639年かけて演奏する「世界一長い曲」が7年ぶりに演奏(ドイツ)

演奏終了は2640年、世界一長い曲が7年ぶりに演奏 image credit: youtube
 記憶された人類の歴史の中で、最も長く続く音楽パフォーマンスと言われている『オルガン2/ASLSP』が、このほど7年ぶりにドイツの廃教会にて演奏された。

 この曲は、アメリカを代表する現代音楽の作曲家、故ジョン・ケージ氏により作成されたもので、曲名のASLSPはAs Slow as Possible、つまり「可能な限り遅く」という意味を持つ。

 ケージ氏の意向に沿って2001年からドイツで開始されたこの演奏が終わる予定は、なんと2640年!

 実に639年をかけて奏でられる特別な音のパフォーマンスを、今回も多くの人が見守った。『Oddity Central』などが伝えている。
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As Slow as Possible note change, John Cage. Impulse 15; 2020

【ジョン・ケージ氏が手掛けた世界で最も長い曲】

 「慌ただしい現代の生活に音楽的に逆らう」というコンセプトで故ジョン・ケージ氏が作曲した“世界で最も長い曲”とされる『オルガン2/ASLSP』が、今年9月5日、ケージ氏の誕生日に実に7年ぶりに演奏された。

 演奏場所となったのは、ドイツ中部ハルバ―シュタットにある聖ブキャルディ廃教会だ。

 世界初として、この教会にオルガンが設置されたのが1361年のこと。1987年に書かれた『オルガン2/ASLSP』は、もとはピアノ曲として1985年に作成された。


 ケージ氏の「可能な限り遅く」演奏するという意向に沿って、この曲の演奏が同教会で提案されたのは2000年。オルガンが設置されてから2000年に至るまでの期間が639年だったことから、演奏時間を639年に設定された。

 この壮大なプロジェクトのきっかけは、1992年にケージ氏が死去した後97年にドイツで開かれたオルガン・シンポジウムだったという。

 専門家らは、この曲はオルガンの寿命と後世の平和や創造性が続く限り永久に演奏できると結論付けたが、演奏するオルガンの耐久性や寿命が無限ではないことから、639年と設定されたのだ。

 曲の演奏が始まったのは2001年9月5日の故ケージ氏の誕生日だった。しかし、曲の冒頭は長い休符のため沈黙で始まっており、最初の和音が実際に奏でられたのは17か月後の2003年2月5日だった。

【7年ぶりに新しい和音が演奏される】

 今回、2013年10月5日の前回の演奏から7年経った2020年9月5日に、再び新しい和音が奏でられた。


 厳粛な儀式のもと、多くの人が教会に詰めかけ、記念すべき演奏を見守った。


 その様子は公式サイトでもライブ配信されているが、今回は2名のオルガン奏者により実施された。1つの音と音の間の時間は、演奏者に委ねられているそうだ。


 ケージ氏は、実験的楽曲を手掛けることで知られた現代音楽の作曲家だった。

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 1952年には4分33秒の間、初めから終わりまで休符のみの全く演奏しない『4分33秒』と名付けられた「沈黙の音楽」を作曲し、話題になった。

 次に和音が変わるのは2022年2月5日。1、2年ごとに6本のパイプが違うコードに切り替わるため、2030年には21の和音が奏でられるようになるそうだ。

 この曲の演奏終了予定は2640年の9月5日で、まさに多くの年月をかけて奏で続けられる音楽は、むしろ長い祈りに近い印象を受ける。

 ちなみに、1985年に作成されたピアノ曲は、20~70分ほどで演奏できるという。

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The Longest Piece of Music

written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:639年かけて演奏する「世界一長い曲」が7年ぶりに演奏(ドイツ) http://karapaia.com/archives/52294639.html