国内で約34万人(推計*)が受けている透析治療。

体力低下などで治療をやめる人もいますが、これまでは、その後の痛みなどに対する専門的ケアは受けられませんでした。

そんな中、今年6月に「末期の腎不全」の患者も緩和ケア病棟への入院が認められ、「自分らしく穏やかに」過ごすための新たな道が拓かれ始めています。

いかに“終末期”と向き合うか。腎不全を患う患者や家族、医療現場を取材しました。

*日本透析医学会

国内で約34万人が受けている「透析治療」

「人生最大の苦しみを味わいながら死なねばならなかったのか」透...の画像はこちら >>

大阪市内に住む福井公一さん(50)。腎不全を患っていて、5年前から透析治療を受けています。

(腎不全を患う 福井公一さん)
「透析の直前はしんどくなる。体に水がたまってきて息苦しくなってくる。透析の直前になると、早く病院に行って透析をしてほしい」

腕に刺した針から血液を取り出し、老廃物や余分な水分を取り除いてから体内に戻します。1回の透析で6時間、これを週3回行います。

国内で約34万人が受けている透析治療。患者の命をつなぐために欠かせない治療ですが、体力の低下などで透析を止める=「治療をやめる」決断を迫られる人もいます。

「透析を回すために生きている」腎不全で亡くなった夫

「人生最大の苦しみを味わいながら死なねばならなかったのか」透析患者は受けられなかった「緩和ケア」制度改定で“がん”だけでなく末期腎不全にも対象拡大「透析をしない」決断も
MBS

去年6月、大阪で行われた透析治療を行う医師らの学会に、1人の女性が登壇しました。ノンフィクション作家の堀川惠子さんです。9年前、腎不全で夫を亡くしました。

(腎不全の夫を亡くした 堀川惠子さん)
「少しでも元気になればいいですけれど、透析後はほとんど寝たきりで苦しみが続く。透析を回すために生きている、そんな状態になった」

痛みに耐えかね透析止めるも…緩和ケア病棟への受け入れ叶わず

「人生最大の苦しみを味わいながら死なねばならなかったのか」透析患者は受けられなかった「緩和ケア」制度改定で“がん”だけでなく末期腎不全にも対象拡大「透析をしない」決断も
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10年以上、透析を続けてきた夫は、治療中に耐えがたい痛みや体調不良に見舞われるようになり、これ以上透析を続けられないと止める決断をしました。

しかし、透析を止めると老廃物などが溜まり、体中を痛みが襲います。そこで、入院していた病院の緩和ケア病棟へ移動したいと申し出ましたが、受け入れられませんでした。

「腎不全患者にも緩和ケアを」かつては原則“がん患者”限定

「人生最大の苦しみを味わいながら死なねばならなかったのか」透析患者は受けられなかった「緩和ケア」制度改定で“がん”だけでなく末期腎不全にも対象拡大「透析をしない」決断も
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当時、国の診療報酬制度では、緩和ケア病棟に入り痛みなどの専門的なケアを受けられるのは、原則がん患者に限られていたのです。

透析を止めた堀川さんの夫は、足の壊死が進行し、痛みで次第に会話もままならなくなり、10日後亡くなりました。

堀川さんは夫が耐えがたい苦痛とともに人生を終えた経験から、「腎不全患者にも緩和ケアを」と訴えてきました。

(堀川惠子さん)
「夫が人生最大の苦しみを味わいながら、死ななければならなかった。甘受しなければならなかったのか。苦しい環境に置かれたとき、ちゃんとした手当てが行われる環境ができることが私の最大の願いです」

「がん・がんじゃないとか関係なく」一般病棟での緩和ケアを行ってきた病院も

「人生最大の苦しみを味わいながら死なねばならなかったのか」透析患者は受けられなかった「緩和ケア」制度改定で“がん”だけでなく末期腎不全にも対象拡大「透析をしない」決断も
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長年、がん患者に限定されていた、終末期の緩和ケア。

そうした状況の中、徳島県の亀井病院では、緩和ケア病棟に入れない末期の腎不全患者などに一般病棟で緩和ケアを行ってきました。

(亀井病院 濱尾巧院長)
「いろんな病気で最期を迎える時には、痛みや呼吸困難感など終末期特有の症状が出ます。がん・がんじゃないとか関係なく症状のコントロールが必要になってくる」

「『痛い』『苦しい』と亡くなったわけでは…それがせめてもの救い」

「人生最大の苦しみを味わいながら死なねばならなかったのか」透析患者は受けられなかった「緩和ケア」制度改定で“がん”だけでなく末期腎不全にも対象拡大「透析をしない」決断も
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69歳の野村さん(仮名)は1年半前から透析を続けています。

糖尿病などの影響もあり、右足のかかとが壊死していて、激しい痛みに耐えかねていましたが、ここに入院し医療用麻薬を投与するなどして痛みは和らいだといいます。

(野村さん・仮名)
「足が痛くなくなって気が楽。早く歩きたい。

床を歩きたい」

取材には生きる希望を話していた野村さんですが、1週間後、息を引き取りました。

闘病生活をそばで見守ってきた長女は、緩和ケアで母親に笑顔が戻り、穏やかな時間を過ごせたと振り返ります。

(野村さんの長女)
「ちょっと元気になって、お母さんらしく会話もできて、最期はお母さんが『痛い』『苦しい』と亡くなったわけではなさそうだったので、それがせめてもの救いです」

末期腎不全患者にも拡大 緩和ケア病棟への入院

「人生最大の苦しみを味わいながら死なねばならなかったのか」透析患者は受けられなかった「緩和ケア」制度改定で“がん”だけでなく末期腎不全にも対象拡大「透析をしない」決断も
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「苦痛を取り除くケアがあれば、穏やかに最期を過ごせるのに…」

こうした患者や家族の訴えに、今年6月、国が動きました。診療報酬制度が改定され、「末期の腎不全」の患者も新たに緩和ケア病棟への入院が認められたのです。

(緩和ケア医)
「できるだけ穏やかに症状を少なくして、本人のしたいことをして過ごしたい1日を過ごしてもらえたら」

「静かに安らかに、その時を過ごしていきたい」透析しないと決めた86歳男性

「人生最大の苦しみを味わいながら死なねばならなかったのか」透析患者は受けられなかった「緩和ケア」制度改定で“がん”だけでなく末期腎不全にも対象拡大「透析をしない」決断も
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兵庫県姫路市にある「姫路聖マリア病院」。今年6月の診療報酬制度の改定を受け、緩和ケア病棟で腎不全患者の受け入れを進めています。

大きな変化は、がん患者と同じように緩和ケアを受けるための事前の準備ができるようになったことです。

苦しまずに時間を過ごせる環境があれば…

末期の腎不全を患う、86歳の伊藤さん(仮名)。高齢なこともあり、透析をしないと決めました。

(伊藤さんの娘)「お父さん(透析は)どうする?どんどん悪くなってきても、そのまま?」
(伊藤さん)「これでいい。静かに安らかに、その時を過ごしていきたい。自分としては、延命(透析)を考えることは全くありません」
(伊藤さんの娘)「最期は本人が言うように、苦しまずに時間を過ごせる環境があればいい」

「一人でぽつんと病床にいるのはいかに寂しいか」

「人生最大の苦しみを味わいながら死なねばならなかったのか」透析患者は受けられなかった「緩和ケア」制度改定で“がん”だけでなく末期腎不全にも対象拡大「透析をしない」決断も
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まだ自覚症状はありませんが、将来痛みが出たときにすぐ適切なケアが受けられるよう、緩和ケア科の医師と話し合います。

(緩和ケア医)「暮らしている中で、不都合や不便はありますか?」
(伊藤さん)「周りに迷惑かけたり助けてもらったりしてね、今で十分満足しています」

今の体の状態や生活する中での困りごと、病気が進行する中でどのように過ごしたいかなど、患者と家族それぞれの考えを聞き取っていきます。

(緩和ケア医)「手伝ってもらうことがあるとしたら?」
(伊藤さん)「話し相手になってくれたら一番です」
(緩和ケア医)「それは奥さんが頑張ってくれたら」
(伊藤さん)「一人でぽつんと病床にいるのはいかに寂しいか」

「透析をしない決断をしても気持ちが楽になる」

「人生最大の苦しみを味わいながら死なねばならなかったのか」透析患者は受けられなかった「緩和ケア」制度改定で“がん”だけでなく末期腎不全にも対象拡大「透析をしない」決断も
MBS

(伊藤さんの娘)
「自分だけで頑張らなくてもいいんだ、助けてもらえる、透析をしない決断をしても気持ちが楽になるというか。お父さんが選んだ道でもほったらかしじゃない」

患者と家族が痛みに怯えることなく、いつでも頼れる場所があるという安心感。

最期まで自分らしく生き切るための新たな道が拓かれ始めています。

(2026年10月6日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)

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