東京都を中心に新型コロナの新規感染者数が増加するなか、政府が計画を大幅に前倒しして今月22日からスタートさせると発表した「Go Toキャンペーン」。この正気の沙汰とは思えない安倍政権の決定に対し、Twitter上ではハッシュタグによる抗議運動が巻き起こっている。
そのハッシュタグは、「#GoToキャンペーンを中止してください」というもの。本日14日18時現在でハッシュタグをつけたツイート数は27万940件にものぼり、トレンド入りしている。
〈もう旅行の予約を入れた人もいるから今さら中止出来ない…だと? でっかい会場おさえてグッズも各種用意したアイドルグループの運営が予約を入れたファンに頭下げてライブ中止の理解を求め、ファンも感染拡大阻止のため快く応じる光景を何度も見て来たぞ。〉
〈子どもは無言昼食、プールも入れず、修学旅行も行けない。高額な学費払いながら大学の図書館にすら立ち入れない大学生。それなのに…補助するから旅行に行けと。今それは違う!と指摘できるマトモな人は行政にはいないの?〉
〈って言うか「率先して市民を危機に晒す政府」とか、マジであり得なくね?市民に対するテロ行為だろ〉
〈こんな大雨で被害が出ている時に、コロナの感染者が増えている時に、決行するなんてどうかしてます。〉
〈東京の友人は北海道の実家に帰ろうとしたら両親から今来たら村八分になるから絶対やめてくれって、兵庫の実家に帰ろうとした友人は絶対に多摩ナンバーの車で帰って来ないように言われたって、安倍総理!国民の声が聞こえてますか?〉
〈税金をまっとうに使ってください。今、支える必要のあるところを優先してください。〉
さらに、ミュージシャンの大友良英氏も〈今はまずは医療関係への支援やコロナ対策に税金を使って欲しいと強く思います〉と投稿。演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ氏も〈どう考えても今ではない。どこがピンハネるのか知らないけど、1.7兆円もの予算、医療機関や被災地にお金を回すべき〉、マンガ家の吉田戦車氏は〈自分や妻の実家からは「お盆? 今年は帰ってこなくていい」と言われ、帰省断念。
しかも、「Go Toキャンペーン」に対する批判は地方自治体の首長からも噴出。山形県の吉村美栄子知事は本日、会見で「この時期に全国一律はいかがなものか。地方としては手放しでは喜べない」と批判。さらに、青森県むつ市の宮下宗一郎市長も「感染が拡大している局面でやること自体、愚かだ」「キャンペーンによって感染拡大に歯止めがかからなくなれば、これこそ政府による人災だ」と言い、〈23日からの4連休を軸に、市内の観光施設を臨時休業するよう関係部局に指示した〉という(河北新報14日付)。むつ市の場合、感染症病床は4床しかなく、感染が広がった場合は医療崩壊する可能性があるためだ。
本サイトでは繰り返し指摘してきたように、いま本当に必要なのは、感染拡大を抑え込むこと。そして大打撃を受けている観光業や外食産業、イベント業界などに対しては、キャンペーンで需要喚起することではなく、しっかりと追加補償をおこなうことだ。さらに、「#GoToキャンペーンを中止してください」というハッシュタグと一緒に「#GoToキャンペーン予算を医療従事者へ」というハッシュタグも拡散されているように、多くの人びとがいま求めているのは、医療を支える人たちへの追加支援策だ。
そもそも「Go Toキャンペーン」は、感染拡大の一途を辿っていた4月初旬に政府が第一次補正予算案で〈感染症流⾏が収束した後、国内における⼈の流れと街のにぎわいを創り出し、地域を再活性化するため〉として1兆6794億円も計上したものだ。当時から「収束後のことではなく感染拡大防止策のほうが先」という批判の声はあがっていたが、東京都で過去最高の新規感染者数を記録するなど、いまは再び感染が拡大していることは誰の目にもあきらか。〈感染症流⾏が収束した後〉とは到底言えない状況だ。
にもかかわらず、国民からあがる「いまやることか」「おかしい」という声に耳を傾けることもなく、菅義偉官房長官は昨日13日の会見で「Go Toキャンペーン」の延期について、「まったく考えていない」と事も無げに言い放ったのである。
どれだけ非難を浴びようと、さらには感染拡大の局面にあっても、どうして安倍政権はここまで「Go Toキャンペーン」に固執するのか──。その理由は、既報でもお伝えしたように、「Go Toキャンペーン」が「影の総理」と呼ばれる安倍首相の最側近・今井尚哉首相補佐官と、その子飼いである新原浩朗・経産省経済産業政策局長の肝いりだからだ。
新原氏といえば昨年11月、タレントの菊池桃子と入籍した経産省のエリート官僚で、「将来の事務次官」と囁かれる人物。そして、今井首相補佐官と一緒になり、これまでも消費税率10%への引き上げに合わせた実施されたポイント還元制度や、安倍首相がゴリ押しして法案を強行採決させた働き方改革など、数々のとんでもない政策を推進。現在も、安倍首相が推し進めようとしている「全世代型社会保障制度改革」において検討会議の事実上の事務方トップに就任するなど、安倍首相からの信任が厚いことでも知られている。
そして、この今井−新原ラインが結託し「新型コロナ対策」として取り仕切ったのが、この「Go Toキャンペーン」だった。
実際、6日付の朝日新聞では、いかにこの2人の暗躍によって1兆7000億円もの予算が経産省に一括計上されたのか、その裏側が報じられている。
まず、補正予算案が発表される前の3月ごろから、官邸や財務省周辺では国交省や農水省を揶揄する文書が出回った、という。これは経産省が流したと見られ、実際にその後、「Go Toキャンペーン」事業のとりまとめを経産省がおこなうことが決定したのだという。しかも、問題はその予算化の過程だ。ここで暗躍したのが、今井−新原ラインだった。
〈政府の事業は通常、所管省庁の中で練られ、予算を査定する財務省主計局との協議を経て予算化される。その過程で不備や課題が洗い出され、費用対効果も点検される。だが今回は、他省庁と同様、主計局もごく一部の幹部を除きほとんど蚊帳の外だった。〉
〈今井―新原ラインによるスピード重視の意思決定で、巨額補正の中身が次々と決まっていった。主計局内からはこんな不満が漏れる。「ほとんど詳細を知らされないまま、予算が決まっていった」〉
〈ある官邸幹部は「今井氏の意を受けて新原氏が動いた。各省庁に相談なく決めたから、各省庁からしたら『なんで』となるだろう」と述べる。〉
さらに、同紙にはこんな記述もあった。
〈財務省側で新原氏に応じたのは、予算編成を担う主計局のトップ、太田充主計局長だった。〉
太田充氏といえば、森友問題で必死になって安倍政権を守ったことで知られ、その論功行賞として財務省事務次官への就任が先日、報道されたばかりだ。
いずれにしても、今井首相補佐官と新原氏、太田氏という安倍政権の側近官僚の動きによって、1兆7000億円もの巨額予算が協議や費用対効果の点検もなく計上されたのである。言っておくが、今井−新原ラインが「Go Toキャンペーン」の実施に暗躍していたこの時期は、新型コロナ対策が後手後手だと批判されていた3~4月のことだ。
官邸官僚たちが国民の安全そっちのけで新型コロナ対策までをも食い物にし、感染拡大防止策に逆行して、医療崩壊をもたらしかねない経済対策を実行させる──。そして、これを止めさせるばかりか、黙ってやらせているのが安倍首相なのだ。
税金を使った、このような蛮行を看過することはできない。現在、オンライン署名サイトの「change.org」では「Go To キャンペーンに反対します」という署名がおこなわれ、「Go Toキャンペーン」の予算を医療現場や九州豪雨などの被災地支援、「持続化給付金」対象外となっている個人の中小事業者への補償に回すことを求めている。ハッシュタグ運動と署名で、このありえないキャンペーンを中止させなければならないだろう。