
■自ら立ち上げた劇団でほろ苦デビュー
俳優であり映画監督、脚本家、バラエティ番組MCとして多彩に活躍する佐藤。だが、今に至る道のりは決して順風満帆ではなかったという。上京してからの10年あまりを"暗黒の20代"と表現する佐藤。その転機は常に、人との出会いの中にあった。
大学卒業後、就職活動をして一般企業に就職。その会社を入社式当日に辞めた。「いよいよ俺は俳優を諦めるのか、というわかりきったことをね、ふと思っちゃった。で、気づいたら入社式の会場から外に出ていた」。そして、役者の世界に飛び込んだ。
オーディションに落ち続け劇団員にすらなれない日々を何年も過ごし、27歳で自ら劇団「ちからわざ」を立ち上げた。初舞台にもかかわらず脚本・演出・出演をこなし、「あとにも先にもあんなに緊張したことはなかった」と振り返る。
ほろ苦いデビューだったが、目に留めてくれる人もいた。「それを見に来た舞台の演出家が一人いて。『次、いつやるの?』って聞くから、疲れて演出も自信ないし、もうやめますって言ったら『え、面白いのに』って。それ以降今に至るまで、『ちからわざ』の演出はそれを言った演出家の堤泰之さんがやってくれてます」。
さらに、劇団「自転車キンクリート」の演出家・鈴木裕美氏からも「もしかしたら二朗は、これからも脚本を書いていい人間かもよ」と言葉をかけられた。「要所要所でいろんな方が『書いていいよ』って言ってくれたんです」と佐藤。その言葉一つ一つが力になった。
■「演技をして生活できることが何よりうれしい」
映像作品への進出にも大きなきっかけがあった。「『自転車キンクリート』の公演に出ていたら、それを(映画監督の)堤幸彦がフラッと見に来て僕のことを気に入ってくれて」。
1シーン、セリフ3行ほどの小さな役。だがそこで佐藤が演じた「医者A」が、主演を務めていた本木雅弘とその所属事務所の当時の社長の目に留まった。「誰だこれは、うちの事務所の引き抜けってなって」。その一言がきっかけで佐藤は現在の事務所に移籍。活躍の場をドラマや映画へと広げていった。
「まったく無名の俳優を『うちに引き抜け』と言い出した先代の社長には、今さらながら感謝しています」と佐藤。どんなに小さな仕事にも手を抜かないその姿勢は、後輩にも刺激を与えている。「『AとかBの役も諦めちゃいけないって二朗さんの背中から学んだ』ってムロ(ツヨシ)が言ってくれてて。それを言ってくれてたムロが今のようになって本当に誇らしい」と目を細める一幕もあった。
佐藤の言葉の端々には、とにかく演じることが好き、という思いが滲む。林先生に「演じることそのものが一番楽しくて、やりたいことなんですね」と問われ、「そうです」と即答した佐藤。
今月21日からは、家族の絆を描いた映画「さがす」が公開される。演じることを愛し、シリアス作品でもコメディでも唯一無二の存在感を発揮する佐藤。いま大切にしていることを問われると「すごく譲れない信じるものを持つことも大事だし、それを貫きとおすのも大事。でも、9割がた『これだ』と思っていることを『違ったか』と思う感覚も大事なような気がするんです。変わることがマストではもちろんないけど、変わることも恐れちゃいけない、ということも思ったりしますね」としみじみ語った。
◇
「日曜日の初耳学」はTVerで放送から1週間、見逃し配信中!<インタビュアー林修>、そして2022年のファッション業界最注目キーワードを取り上げた<初耳トレンディ>もチェック!
【TVer】
「日曜日の初耳学」公式YouTubeチャンネルでは、米倉涼子やGreeeeNをゲストに招いた<インタビュアー林修>を期間限定で公開中!
【公式YouTubeチャンネル】
「日曜日の初耳学」はMBS/TBS系で毎週日曜よる10時放送。