新幹線の車内では、さまざまな人が乗り合わせるだけに、お互いに配慮することが重要だ。しかしながら、他人の“マナー違反”が目につくこともあるかもしれない。
注意したくもなるが、相手が逆上してしまう可能性もあるため、その判断は難しいところである。周囲の乗客が意を決して声をかけた結果は……。

通話で会話内容がダダ漏れ

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新幹線で座席に着いた坂口優子さん(仮名・40代)は、ある男性の行動に戸惑うことになった。

「品川を発車して間もなく、斜め前に座っていた紺色のスーツの男性のスマートフォンから、スポーツ中継の実況が響き渡ったんです。イヤホンをしていないので、数列離れた私にも明瞭に聞こえました」

やがて着信が入り、男性は着席したまま通話を始めた。

「その会話は『今、新幹線。だから、その金額じゃ上は通らないって。先方には今日中に出してよ。あそこの担当の田中さん、細かいんだから』というものですが、会社名や交渉金額、取引先の担当者名まで周囲に筒抜けでした」

「声を小さくしていただけますか」後ろの席の女性が勇気を出した!

静かな車内で、後ろに座っていた若い女性が身を乗り出した。

「彼女が『あの、すみません。少し声を小さくしていただけますか』と声をかけたんです。勇気のいる行動だったと思います」

だが、男性の反応は冷たかった。坂口さんは、その時の緊張感を覚えている。

「相手から『別に怒鳴ってないですよ。
普通にしゃべってるだけでしょう』と吐き捨てられていました。

ただ、その後、車掌が気づいたようです。『お客様、恐れ入りますが、通話はデッキでお願いいたします。また、動画をご覧になる際はイヤホンをご使用ください』と丁寧ながら毅然とした対応でした」

車掌の注意を無視し、むしろ大きな声で…

しかし、その注意は男性に響いていなかった。

「彼は『はいはい、もう切りますから』と返事をしたのに、車掌が別の車両へ移った途端、『ごめん、今ちょっと車掌にうるさく言われてさ』と、むしろ先ほどより大きな声で話し続けたんです」

坂口さんも周囲の乗客も、男性の行動に呆れていた。

「数分後、再び現れた車掌は、先ほどより厳しい表情で『ほかのお客様からもお申し出がございます。通話を続けられる場合は、デッキへご移動ください』と告げました」

やがて男性はデッキへ向かった。そして約20分後、不満げに席に戻ってきた。そこで、予想外の場面に遭遇したのだ。

「通路を挟んだ席にいた50代ほどの白髪まじりの男性が、文庫本から顔を上げて、静かな声で言ったんです」

その一言が、すべてを変えた。

淡々と事実を突きつける

「普通にしゃべってるだけでしょ」新幹線で大声通話、注意されても逆ギレする中年男性。周囲の乗客の“冷静な一言”に顔面蒼白
※写真はイメージです(画像生成にAIを使用しています)
「白髪まじりの男性が、『お仕事の大切なお電話なら、なおさら場所を選ばれたほうがいいですよ。取引先の社名も、提示されている金額も、この辺りの席には全部聞こえていましたから』と言ったんです。感情を交えず、事実だけを突きつけた言葉でした」

まさに冷水を浴びせられたように固まった。

「スーツの男性は、『え……そ、そんなに聞こえていました?』と返すと、白髪交じりの男性は『はい。
かなりはっきりと』とだけ言い、再び文庫本に目を戻しました。怒声よりも鋭く響く言葉でした」

坂口さんは、そのときの男性の表情の変化が忘れられないという。

「先ほどまで強気だった男性の顔から血の気が引いていきました。慌ててスマートフォンを鞄の奥へしまい、周囲の冷ややかな視線に気づいたのか、『失礼しました』と小さくつぶやきました」

“ビジネスマンとして恥ずかしい”状態に

その後、男性は新大阪に到着するまで、動画を見ることも電話をすることもなかったという。

「彼からは『仕事をしているのだから、少々のことは許される』という特権意識が見えたんです。でも皮肉にも、仕事を言い訳に振る舞った結果、ビジネスマンとして最も避けるべき機密情報の漏洩を、自ら招いていました。

車掌からルールを注意されることよりも、見知らぬ人から『あなたの仕事の質が問われていますよ』と指摘されたことが、彼にはこたえたんだと思います。怒りではなく、冷静な指摘だからこそ、効いたんでしょう」

静まり返った夜の新幹線で起きた出来事について、坂口さんは振り返る。

「少し痛快でありながら、自分の日頃の振る舞いも省みたくなる出来事でした。公共の場では、どんなに仕事が忙しくても、自分の行動が周囲にどう影響するか。特にビジネスパーソンなら、その責任を自覚すべきだと感じました」

<取材・文/日刊SPA!編集部>
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