岡田斗司夫が新しい本を出版した。『僕たちは就職しなくてもいいのかもしれない』(PHP出版)。
ええっ!? 完全に元に戻ってるじゃないか!
岡田といえば、かつては「オタキング」という愛称で、オタク評論家として知られていたが、今から7年前にダイエットに成功。身長171センチにして120キロという巨体を65キロまで落とし、その成果を『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)という本にして出版。同書は55万部を突破。関連本を含めると、岡田のダイエット本は100万部以上も売り上げた。
確かに当時の岡田は以前とは別人だった。ほっそりとして、しかも毒気が落ちたように優しく微笑む。人格や性格まで変わったのではないかと驚愕したものだ。
当時、『いつまでもデブと思うなよ』で岡田が提唱していたのは、食べた物を記録するレコーディングダイエットというものだ。
「体育会系ダイエットのように『とりあえず根性を出せ!』みたいな精神論とは無縁で(略)その割りには、1年で50キロ落とせたという実績からおわかりの通り、即効性にも優れている。原理的にリバウンドも最小限に抑えられる。まさに、理想のダイエット法である」(同書より)
さらに日本は「見た目主義社会」であり、そのためにデブはデブのぶんだけあらゆるところ(もちろん仕事においても)ソンをすると主張、「やせることは、自分に対してできる最大限の経済効果をもたらす」とまで言い切った。
そんな自信にあふれて、なんだか"いい人"になった岡田。それなのに――。『僕たちは就職しなくてもいいのかもしれない』の表裏表紙ともに写真を載せている岡田は、以前よりは多少痩せた程度で、すっかり元の岡田に見える。しかもリバウンドは最近始まったものではないらしい。昨年くらいから、ネットでも「リバウンドした!?」と話題になるほど、その容姿はデブへと舞い戻って行ったのだ。
岡田のブログ「岡田斗司夫の近未来日記」では昨年からこんな記述が掲載されていた。
「ダイエットの効果は3年は続きました。三年後から徐々にまた太りはじめ、今年の夏、僕の体重はなんと【90キロ】まで、つまり25キロも太り戻しました...(略)
あせった僕は、夏前からダイエットを始めました。しかし厳しい食事制限をしてるつもりでも、ぜんぜん痩せません。(略)
なんで僕は痩せないんだよ~!!本当に泣きたくなってしまいました。」(13年11月18日)
そして、こんな驚くべき記述。
「食べたものをすべて書き出す=レコーディング(記録)するから『レコーディング・ダイエット』。僕が七年前に書いた本には「食べたら、その時間と分量をメモしなさい」と書いてあります。
「食べるのを減らす必要はない。むしろ"減らしたい"という誘惑に勝ちなさい。"早くダイエットしたい"という誘惑に負けてはダメです」
えええ?? いや、たしかにこの文章、書いたよ。自分で書いたの、おぼえているよ。でも、これって無理です。ぜんぜん論理的・科学的じゃない。 書きさえしたら食べてもいいの? 書きさえしたらいくら食べてもいいなら、痩せるはずない。
自分で書いた文章が、数十万人が読んで成功した方法論が、まるっきり信じられません。」(13年12月2日)
そう、岡田は55万部も売り上げたダイエット本を全否定してしまっているのだ。だが、岡田はそれでも決意した。自著をもう一度読み返してダイエットしょうと。
以降、ブログにダイエットの記述はないが、新著の写真を見る限り、状況はあまり変わっていないようだ。あれから10カ月以上経った現在、その姿は"オタキング"時代の岡田斗司夫に近いところまで戻っている。
やはり、レコーディングダイエットはただのインチキだったのか。だが、本人がこんな状況に陥っているにもかかわらず、岡田の後援会組織「FREEex」では、最近もレコーディングダイエットの勉強会が開かれているようだ。これはいったいどういうことなのだろう。
ちなみに、この「FREEex」は2010年、岡田自身が「年に12万円支払って岡田を助ける」という驚くべきコンセプトで立ち上げた組織で、現在でも150人ほどの岡田ファンが会員になっているという。新著の『僕たちは就職しなくてもいいのかもしれない』もこのFREEexの考え方がベースになっているのだが、これについては、ぜひ別の機会に論じてみたい。
(林グンマ)