しかし、夢がふくらむ家づくりでは、工務店の営業マンに誘われるがまま、余計な設備を作りまくった結果、費用がみるみるとかさんでしまうケースも……。
資金面で痛い目を見ることなく、理想の家を作り上げることはできるのか。工務店の営業マンとしてスタートした住宅業界でのキャリアは10年以上、マイホーム管理アプリ「マイホム」、プリフィックス注文住宅「PlusMe(プラスミー)」などを手がける、株式会社マイホムの代表取締役CEO・乃村一政さんに聞きました。
ウッドデッキとカーポートは間違いの典型例
一方、ダメな営業マンに当たった場合は最悪。
「家づくりは多くの人にとって、一生に一度。マイホームを夢描くお客さんは、理想を実現しようとします。ただ、とにかく『売りたい』と考える営業マンと当たってしまったら最悪で、不要なオプションをつけてしまい、完成後に引き渡されて『想像と違う』と嘆くお客さんは多いんです。費用も相場では数千万円かかるわけですから、結果として損になるのは想像にたやすいと思います」
なかでも、間違ったお金の使い方でよくあるのは、家の品格を上げそうなウッドデッキ、雨から愛車を守ってくれるカーポート。住宅の見栄えもよくなりそうですが、その理由とは……。
「本来、どちらも住みはじめて必要になったら作ればいいんです。床下に電極や温水パイプを組み込む床暖房であれば施工時に作るのが一般的ですが、ウッドデッキやカーポートは、生活必需品かといえば優先レベルはだいぶ低いですよね。それでも、ダメな営業マンの誘いに乗って作ってしまい、結果、メンテナンスが行き届かずに朽ち果てたままの住宅もよく見かけます」
後悔するお客さんは「何が必要か、事前にすり合わせていない」
マイホームを求めて、ハウスメーカーに訪れるのは「夫婦」が多いといいます。結婚、出産と、ライフステージの変化に伴う一生に一度の大きな買い物。間違ったお金の使い方をしないためには、夫婦であらかじめ「話し合う」のも必要と、乃村さんは指摘します。「ウッドデッキ、カーポートなどに目が向いてしまうのは、事前に『何が必要か』をすり合わせていないのも原因の一つです。 僕の経験上、上手な家づくりをされるお客さんは、事前にご夫婦でしっかり話し合っています。
実際、夫婦の意思がブレていると相談中に揉めるケースも。さらに、余計な費用がかかってしまう可能性もあるそうです。
「先例のウッドデッキでは、生活環境によってはプライバシー保護のために目隠しフェンスを建てる必要もあるんです。実際、完成後に近所から『丸見え』と分かり、50万円ほどの追加工事を強いられたお客さんがいました。カーポートは、作ってみたら家の外観デザインを損ねてしまったというケースも。また、全部屋でクロスの色を変えたお客さんは、後悔していましたね。
住宅の省エネ性能、気密性にはお金をかけるべき
「家づくりでは、数十年後の生活を見据えた『ライフサイクルコスト』を考えましょう。昨今、注目されているのは省エネ性能です。
さらに、気密性にこだわるなら「ガラス」もポイントになるとか。
「住宅のデザインを重視する場合、デザイン性を重視したり、採光を取るために、窓のスペースを『大きく取りましょう』と提案されるのもあるあるです。ただ、壁と違い、窓からの熱の放出を防ぐにはどうしても限界があるんです。昨今は、トリプルガラス、トリプルサッシなどで気密性を確保できますが、完璧とは言えないので、慎重に検討するべきポイントです」
一生に一度の買い物ではやはり、損をしたくありません。思い描くマイホームには「何が必要か」とみきわめて、かけるべきところにお金をかけ、不要な設備にはお金をかけない。
【乃村一政】
(株)マイホム代表取締役CEO。1976年、奈良県生まれ。高校卒業後、吉本総合芸能学院(NSC)へ14期生として入学。約6年間の芸人活動を経て、訪問販売の営業マンに転身。2006年より住宅業界へ移り、2010年に奈良県でSOUSEIを設立。2021年にマイホムを設立。
<取材・文/カネコシュウヘイ>