(基隆中央社)権威主義体制の象徴として台湾各地で撤去や移設の動きが進む蒋介石元総統の銅像。北部・基隆市で未対応の銅像は残り1体となっている。
銅像を管理する台湾国際造船基隆工場は17日、現段階では移設する計画はないと説明したが、その処遇を巡りさまざまな声が上がっている。

内政部(内務省)の統計によると、同市には2023年にリスト登録された権威主義体制の象徴は11体あった。撤去や移設されずに残る最後の1体とされる蒋介石像は同工場の入り口脇の広場にあり、ローブを着てつえを持っている。

昔はこの広場で国旗掲揚が行われていたと振り返るある従業員は、銅像は設置からすでに数十年たっており、撤去する必要はないと語る。だが、民進党の張之豪市議は、民主主義の時代にいわゆる指導者や偉人を記念する行為は個人や団体に戻し、国営事業の土地は効率的に使うべきで、銅像を建てるような無駄をしてはならないと主張する。

一方で国民党の韓世昱市議は、蒋は偉大な指導者の一人であり、蒋がいなければ「中華民国在台湾」(中華民国は台湾にある)といった歴史はなかったと強調。歴代の総統が任期中に残した歴史的軌跡は後世によって評価されるが、その結果を問わず尊重されるべきだとし、地域の発展のために移設する必要があれば、地域住民と話し合うべきだと語った。

また同市内の学校に残る権威主義体制の象徴について、市政府教育処は18年、9校に残っているとしていたが、3年前に碇内小学校の広場の中央に設置されていた蒋介石像が隅に移設され、金色に塗り替えられた他、昨年には七堵小学校の蒋介石像が撤去されるなどし、全ての対応が完了した。

碇内小の黄正昆校長は、国民党政権が市民を弾圧した1947年の2・28事件の被害者遺族からすれば蒋は悪人だが、戦後台湾に移住した外省人の老兵からすれば別の見方があると指摘。歴史の苦しみを受け入れて認めることで、少しずつ傷が癒えることを願うと述べた。また銅像は教材であり、教師が歴史を伝える手段にもなると語った。

(王朝鈺/編集:齊藤啓介)
編集部おすすめ