全国で道路の陥没事故が相次いでいる――。

5月8日早朝、JR横浜駅西口近くの飲食店街の市道で、近くの飲食店従業員が、道路に直径約5メートル、深さ約15センチの陥没があるのを見つけ、警察に通報。

さらに11日には、大阪府摂津市でも、道路が直径・深さともに約3メートルにわたって陥没しているのを通行人が発見。いずれもケガ人はなかったものの、復旧まで数日を要した。

「横浜での陥没は、隣接するビルの建設工事現場への土砂流出が原因だとみられています。

摂津市のケースは、地中にある下水道管とマンホールの接続部分が破損したことが原因のようです」(全国紙記者)

今回は大事故につながらなかったが、“道路陥没事故”の恐ろしさを実感したのが、昨年1月に埼玉県八潮市で起きた下水管の破損による大規模陥没事故だろう。通行中のトラックが陥没に巻き込まれ、転落。運転手は約3カ月後に約30メートル下流の下水管内で遺体で発見された。

「この八潮市の事故が下水管の破損・老朽化に起因するものだったので、国土交通省は全国の自治体に、大規模な下水管内の調査を要請しました。今年4月、その調査結果が公表されたのですが、全都道府県で計748キロメートルにも及ぶ下水管が、交換や修繕などの“対策が必要”と判定されました。さらに、道路下の空洞も96カ所で確認されています」(前出の全国紙記者)

驚くべき数字だが、「こうした道路陥没は、規模の大小を問わず全国で年間約1万件発生しています。このうち約3割が、下水管の老朽化などに起因するものです」と話すのは、行政の水道事業に詳しい近畿大学教授の浦上拓也さんだ。

単純計算すると、毎日約27件、全国のどこかで道路陥没が起きていることになる。つまり、いつ自分が巻き込まれても不思議ではないわけだ。

気がかりなのは、どのような場所で陥没リスクが高まるのか、という点だろう。

本誌編集部では、国土交通省が発表した「路面陥没発生状況」を基に、令和6年度(2024年度)の1年間で陥没が起きた全国678市区町村のデータを解析。「道路陥没頻発都市ランキング40」(表参照)を作成し、理由を探った。

■厳しい寒さが地中の空洞を作る

まず目につくのは、陥没件数が多い上位40都市のうち、「政令指定都市」が12(1位・札幌市、2位・新潟市、3位・広島市など)、「中核市」が17(4位・下関市、5位・高知市、6位・高松市など)で、実に29都市がいわゆる“大都市”だという点だ。

大都市ほど、陥没が多い傾向にあるのは、なぜなのか。

「下水道の整備は、1970年代から大都市圏を優先して進められてきました。そのため、大都市ほど古い下水管が多く、老朽化が深刻化しているのです。下水管は設置から30年以上たつと事故が急増しますが、その理由のひとつが、家庭や工場などの排水に含まれる有機物から発生する硫化水素がコンクリートを徐々に腐食させることです。穴や亀裂ができ、周囲の土砂が流れ込むことで道路陥没を引き起こします」(浦上さん、以下同)

さらに、「1位・札幌市(年間914件)」「2位・新潟市(年間423件)」と、上位に“豪雪地帯”が並んでいる点も気になる。寒冷地という環境そのものが、道路陥没に影響しているのだろうか。

札幌市の担当者に取材したところ、「当市では、数十センチ程度の小さなへこみも陥没としてカウントしているため、件数が多くなっている」と説明したうえで、雪国特有の事情を説明してくれた。

「寒冷地では、冬になると道路の水分が凍って地面が盛り上がり、除雪車で溶かすと沈む、という状態を繰り返します。

その影響で地盤の中に空洞ができやすくなり、道路陥没につながると考えられます」

気候の影響のほかに、陥没の大きな原因のひとつが「地盤の弱さ」だと前出の浦上さんは指摘する。

「下水道は、水道管のように完全に密閉された構造ではなく、土管をつなぎ合わせたような形で、水を自然に流す仕組みです。そのため、地盤が弱い場所では、沈下や揺れによってつなぎ目にズレやひびが生じやすい。そこから周囲の土砂が流れ込み、最終的に道路陥没につながっていくのです」

地盤が脆弱になりやすい要因としては、「(1)河川が多く地盤が緩みやすい地域」「(2)埋め立て地」「(3)火山灰が堆積し、水分を含むともろくなりやすい地域」「(4)砂丘や砂地が多く、土砂が流出しやすい地域」などが挙げられるという。

「さらに、下水道整備は、公害対策の一環として、大きな河川周辺の大都市部から進められてきた経緯があります。つまり、老朽化が進んでいる可能性がある。こうした背景を考えると、現在、大きな河川の近くにある大都市圏で大規模な事故が起こり始めているのは自然な流れとも言えます」

実際、一級河川・太田川が流れる「3位・広島市(年間260件)」、庄内川や新川などの河川が流れる「8位・名古屋市(年間172件)」など、河川の多い大都市では陥没が頻発している。

「今後は、全国で整備から30年以上経過する下水管が急速に増えていきますから、陥没の件数自体も増加傾向になっていくことは間違いないでしょう」(浦上さん)

問題は、大事故に至る前に、老朽化した下水管をどこまで修理・更新できるかだ。

「国土交通省の要請を受けて、各自治体が下水管の緊急点検を行った結果、1年以内に補修が必要な“緊急度1”と、5年以内に対策が必要な“緊急度2”に分類されました。国の目安では、緊急度1は1年以内、緊急度2は5年以内に対策を進めることになっています」(浦上さん)

ただ、現場ではそう簡単には進まないという。

「もともと修繕計画に入っていた場所なら、予算や工事スケジュールも組まれています。しかし、今回の緊急点検で新たに見つかった危険箇所は、計画の見直しから始めなければなりません。

予算確保や業者の手配も必要で、準備だけで1年以上かかることも。特に、財政難や人手不足に悩む自治体では、“緊急度1”でも、実際に工事に着手できるのが数年後になる可能性もあるのです」

総務省は2026年度から、これまで対象外だった下水道の修繕費についても財政支援を受けやすくする新制度を始めたという。だが、中東情勢の悪化による資材不足や価格高騰も重なり、現場の先行きは厳しい。

「資材価格が上がれば、最終的には下水道使用料の値上げも必要になります。ただ、住民への説明や議会手続きもあり、すぐに値上げはできません。自治体によっては赤字を抱えながら工事を進めざるをえなくなるでしょう」

少しでも道路の異変に気づくために個人でできることは?

「まずマンホール周辺を見ることです。マンホールは下水管との接続部分が弱く、劣化や振動の影響を受けやすい場所。特に大型車が頻繁に通る道路では、揺れによって亀裂が入ることもあります。もし、マンホール周辺に大きなひび割れや不自然な沈み込みを見つけた場合は、自治体に連絡して確認してもらうことが大切です」

陥没事故に巻き込まれないためにも、心にとどめておこう。

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