アメリカやヨーロッパでは、ペットショップで業者から買い付けた生体販売を中止し、代わりに保護施設の動物たちを譲渡する動きが広がっている。
そんな中、2026年4月、アメリカ・コロラド州のジャレッド・ポリス州知事は、州内のペットショップが犬や猫の販売を禁止する法案に署名した。
この法案が施行される2027年1月1日以降は、コロラド州のペットショップで、犬や猫を販売することは基本的に禁止となる。
背景にあるのは、劣悪な環境で犬や猫を大量に繁殖させる、悪質な「パピーミル」問題である。
コロラド州でペットショップでの犬猫販売が禁止に
コロラド州議会の公式ページ[https://leg.colorado.gov/bills/HB26-1011]によると、この法案は2026年4月29日、ポリス知事が署名したことにより成立した。
施行は2027年1月1日からで、同日以降、州内のペットショップでは業者から買い付けた犬や猫の販売やリースのほか、交換や競売などによる所有権の移転ができなくなる。
ただし、地元の保護施設から移送された犬や猫を、店内で保護・展示、譲渡することは認められるそうだ。
ポリス知事は、声明の中で次のように述べている。
私たちは、劣悪な環境で犬や猫を過剰繁殖させるパピーミル産業を止めようとしています。
コロラド州民にはペットを「買う」のではなく、「譲渡を受ける」こと、あるいは適切な飼育・繁殖を行っている正規の認定ブリーダーから迎えることを勧めています
この法案を提出したのは、コロラド州の下院多数党院内総務、モニカ・デュラン議員だ。彼女は、この法案成立までに8年を費やしたという。
8年間にわたる話し合い、8年間にわたる挫折、そして「まだ早い」「今ではない」「たぶん永遠に無理だ」と言われ続けた8年間でした
デュラン議員は、この法律はペット関連ビジネスへの攻撃ではなく、コロラド州の価値観を反映したものだと説明した。
ペットショップは今後も営業できます。地域社会と動物とのつながりも続きます。でも、苦しみを州へ持ち込んでいた生体流通のパイプラインは終了します
認められたルートから犬や猫を迎えることは可能
この法案は、「犬や猫を家庭に迎える道が閉ざされる」ことを意味するものでは決してないという。
また、保護施設やレスキュー団体にいる犬や猫を、ペットショップが店内で展示・譲渡することは禁じていない。
ただし、店舗側がその展示・譲渡に関連する手数料を受け取らず、所定の条件を満たす場合に限られる。
ペットショップは、買い付けた「棚に並ぶ商品」としての犬猫販売から、「保護動物との出会いの場」へと役割を変えていこうとするものなのだ。
さらに注目されるのは、この法案はペットショップだけでなく、「ブローカー」も規制対象にしている点である。
法案はブローカーを「他者が繁殖した動物を利益目的で、対面またはオンラインで販売・リース・交換・競売、その他の形で所有権移転する者」と定義している。
また、犬や猫の譲渡に関しては、例外も設けられている。以下のようなルートなら、引き続き認められることになるそうだ。
- 政府機関への警察犬などの売却・譲渡
- 盲導犬・聴導犬・サービスドッグの販売・譲渡
- 動物保護施設やレスキュー団体による販売・譲渡
- 狩猟免許を持つ個人への狩猟犬の販売・譲渡
- 正規の認定ブリーダーによる犬や猫の販売・譲渡
- 医療関連の研究施設による販売・譲渡
ポリス知事は、血統や遺伝情報を把握している適切な繁殖を行っているブリーダーから、直接犬を迎えることは今後も可能だと説明している。
特定の犬種や純血種を望む人もいますし、州内には素晴らしい正規ブリーダーもたくさんいます
この法案は、「犬や猫の売買そのもの」の全面禁止というものではない。
劣悪な環境で繁殖をさせるパピーミル業者とペットショップ、ブローカーを結ぶ流通構造の制限に重点を置いたものと言えそうだ。
ペットショップなどからは反対や懸念の声も
歓迎する意見が多い一方で、反対や不安の声もある。
ペイトンでペットショップを運営するブリー・マエスタスさんは、既存ルールを守ってきた小規模事業者まで、一緒に締め出されることへの懸念を語っている。
私たちはずっとルールを守ってきました。この法案によって、法律を守って営業してきた業者が廃業に追い込まれ、代わりに闇取引や悪質業者が増えるのではないかと、とても心配しています
また、センテニアルで12年間ペットショップを経営してきたイェンス・ラーセンさんは、この法案の前提そのものに異議を唱えている。
うちの売上の90%は子犬の販売で、人々が来店する理由でもあります。この法案を推進した人たちの主張には、事実と違う非難がたくさんあります。
私たちは動物を大切にしていますし、愛しています。パピーミルを支持しているわけではありません
ラーセンさんは、この禁止措置がペットの販売を地下に潜らせ、消費者の保護を弱める可能性についても指摘している。
これからは闇取引が増え、Craigslist(日本のジモティーのようなサイト)に流れるようになるでしょう。
私の店は商売を続けられなくなって消え、12人の従業員は新しい仕事を探さなければならなくなるでしょう
その他、ペット販売業者団体や、純血種犬の愛好家団体、ケネルクラブなどが、この法律を「反ビジネス的な政策」だと批判しているそうだ。
ペットショップの規制が進むアメリカ・ヨーロッパの現状
アメリカでは近年、こうした「ペットショップでの犬猫販売」を制限する動きが各地で広がっている。
米国動物虐待防止協会(ASPCA)[https://www.aspca.org/]によると、全米で約300の市や郡が、小売店でのペット販売禁止法を導入しているという。
カリフォルニア州とメリーランド州は、それぞれ2017年と2018年に、州レベルでの法施行の先行例となったのだそうだ。
ニューヨーク州でも通称「パピーミル・パイプライン法」が成立し、2024年12月15日から小売店での犬・猫・ウサギの販売が禁止された。
この動きの背景にあるのが、いわゆる「パピーミル」問題だ。日本語では「子犬工場」とも訳される。
パピーミルとは、劣悪な環境で犬を大量繁殖させる悪質な業者のことで、親犬が狭いケージの中で長期間繁殖に使われたり、十分な獣医療や社会化の機会を与えられなかったりするケースが問題視されてきた。
またイギリスでは、これに近い考え方の規制として「ルーシー法」が知られている。イングランドでは2020年4月6日から、子犬や子猫の商業的な第三者販売が禁止された。
新しく子犬や子猫を迎える人は、繁殖者から直接迎えるか、保護施設から迎える形になる。
英国政府は、この法律について、低福祉・大量供給の子犬や子猫の流通に対処するためのものだと説明している。
EUでも、犬や猫の福祉と追跡可能性を高めるための新ルール作りが進んでいる。
2025年には、犬猫の福祉に関するEU初の包括的な法制について、欧州議会とEU理事会が暫定合意に達したと説明されている。
日本では禁止する法律はまだない
では日本はどうかというと、現時点ではこのような、ペットショップでの動物の販売を禁ずる制度は存在しない。
環境省[https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/stp56/]によると、日本では生後56日、8週を経過していない犬や猫について、販売や販売目的の展示が禁止されている。幼い時期に親やきょうだいと過ごし、社会性や健康を育むためだ。
また、2022年6月からは、ブリーダーやペットショップなどで販売される犬猫へのマイクロチップ装着も義務化された。購入者は飼い主情報への変更登録が必要となる。
今のところ日本は、「販売そのものを禁止する」のではなく、販売時の年齢制限や登録制度、飼養基準の強化によって管理する方向を取っている。
これに対し、アメリカやヨーロッパの動きは、ペットショップという販売経路自体を制限する点で、大きく踏み込んだものと言えそうだ。
ペット愛好家からは歓迎の声も
このニュースに、アメリカの動物好きの人たちの間では、さまざまな意見や議論が沸き起こっていた。
- 8年前、狆とボストンテリアをペットショップで買った。かなり高価だったけど、状態はひどく悪かった。狆は6歳で片目を失い、末期の心臓病になった。治療に大金がかかって、2つ目の仕事まで始めたよ。この子をとても愛しているけど、パピーミルの犬を選んでしまった自分が恥ずかしいし、儲けるためだけに犬を繁殖させた連中には怒りしかない。この法案が、自分みたいな選択をする人を減らしてくれるといいと思う
- 自分を責めないで。あなたの愛情や支えがなかったら、その狆はどんな犬生を送っていたと思う? あなたはその子を救ったんだよ
- 元カノがヨークシャーテリアを欲しがっていて、正直自分は反対だったんだけど、結局ペットショップで高額で買ったんだ。何度も手術して、今は食事療法を続けてる。小型犬だから食費が少なくて済むのは不幸中の幸いかな。だから君の気持ちはよくわかるよ
- 犬や猫を売るペットショップが、今でも存在していたこと自体知らなかった。保護施設にはたくさん犬や猫がいるのに、なんでわざわざ営利繁殖業界から買うのか想像できないよ
- 次は素人ブリーダーも取り締まってほしい。
車の後ろに「ピットブルの子犬売ります」って書いて走ってるような連中は家宅捜索されるべきだ- 法案に反対している人間は、動物虐待を支持しているのと同じだ。店頭に並ぶ前に死ぬ子も多い。この法案は劣悪な扱いを受けた動物が、ショッピングモールで当たり前のように売られる状況を終わらせるものだ
- パピーミル自体はなくならないかもしれない。でも、連中が利益を得る一番簡単な方法を断つことにはなる。何も知らない人が、一見普通のペットショップにふらっと入り、ぼったくられながらパピーミルを支援してしまう状況を防げるんだ
- 自分が最近迎えた2匹の犬は、どちらも純血種のダックスフントだけど、保護団体経由だった。純血種はブリーダーからしか手に入らないって言う人は、血統書にこだわってるだけだと思う
- いいことだ。ペットショップは「衝動買い」を前提に成り立っている。でも、生き物を飼う理由が衝動であるべきじゃない
- こんなの、違法パピーミルを増やすだけだ。最悪のアイデアだよ
- 2010年以降、パピーミルは大幅に減っている。各地での法律の施行がその一因になってるんだよ
- 人に「こっちはダメ」って言えば、みんな正しい選択をすると思ってるのか? 他の州へ行って買うだけだろ
- 店で犬や猫を売るべきじゃないのは完全に同意だ。衝動的に買って、後で捨てる人が多すぎる。ちゃんと世話できないなら、ペットを飼う資格はない
- でも、まともなブリーダーの順番待ちが長すぎるのも問題だよ。
1年以上待つ人もいる。それで結局、マーケットプレイスとかで適当に犬を買ってしまう。シェルターではピットブルかチワワばかり勧められて、それを断ると悪者扱いされるしさ- 問題は小型犬の少なさだ。自分はもう大型犬を扱えない。これまで大型の保護犬も猫もたくさん飼ってきた。でもシェルターには、小型でアレルギーが出にくい犬がほとんどいないんだ
- 犬を迎える方法が「小売」であってはいけない。保護施設か、信頼できるブリーダーを利用すべきだ。後者も規制されるべきだと思うけどね
- 自分はこの法律に賛成だ。ただし、譲渡手続きがもっと簡単になるならね。コロナ禍で犬を迎えたくてシェルターに行ったんだけど、在宅勤務がいつまで続くかわからないって理由で断られた。庭にフェンスがないとも言われた。結局、新聞広告で子犬を売っていた人から買った。その後すぐフェンスも作ったし、今も在宅勤務だ。シェルター側にも事情があるのはわかる。でも、本当に飼いたい人は結局どこかで手に入れるんだよ
ポリス知事は、今回制定される新しい法律は、「犬や猫を飼う自由」を奪うものではないと強調している。
犬や猫をどこから迎えるべきかという問題は、単純な感情論では片づかない。ペットショップで出会った犬や猫が大切な家族になった人も多いだろう。
一方で、その小さな命が店頭に並ぶまでの流通経路が見えにくいことも、長年指摘されてきた問題なのだ。
コロラド州の新法は、店頭のガラスケースの向こう側にいる子犬や子猫だけでなく、その背後にいる親犬や親猫、繁殖施設やブローカー、そして保護施設で新しい家族を待つ動物たちまで含めた、ペット流通全体を見直そうとするものだと言えるだろう。
References: New Colorado law will ban cat and dog sales in pet stores[https://coloradonewsline.com/briefs/colorado-ban-cat-dog-sales/] / Colorado bans pet store sales of dogs and cats, sparking debate over 'puppy mill' law[https://www.9news.com/article/news/local/local-politics/colorado-bans-pet-store-sales-of-dogs-and-cats/73-00568833-937c-4ab8-b850-c409392ad8ad]











