンチュリー社にファックスやメールを送付。その後、何度も電話もかけたが、会社名や編集部名を名乗るたびに一方的に切られた。

そのなかでも一度、なんとか短時間だけ担当者と会話ができたことがあった。

――ファックスやメールで質問状を送らせていただいております。

「そんなの、忙しくて見てません」

――フォーラッシュさんとの訴訟がありましたよね?

「はいはい」

――賠償金300万円を全額お支払いしていないと伺っていますが。

「(無言で電話が切れる)」

本人には取材を拒否されているため、早川社長が、これほど批判を浴び続けながらも、八代さんの写真付きCDの販売を強行した理由はさだかではない。だが少なくともかつての所属タレントに賠償金を払うためではないのだろう。

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