ついにライオンや虎の培養肉が誕生。果たしてそのお味は?
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 研究室で作った動物の細胞を培養して作る「培養肉」は、動物の命を奪うことなく生産できることから次世代の食肉として注目を集めている。

 既に牛肉や豚肉、鶏肉や魚などの培養肉が開発されているが、この技術を使えば、どんな動物の肉の培養が可能のようだ。


 イギリスの「プライミバル・フーズ社(Primeval Foods)」は、ライオンや虎などの培養肉を開発しているという。

 食べようとすら思ったことがないが、培養肉なら、ライオンのステーキ、虎のナゲットやシマウマの寿司ロールなど、エキゾチックアニマルの肉を食べることが可能となるのだ。

食肉需要を満たす環境にやさしい培養肉 地球環境を守る取り組みが広がっている中、2040年には世界の食肉の60%が、植物由来のベジミートや、培養肉などの代替肉に置き換わる可能性があると言われている。

 英ロンドンに拠点を置くベンチャー企業「エース・ベンチャーズ社(Ace Ventures)」によって設立されたプライミバル・フーズ社は、今食品業界から熱い視線が注がれている「細胞農業」を行なっている。

 細胞農業の盛り上がりは、従来の畜産業にはないメリットゆえのことだ。

 研究室の「バイオリアクター(生体触媒を用いて生化学反応を行う装置)」で動物の細胞を培養して作るため、動物の命を奪わない。
しかも家畜を育てるよりもずっと環境に優しい。

 世界人口は2050年までに90億人に達すると予測されており、細胞農業は、増加する食肉需要を、限りある天然資源を無駄にすることなく、二酸化炭素の排出を抑えた上で満たすことができる、持続可能な食材として期待されているのだ。

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ライオン、虎などエキゾチックミートの培養肉を開発 培養肉企業が主に扱っているのは、牛肉・豚肉・鶏肉といった一般的な食材だ。だがプライミバル・フーズ社は、培養肉ならではの、めったに食べることのできない肉を開発している。

 現在同社が取り組んでいるのは、シベリアトラ、ヒョウ、クロヒョウ、ベンガルトラ、ホワイトライオン、ライオン、シマウマなどのお肉だ。

 こうした珍しい「エキゾチックミート」を培養肉技術で開発しようというのだ。


 一体なぜ同社は変わり種のお肉に手を出したのだろうか?

 これについて同社は、我々が普段口にしている食肉は家畜化するのが簡単だったからという理由で食されているという。

 だが技術が構築された結果、どんな動物の培養肉も作り出すことが可能となった。最もおいしく栄養価の高い動物の培養肉を食べる機会が得られたのだという。

 もし、ライオンや虎の培養肉がおいしいとなれば、従来の食肉にとって代わるかもしれない。1兆ドル規模の培養肉市場が開かれているのだという。

 また重要なこととして、珍しい動物の肉ではあるが、その動物の命を奪う必要は一切ないことを同社は強調する。
だからこそ、これまでは不可能だった食肉市場の可能性が開けたのだ。

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味も栄養も最高のお肉を求めて エース・ベンチャーズのマネージングパートナー、イルマズ・ボラ氏は次のように説明する。
培養肉のおかげで一番美味しくて、健康的で、栄養に富んだお肉を探究できるようになったのです。土地柄や食べ物の好みに合わせた、その国ならでは食肉を見据えています。

たとえば、イタリアのレストランではキリンが名物料理になるかもしれませんし、中国ではベンガルトラ料理が大人気になるかもしれません
 ボラ氏によると、これまでの畜産の歴史を考えれば、野生動物の肉を食べることで、私たちは新しい体に進化できる可能性があるという。

「エキゾチックミートは、人間の脳や腸内細菌叢を新たに進化させるかもしれません」とボラ氏は話す。


 というのも、不健康なコレステロールや飽和脂肪酸などを減らしつつ、これまでは得られなかったタンパク質やアミノ酸を食べられるようになるからだ。

 「将来は、安眠や情緒安定のために培養ジャガー肉が推奨されたり、ボケ防止に培養ゾウ肉が推奨されたりなんてことがあるかもしれませんね」

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まずは高級レストランから プライミバル・フーズ社は現在、エキゾチックミートを使ったハンバーガー用パティを商品化する計画を進めている。

 だが差し当たり当局の許可が降りるまでは、ミシュランの星つきレストランでライオンやトラなどの培養肉を提供する予定だそうだ。

 実はエキゾチックミートを売りにするレストランはある。

 たとえば、ロンドンにはワニ・ラクダ・カンガルーの料理を提供する「ARCHIPELAGO Restaurant」や、ワニとスプリングボックの料理が食べられる「Vivat Bacchus」といったレストランがある。

 「人々は新しい食材や食体験を常に求めています。
しかし伝統的な家畜でその需要を満たすには限界があります。牛肉・鶏肉・豚肉の先に進まねばなりません。もちろん自然を犠牲にすることなくね」と、ボラ氏は語る。

 プライミバル・フーズ社が最初の取引相手として狙いを定めるのは、流行を作る高級料理店で、ロンドンやニューヨークで試食会の開催を計画している。しかし、いずれはスーパーなどでも手に入るようになるだろうという。
目標は、世界の主流になることです。
各国に少なくとも1製品か1種は提供したいと考えています。

プロの料理人なら珍しい食材でも素晴らしい料理を作れますから、まずはレストランから始めています。ですが、いずれ一般消費者にも受け入れられるようになるでしょう


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立ちはだかる各国の食品規制 こうした培養肉の普及にとって大きなハードルなのが、各国の食品に関連する規制だ。

 今現在、培養肉の販売が正式に承認されているのはシンガポールだけだという。シンガポールでは2020年、培養鶏肉が政府の承認を経て、チキンナゲットの形で販売される予定だ。

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 だが、ボラ氏はこの技術は十分成していると考えている。
どの国も本当は歓迎しているのだと思います。ですが、先陣切って進めようとはしません。

一般に、新しい技術が登場すると、どこかの国がリーダーとなってそれを推進し、他国が追従します。普及が進むのは、アメリカが培養肉の法規制を整えたタイミングではないでしょうか
 同社は次のステップとして、キリンやゾウなど、他の動物の培養肉を開発しているそうだ。

References:Lion burger? Tiger tacos? Meet the cell cultured start-up working in exotic meats / written by hiroching / edited by / parumo

 そういえば日本でも、培養肉の開発に本腰が入ったようで、日清食品と東大の共同研究で、「食べられる培養肉」を作ることに初めて成功したというニュースがあったね。

 正直おいしくて栄養も優れ、食感もよければ、培養肉という選択肢もあるかもしれない。もし将来、昆虫と培養肉とベジミート(植物由来肉)しかなくなったとしたら、あなたならどれを選ぶ?

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