ニノミヤユイ、待望の新作となるコンセプトミニアルバム『本壊』は、物語の“脇役(モブ)”やヒロイン“じゃない”ほうに焦点を当てて制作された、“陰”をテーマに活動してきた彼女らしい異色作。自身で作詞・作曲を手がけた楽曲のみならず、本多友紀(Arte Refact)、渡辺拓也、ボカロPの青谷ら多彩なクリエイターが参加した一筋縄ではいかない全5曲が収録されている。
声優・二ノ宮ゆいとしての活動も広がりを見せるなか、久々の新作で彼女が表現したかったもの、今伝えたい想いとは何なのか。その愛と感情に迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

「“じゃない”方」の気持ちを代弁した、コンセプチュアルなミニアルバム
――前作のシングル「Dark seeks light / 散文的LIFE」が好評を得たなか、今回はそれから約2年弱ぶりの新作リリースになりましたが、その間、どんな気持ちで過ごしていましたか?

ニノミヤユイ 「Dark seeks light / 散文的LIFE」はMVもたくさん観ていただけて、色んなところで取り上げてもらえたので、それに繋げる形で何かをリリースしたい気持ちもあったのですが、その間、色んなところで歌う機会があったので、改めて自分の活動や楽曲のこと、ニノミヤユイをどう見せるべきか、ファンの方がどんなものを求めているのかをしっかりと考えることができて、次は何をしたいかを考える時間になりました。

――ご自身のアーティスト活動を客観的に受け止めることができたわけですね。また、声優の活動でも「アイドルマスター シンデレラガールズ」の八神マキノ役など活躍の場が増えて、刺激を受けることが多かったのではないでしょうか。

ニノミヤ それこそ「シンデレラガールズ」ではライブに参加させていただくごとに、先輩方の役に対する理解度の深さに驚くと同時にすごく刺激を受けました。
「シンデレラガールズ」は、そのアイドルの声を担当する声優さんが一番の理解者になって、自分から演出を提案したり、「このアイドルならこうする」ということをすごく考えているんです。もちろん演出家さんも大切なのですが、1人1人がどうしたらこのライブが良くなるかを考えてステージに立ち続けている先輩がたくさんいるので、そういう姿を見ていると私も身が引き締まります。それと「swing,sing」というコンテンツでは、主人公的な立場の八乙女 菫役を演じているので、主人公として作品を背負う責任の重さを感じたりもして。色々考えることのできた2年でした。

――そういった経験からのフィードバックも感じさせるのが、今回のミニアルバム『本壊』。楽曲ごとに様々な「脇役(モブ)」に焦点を当てたコンセプチュアルな作品になっています。


ニノミヤ スタッフさんが私のこれまでの発言や歌詞を汲みとって、主人公やヒロインではない側、「“じゃない”方」というコンセプトを全曲に一貫して持たせた作品というアイデアを提案してくださって。それは私が今まで発信してきたことや歌詞に取り入れてきたテーマとも合いますし、作品に一貫したコンセプトを設けることで、その中でどれだけ幅を広げられるかの挑戦にもなるので、面白そうと思って、私は楽曲ごとのコンセプトを細かく決めていくところからしっかりと取り組ませていただきました。

――では1曲ずつ、収録順に詳しくお話を聞かせてください。1曲目の「Another」は“負けヒロイン”をコンセプトに、ニノミヤさん自身が作詞も手がけています。

ニノミヤ 私は少女マンガによく出てくる、ヒロインと同じ男の子が好きだけど絶対にかなわない系の女の子が好きなので、そういう“負けヒロイン”を書きたいなと思って作った楽曲です。曲調的にはK-POPに近いラップも入っているようなものをイメージしていたので、コンペでそういう楽曲を集めたのですが、この曲の明るすぎず暗すぎない、若干影が入っている感じが良くて速攻でこれに決めました。
ただ歌詞は、書きたいことはたくさん浮かぶんですけど、こういうK-POPっぽいものをあまりやったことがなかったので、言葉を上手くハメるのが難しくて。ストーリーもありつつ、音の響きを重視して、聴いていてひっかかりのない感じになるように気を付けました。

――歌詞に英語が多いのもそういうことを意識してですか?

ニノミヤ はい。こういう曲調なので、全部日本語で書くのではなく、英語も入れたいなと思って。私は楽曲を聴くとき、歌詞を聴くタイプなのですが、人によっては歌詞ではなく楽曲のノリで聴く人もいるじゃないですか。この曲はそういう、何も考えずに聴いても心地良い曲にしたかったんです。


――歌詞をよく聴くと、この曲の主人公は“負けヒロイン”と謳いつつ、ただ負けっぱなしではない感じがあって。

ニノミヤ 抗おうとしていますよね。「何で私じゃないの?」っていう強気なところもある“負けヒロイン”を描きたくて。私は最近、K-POPアイドルの楽曲も聴くようになって、この曲を作っていたときに、曲の内容は全然違うのですが、BLACKPINKの「Lovesick Girls」という楽曲のイメージが何となくあったんです。その曲では、恋愛に振り回されるけど強気な女の子が描かれているのですが、そういう強さ・かっこよさもあるところが、きっと女子たちの心も掴むんだろうなと思って。ただ、流されるままではない、女子が憧れる女子というイメージで取り入れていきました。
気高くあってほしいし、“負けヒロイン”なりの矜持があるといいなと思って。

――それは例えば、ニノミヤさん自身もそういう強気な気持ちを持っていたいことの表れだったりしますか?

ニノミヤ 確かにそうかも。さっきお話したように、リリースのなかった間に色んな声優のお仕事をやらせていただくなかで、責任をもってお仕事ができる先輩、かっこいい女性の方たちと間近で共演させていたいていると、「私もこうなりたいな」という気持ちが強くなったんです。それと少し話がズレるかもですが、コロナが落ち着いてきた今、デビュー当時のコロナで何もできなかった期間はかなり痛かったなと強く感じていて。私と同じ世代や私と同時期にデビューした人は、今も苦しい状況にあると思うので、だからこそ、自分自身が芯をもって、自分が何をやりたいか意志を示すことが大切だと、声優としてもアーティストとしてもずっと考えていたので、そういう強気さがもしかしたらこの曲に出たのかもしれないです。

――それとこの楽曲、冒頭のささやき声などボーカルアプローチも多彩で素晴らしいですね。


ニノミヤ ありがとうございます!強気なところもありつつ、かわいらしい部分も表現できたらと思って歌いました。今回、この曲に限らず全曲を通してボーカルの歌い方を変えるようにしていて。今までは自分のソロ曲だし、自分そのものという感じの楽曲ばかりだったので、基本、歌い方を意識して変えることはなかったのですが、今回は楽曲ごとに主人公が違うイメージで作っていたので、それに合わせて歌の表現も変えたい気持ちがありまして。特に1曲目から4曲目にかけてはキャラソンに近い歌い方、頭の中にキャラクターがいて、その子に寄り添うような歌い方を、ニノミヤユイの範囲から出ないバランスに調整しながら歌っています。

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反骨精神に満ちたロック、“病みカワ”をイメージしたふわふわソング
――2曲目「運命論」のコンセプトは“日の目を見ないヒーロー”。どんな思いを込めて制作しましたか?

ニノミヤ 「“じゃない”方」というコンセプトで何があるかを考えたときに、パッと浮かんだのがヒーローものだったんです。戦隊ものの赤色みたいに圧倒的主役がいるということは、それになれなかったヒーローもいっぱいいるということで、圧倒的主役がいる物語にも「“じゃない”方」の物語がたくさんあると思うんです。なのでヒーローだけど赤色になれなかった人、主人公属性を羨むような気持ちを、ロックな楽曲で真っ直ぐに表現しました。

――作曲は本多友紀(Arte Refact)さんですね。

ニノミヤ この曲も実はコンペで選んだのですが、作った方がどなたかわからない状態で「絶対にこれがいい!」と思って選んだら、本多さんでびっくりしました。思わぬところでご一緒できて嬉しかったです。この曲はすでにリリースイベントでも歌っているのですが、ライブバージョンの反響がすごくいいんです。自分でも歌ってみて、ライブ映えすることを感じましたし、作っていく中でも、最初の状態と完成版を比べたときに、ギターとベースのギュインギュイン具合いが倍増していて(笑)。疾走感のある強めのロックをやりたかったので、結果的にライブ映えする曲になって良かったです。

――この曲も歌詞はニノミヤさんがご自身で書かれています。

ニノミヤ ゴリゴリのロックだったので、逆に歌詞を乗せやすかったですし、日本語で貫き通したかったので、硬めの漢字をたくさん使うようにしました。この曲も語感が良くて、単語が立つようなメロディがたくさんあったので、そこに言葉をハメていくのが楽しかったです。

――歌詞の内容に目を向けると、この楽曲も“日の目を見ないヒーロー”と言いつつ、まだ諦めていないところがありますよね。

ニノミヤ 今回、「Another」と「運命論」の2曲は反骨精神が剥き出しなんですよね。ヒーローになりたい人というのは、基本、意志が強い人が多いと思うのですが、だからこそ、主人公属性の人に対して羨む気持ちや悔しさを感じると思ったので、この曲も強気でいきたいイメージがあって。私が書いたこのヒーローは真っ直ぐではないかもしれないけど、強い想いがあるからこそ頑張ろうと思うのが、私の中のヒーロー像でもあるし、「頑張っている姿がかっこいい」というのが裏テーマとしてあったので、がむしゃらなイメージで書きました。

――「運命論」というタイトルですが、この曲の主人公は最終的に自分の“運命”を塗り替えようとしているのがいいですよね。

ニノミヤ そう。やっぱり自分の手で変えていくことが大切だと思うんですね。私はロックが好きなのですが、ロックは自分自身で切り開いていく、既存のものを壊していくメッセージ性がかっこいいところだと思っていて。ここまでかっこいい曲をいただいたからには、締めはかっこよく終わりたい、ロックで終わりたいと思って……これが私のロックです(笑)。

――歌うときもロックスピリッツを意識して?

ニノミヤ そうですね。ちょっとやさぐれた感じにして、きれいに歌いすぎないことを気を付けました。

――そんなロックな楽曲から一転、“友達の友達”をコンセプトにした3曲目「主役のあの娘は友達」は、かわいらしい雰囲気の楽曲ですね。

ニノミヤ キラキラした曲調は自分のイメージに遠いということで、ニノミヤユイでは避けてきたのですが、今回はコンセプトが一貫してあるからこそ、そういう曲調でもニノミヤユイの世界観をちゃんと構築できるのではないか、という実験的な意味合いが強い楽曲で。なので、この曲は自分でも異色という認識を持ちながら作りました(笑)。

――作詞・作曲・編曲は、ボカロ・UTAU系クリエイターの青谷さんが担当されています。

ニノミヤ 青谷さんに直接お声がけさせていただいて、最近よく言われる“病みカワ”的なイメージをテーマに作っていただきました。青谷さんとは最初にビデオ通話で自分のイメージをたくさんお伝えしたのですが、そのときは「なるほど」と考える感じだったので、「あ、色々言いすぎてしまったかも……」と思ったんですけど(苦笑)、後日、送っていただいたラフがイメージ通りだったのですごいと思って。普段はボカロPとして活動されている方なので、語感も独特で、サビも同じ言葉が繰り返されていて、そのキャッチーさも相まってかわいいなと思いました。

――青谷さんの音楽には以前から触れていたのですか?

ニノミヤ 元々ボカロ好きなので何曲かは聴いたことがあったのですが、今回、お願いするにあたって全曲を一気に聴かせていただいて。キャッチーだけど不思議なメロディを書かれる、不可思議な雰囲気を出すのが上手な方という印象がありました。その雰囲気が、この曲でやりたかった、ちょっと浮世離れしている女の子のイメージに合うと思ったので、ご一緒できて良かったです。

――確かにどこか浮世離れした感じで、歌のアプローチもふわふわ可憐な印象です。

ニノミヤ 私は普段、強く真っ直ぐ歌うことが好きなので、声を張って歌うことがほとんどなのですが、この曲はほぼ真逆のことをしていて。か細くふわっと浮いているイメージで歌ったので、今までやったことのない感じすぎて、「これで大丈夫なのかな?」という気持ちもありました(笑)。それとこの曲、音が高いところがあったり、息継ぎも難しくて、単純に歌うのが大変なんです。でも新鮮で楽しかったです。

――これは個人的な解釈ですが、自分の中で自問自答しているような雰囲気も感じました。

ニノミヤ まさに。仮歌詞をいただいたときに、ほぼ直すことはなかったのですが、私から「歌詞の毒の部分が外側に向かないでほしい」とお願いしたんです。毒が外側に向くと攻撃性が強くなりすぎると思ったので、自分に向ける感じ、内省的な感じにしてほしくて。まさに自分の中の世界という感じです。

――そういった内省的な女の子のイメージは、どのような発想から生まれたのでしょうか。

ニノミヤ これは私自身もそうなりがちなのでわかるんですけど、最近、同世代の子や年下の子とお話していると、すごく気遣いができて優しいけど、自分の優しくない部分が自分の内側に向いている子がすごく多いなと思うんです。自分に厳しい子とか、必要以上に色々考えてしまう子、外側はふわふわして優しい感じがありつつ、内側ではすごく葛藤している子が多いし、TikTokとかを見ていても、最近は自分攻撃型の音楽が増えていて。そういう悩みを抱えている子に向けて、「わかるよ」と言うのはおこがましいかもしれないですけど、曲調を含めて表現してみたい気持ちがありました。

――確かに、今の若い子は繊細で、人当たりはいいけど自分の中に何かを抱えてしまっている人が増えた気はします。

ニノミヤ それこそSNSで「これはしちゃいけない」とか「これをやると叩かれる」とかを考えている子も多いと思いますし、社会全体として規則を守る意識がすごく高くなっているイメージがあって。私は今21歳なのですが、私よりだいぶ上の世代の人とお話していると、昔は全然違ったことを実感することが多いんですね。「昔はみんな普通に制服でお酒を買ってた」とか「そういうのが許された時代だからね」みたいな話を聞いたりして(笑)。今は違反している人がネットを通じてすぐに目に見えてしまう時代なので、警戒心が強くなって、正しくあらねばならないという意識が高くなっていますけど、人間はそこまで変わらないと思うし、私はみんな悪意と善意はほぼ同じ割合で持っていると思うんです。どんな人でもプラスの部分だけでなくマイナスの部分が絶対にあると思うんですね。そのマイナスの部分を封じ込めて外側に出さないようにした結果、内側に向く子が多いのかな、というのが今のイメージです。

――その意味で言うと、ニノミヤさんはアーティスト活動で自分の気持ちを吐き出す場があるので、それはご自身にとってかなり大切なものになっていそうです。

ニノミヤ それはすごく感じます。私、自分のソロライブではお客さんにあまり気を遣わないところがあって(笑)。声優として役を背負ってステージに立つときは、役を守らなくてはならないので色んなことに気を付けますし、丁寧にしたい想いがあるのですが、ニノミヤユイでライブをやっているときは、多少自分本位でもいいと思っているところがあって。そこはつり合いが取れる時間だと思います。

――自分の中に溜めこんだままだと、いつそれが爆発するかわからないですからね。

ニノミヤ そうなんですよね。

ニノミヤユイが“愛”を叫ぶ理由、誰かにとっての“ヒロイン”であるために
――4曲目の「picture frame」はゴシックな世界観が印象的な1曲。コンセプトは“ホラーストーリー”とのことですが、どんなイメージで制作しましたか?

ニノミヤ これは曲調から入って、単純に「ゴシックっぽい曲を歌ってみたい」というところから始まりました。そこからどんなお話を作れるかを考えたときに、私はミステリー小説が好きなのですが、そういう作品では途中で殺されてしまう人がいて。その人は果たして物語に本当に必要だったのか、もちろん絶対必要なんですけど、殺された時点で必要ではないという判断になるのか。そういう発想からストーリーを考えて楽曲を作っていただきました。

――サウンド的にも歌詞の内容的にもミステリアスで、妖しさが漂う楽曲になっていますね。

ニノミヤ すごく重厚感のあるサウンドですが、私自身こういう曲も好きなので、聴いていて心地良さを感じる部分もあって。殺されてしまう側のバッドエンド的なお話ではあるのですが、儚い雰囲気も出したかったので、ボーカルはかわいめに作って、おとぎ話感もある雰囲気になればと思いながら歌いました。舞台の上でスポットライトを浴びながら歌っているイメージで、外の世界やお客さんとは切り離した感じがあるので、ライブで歌うとしたらセトリのどこに組み込めばいいのか、かなり悩みそうです(笑)。今回のミニアルバムはどの曲も粒だっているので、ライブのどこに入れるかが悩みどころなんですよね。

――でも、世界観がしっかりとあるだけに、ライブで演出のし甲斐もありますよね。

ニノミヤ そうですね。1人で歌う機会のときは色々できそうなので、自分の遊べる幅が広がった感じがします。

――そして本作の締め括りとなる5曲目「ヒロイン」はニノミヤさん自身が作詞・作曲した、“エピローグ”をテーマにした1曲。作曲に関しては以前に「不揃い」で原ゆうまさんとの共作という形で挑戦していましたが、今回はお一人で作曲されています。

ニノミヤ 一応メロディは自分で考えたのですが、ギターとかの演奏はまだできないので、Aメロはこんな感じで、Bメロはこんな感じ、サビは……みたいに口ずさんで作ったものを少しずつ送って、それに対して「ここはこうしたほうがいいのでは?」みたいなアドバイスをいただいて、微調整しながら楽曲の形に整えていただきました。編曲の渡辺(拓也)さんにはめちゃめちゃお世話になりました。最終的にこんなにかっこいい楽曲にしていただいて、ありがたいとしか言いようがないです。最初にラフが上がってきたとき、「えっ!?お洒落すぎる!」と思って(笑)。

――今回のミニアルバムにおける“エピローグ”の位置づけとして制作したのですか?

ニノミヤ はい。今回は基本的に自分が主人公ではない楽曲を作るコンセプトの作品だったので、その中で最後は自分が主人公の曲を作って、それをリード曲にしたい気持ちがあって。当初は、この曲を1曲目に置いて最初にテーマを打ち出すのもありだと思ったのですが、ここまでの4曲で色んなお話を経たうえで、最後に総括として「“じゃない”方」というコンセプトを私自身として歌うことによって、ここからまたニノミヤユイとして進んでいくことを見せられると思って、この曲をエピローグとして持ってきました。

――この楽曲が最後に置かれることで、ここまでの4曲で描かれる「脇役(モブ)」もまた、主役にもなりうることが表現されているように感じました。

ニノミヤ そうですね。今回、私がこうやって「“じゃない”方」をメインに取り上げて楽曲を作った時点で、その「“じゃない”方」は「“じゃなくない”方」になっていますし。自分が「“じゃない”方」だと思っていても、必ずその人が主役になれる舞台があるということを最終的に言いたかったので、だからこそこの楽曲のタイトルは「ヒロイン」にしました。私自身も、まだ自分がヒロインとは思い切れないけど、私なりにやっていることが、誰かの目に留まることで、私のことを主人公のように思ってくれるような物語が生まれたらいいな、という願いも込めていて。今回、久々のリリースでもあったので、リード曲はニノミヤユイのど真ん中をいきたかったですし、「ヒロイン」はそれができた、自分でも自信がある曲になりました。

――それこそ今までニノミヤさんが楽曲を通して表現してきたことが詰まっていて。“与えられた役柄はどうも苦しくて”という言葉はデビュー時から発信してきたことと重なりますし、外から見られる自分と本来の自分との葛藤、あるいは自分が表舞台に立って表現することの意味を探す姿が感じられました。

ニノミヤ うんうん。この曲のMVでは、自分ひとりで続いていく舞台の中でもがいている様子が描かれていて……私の中のこの曲のイメージはMVが汲み取ってくれているので、ぜひMVを観てください(笑)。今まで私が言ってきたこと・言いたかったことを、改めて自分の中で整理して入れることができましたし、昔と今で悩んでいることは全然違う部分もあり、同じ部分もあるので、過去の自分からもらったものを今の自分が嚙み砕いてこの曲に入れることで、次作に繋がると思っていて。歌詞には後ろ向きな部分も結構ありますけど、自分的には前に繋げる強い気持ちで書きました。最後は希望を見出していこうっていう。

――歌詞の最後は“続いてく舞台の上で 私なりの愛を込めて。”という言葉で締め括られています。

ニノミヤ デビュー曲が「愛とか感情」で始まって、その後も色んなところで“愛”という言葉を書いて、色んな“愛”の形があることを表現してきたなかで、私も応援してくださっている皆さんにはすごく愛情をもって接していますし、その愛情は真っ直ぐな感じじゃないかもしれないけど、これからも私は一生懸命やることも含めて“愛”を表現したいと思っていて。きっと今まで応援してくださっている人が聴くと「明るくなったなあ」と感じると思います(笑)。

――“愛”を込めるだけでなく、求める気持ちが強いことも、“お願い、ひとりは嫌”というフレーズから伝わってくるように感じました。

ニノミヤ そうですね。ちゃんと言葉にすることによって昇華できるものがたくさんあるので、だからこそ正直に書きましたし、それこそコロナで人に会えない期間が長すぎたので、また人とちゃんと触れ合えるようになった今だからこそ、また強く感じたことでもあって。そこは真っ直ぐ書こうと思いましたね。

――「不揃い」の歌詞でも“こんな私を、愛して。”と書かれていたので、そこは一貫してある強い想いなんだろうなと。

ニノミヤ 私はまだまだ未熟なので、皆さんがちゃんと見ていてくれないと困るんです(笑)。だから「私のことをちゃんと見ていてください」という想いで書きました。

――それは大丈夫だと思います。ファンの皆さんにとってはニノミヤさんがヒロインですから。締め括りに、今回のミニアルバムのタイトル『本壊』にはどんな意味を込めたのかを教えてもらっていいですか?

ニノミヤ 本来の“本懐”の意味、私が「本当に成し遂げたいこと」を、この「ヒロイン」に詰め込んだので、その意味もありますし、コンセプトミニアルバムとして私が今やりたいことを形にした意味を含めてのタイトルでもあって。それと“懐”の文字を“壊す”のほうにしたのは、常にブレイクスルー的なことをやっていきたことの表れでもあります。やっぱり自分の心持ち的にはロック志向が強いんですよね。自分のやりたいことと、アーティストの世界観を守ること、そのどっちも大切ですし、ど真ん中を行きたいけど壊していきたいっていう(笑)。色んな意味を込めてこのタイトルにしました。

――そして秋には本作を引っ提げてのワンマンライブ“LIVE TOUR~本壊~”の開催も決定しています。

ニノミヤ デビューツアーがコロナの影響で開催できなかったので、ツアーはこれが初めてですし、ワンマンで声出し解禁もこれが初になるので、結構ドキドキしています(笑)。ワンマンでは自分本位になる部分もありつつ、皆さんに楽しんでほしい気持ちももちろんあるので、そういう演出も考えたいですし、今までの全部を凝縮したい気持ちがあって。やっとお客さんと近い距離で、声も聞けるなかでのライブができるので、ライブは楽しいものだということを再認識できるライブにしたいです。頑張ります!

●リリース情報
ニノミヤユイ コンセプトミニアルバム
『本壊(ほんかい)』
8月2日発売

■mora
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価格:¥3,080(税込)
品番:LACA-25062

<CD>
1.Another
作詞:ニノミヤユイ 作曲:河原レオ 編曲:倉内達矢
2.運命論
作詞:ニノミヤユイ 作曲:本多友紀(Arte Refact) 編曲:脇 眞富(Arte Refact)
3.主役のあの娘は友達
作詞・作曲・編曲:青谷
4.picture frame
作詞・作曲:イワサキメイ 編曲:家原正樹
5.ヒロイン
作詞・作曲:ニノミヤユイ 編曲:渡辺拓也

●ライブ情報
ニノミヤユイ LIVE TOUR ~本壊~

【愛知公演】
2023年10月21日(土) 16:30 開場/ 17:00 開演
アフターパーティー:19:00開演/20:00終演予定
場所:HeartLand

【神奈川公演】
2023年11月11日(土) 16:15 開場/ 17:00 開演
アフターパーティー:19:00開演/20:00終演予定
場所:SUPERNOVA Kawasaki

主催:ホリプロインターナショナル/バンダイナムコミュージックライブ

チケット情報
アフターパーティー付きチケット ¥11,000(税込)
通常チケット ¥7,480(税込)

関連リンク
ニノミヤユイSTAFF Twitter
https://twitter.com/YuiNinomiyas

二ノ宮ゆいオフィシャルTwitter
https://twitter.com/YuiNinomiya0906