その原因は「クシュ」と呼ばれる麻薬である。この麻薬の成分には、すりつぶした人間の骨が使用されており、クシュを求める依存者の需要を満たすため、材料となるべき人骨を墓から掘り起こし、持ち去る事件が増加しているのだ。
同国のジュリアス・マーダ・ビオ大統領は、国民へ向けた演説でクシュを「死の罠」と呼び、国を挙げての対策に乗り出すと宣言した。
人骨から作られる恐ろしい麻薬「クシュ」 シエラレオネで、向精神作用がある「クシュ」がまん延し始めたのは、6年ほど前のことだという。依存性が非常に高く、また安価なことから、瞬く間にホームレスや若者の間に瞬く間に広がって行った。
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クシュの成分になぜ人骨が含まれることになったのかは、実はよくわかっていない。
とにかく「材料に人骨が必要」という噂が広まり、墓を暴いて遺体を盗み出す事件が増加の一途をたどっているのだ。
クシュの恐ろしいところは、死につながる麻薬だという点にある。常用するうちに臓器不全や精神疾患を引き起こし、死亡する中毒者が後を絶たない。
また、体内の免疫システムを弱体化させる作用も知られており、傷口が治らず化膿したり、足がひどくはれ上がったりする。
現在、シエラレオネ国内には、たった一か所の薬物リハビリテーションセンターがあるだけだ。ベッド数が100床ほど。国中にまん延している中毒者の受け皿になるには、あまりにも少なすぎる。
クシュが原因で精神病院に入院する患者も増えており、2020年から2023年にかけて、その数は4,000%も増加したという。
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クシュまん延の背景には根深い社会問題が 常習者たちはいったいなぜ、クシュに手を出してしまったのか。どうしてやめられずにいるのか。彼らの声を聞いてみると……。
・クシュは厳しい現実を全てを忘れさせてくれるんだ。一瞬だとしても、クシュは自分を幸せな気分にしてくれる。心配事や社会問題を忘れさせてくれる。それで十分なんだ!
・僕たちは常に緊張し続けている。仕事がないんだ。この国には何もないんだよ。クシュはこういった問題を忘れさせてくれるんだ。クシュがまん延した背景には、新型コロナウィルスによるパンデミックにより、シエラレオネの経済が混乱に陥ってしまったこともある。仕事もなく機会も与えられない若者たちが、薬物に手を出すようになったのだ。
以前はお金があれば食べ物や着る物を買うのに使っていた。今はクシュを買うだけだ。泣きたいけど、止めるのは簡単じゃないよ
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幼い子供たちも犠牲者に 現地で活動している慈善団体House Of Happiness Sierra Leoneでは、中毒患者やその温床となっているホームレスの様子、時には道端に横たわるクシュの犠牲者の姿などをSNSに投稿し、注意喚起と啓もう活動に取り組んでいる。
だがそのメッセージも、疲弊しきった国民のもとへは届きづらいようだ。同団体の投稿からは、こんなローティーンの子供もクシュの常習者になっている現実も見える。
このクシュにまつわる報道では、「人骨から作られる麻薬」という猟奇的な面ばかりがクローズアップされているが、本当の問題はもっと根の深いところにあるようだ。The youngest homeless and #Kush Addicted boy in Sierra Leone.
— House Of Happiness Sierra Leone (@HOHSIERRALEONE) April 11, 2024
13 years old #Kush smoker pic.twitter.com/1VnhA5mfuF
今回の非常事態宣言では、大統領自身がクシュの撲滅に乗り出した!というイメージを内外にアピールしたいようだが、クシュのために21歳の息子を亡くしたマリーさんは取材に対しこう語っていた。
今のこの惨状と闘うために、当局は大統領の演説以外にやらなければならないことがたくさんあるはずです。なお、現在アメリカでも「クシュ」という名前のドラッグが流行り出しているが、名前は同じでも成分が違うんだそうだ。アメリカのものは大麻の一種で、人骨は含まれていないとのこと。
シエラレオネの現状を伝える報道はこちらから。
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Sierra Leone Declares National Emergency Amid Rise in Drug Use | Firstpost America
References:Why a rising number of people in Sierra Leone are digging up human graves / Sierra Leone Declares Emergency After Addicts Dig Up Graves To Get High On Drug Made From Human Bones / written by ruichan/ edited by parumo
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