◆横浜流星主演大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」
本作は“江戸のメディア王”として時代の寵児になった快男児・“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜)が主人公。森下佳子氏の脚本で、笑いと涙と謎に満ちた“痛快”エンターテインメントドラマを描く。
ていは、市中の本屋の娘で、謹厳実直(きんげんじっちょく)で控え目な女性だが、それが故に損ばかりをしてきた過去をもつ。ある種、世慣れた女郎たちが集まる吉原で育った蔦重にとっては非常に慣れないタイプの女性であり、ていにとっても蔦重はその出自も含めて受け入れがたい存在であった。商いのための形だけの夫婦として結婚した2人だったが、「本を愛する」という共通点が絆となり、いつしかかけがえのない存在となっていく。
◆橋本愛、大河ドラマで“主人公の妻”役は三度目
― 大河ドラマにおいて、主人公の妻役は三度目ということで、オファーを受けたときの気持ちを改めてお聞かせください。
橋本:またご縁があることが、すごく嬉しかったです。大河ドラマほど長い作品も他にないですから、役柄に対しての愛情が段違いで、今まで(大河ドラマで)演じてきた役はどれも大好きですし、未だにその魂が残っているなと日常生活で感じるくらい強く刻まれています。時間が長ければ長いほどそうなると思うので、収録は大変ですが、長い作品を集中して演じられることがとても好きだしありがたいなと思っています。一方で、主人公の妻という役柄が重なっていたので、飽きられてしまわないか不安もあったので、役柄は全然違いますが、自分にとっても全く違うように見えるように意識して演じたいと思いました。なので、毎回「これで最後だ」というぐらいの気合で演じています。
― 登場してから、視聴者の反響はいかがでしたか?
橋本:私も第1回からずっと観てきていて、途中から参加することは難しいだろうなと感じていたし、視聴者のみなさまに受け入れていただけるか心配していたので、本当に安心しました。森下さんがていさんのキャラクターを愛すべき人として描いてくれたことや、誠実に演じたことが視聴者のみなさまにも伝わったのが嬉しかったです。ていさんのこれまでの人生はほとんど描かれていなくて、和尚さんとの会話で人生を明らかにしなければいけなかったのでその場面に全てをかけるぐらいの気持ちで挑みました。だから視聴者の方が、まだ登場したばかりなのに「おていさん可哀想」「報われてほしい」と、まるで今までの人生をともに見てくれたかのように反応してくださったのがすごく嬉しかったです。
◆橋本愛、今回からなくなったこととは
― 大河ドラマへのご出演は四度目ですが、大河ドラマだからこそ勉強になったと実感することは?
橋本:もちろん歴史のことはそうなんですが、自分の趣味的な範囲で言うと、所作がすごく勉強になっています。最初が「西郷どん」で時代劇も初めてのレベルだったので、過去3作では所作指導の先生にいろいろとゼロから教わっていたんですが、
ついに今回からクランクイン前の所作指導がなくなりました!
― マスターされたんですね。
橋本:もちろんまだまだではありますが、最初よりはできるようになりました。あとは、今回そういう役柄ではないけれど日本舞踊にまた通い出したんです。少しでも着物に慣れたいのと、ていさんも日本橋の由緒正しき家の女性なので習っていたかもしれないし、習っていなくてもどこか凛とした所作が表現できれば良いなと思って、勉強になっています。身体表現が好きなのですごく楽しいです。
◆橋本愛、演じるていに共感する部分&ギャップを感じる部分
― 橋本さん自身も書評の連載を持つなど、読書好きだと思いますが、ていの役と特にシンパシーを感じる部分は?
橋本:蔦重さんの「書をもって世を耕す」というこの作品の根幹とも言えるような信念もそうですし、最初の和尚さんとの会話であったように「本で子どもたちの人生を豊かにするんだ」というのは、私自身も実感を伴って大切にしていることです。本に限らず、映画やいろいろなエンターテインメントに自分の人生を豊かにしてきてもらったというどこか恩のようなものも感じていて、恩返しをしたいのもあるし、自分もエンターテインメントを作る側の人間として、この作品が届いた誰かにとって人生が少しでも豊かになったり何か力になったりすることを知っているからそこに対して誠意と覚悟を持って作品作りをしたいと思っています。
― ていとご自身の性格で、ギャップを感じる部分はありますか?
橋本:私は基本的にずっと大笑いしているタイプの人間なので、笑わないことが難しいなと思います。あとは私も真面目だけれど、あそこまで堅くなく、緩さや柔らかさを意識して生きているので、ギャップは常に感じています。ていさんならどうするかが、自分の中に元々あんまりないからこそ、自分のクリエイティブさが試されるというか、発想する時間もすごく楽しいです。
◆橋本愛「べらぼう」眼鏡は「掛けていた方が落ち着く」
― ていのトレードマークである眼鏡がお芝居の役に立っている部分はありますか?
橋本:実はこれから活用したシーンがあるんですけど、何でそんなことをするのか私も分かっていなくてどう演じようか考えている最中なので、楽しみにしていただきたいです。
とはいえ眼鏡に頼り過ぎたくない気持ちもあるので、眼鏡を使ったお芝居について、自分からはあんまり考えないようにしています。ていさんにとっては大切な父親からのギフトでもあり、相棒のような宝物でもあるから、そういった精神的にすごく大事なものということはもちろん前提として意識しつつ、動きが多すぎて、それがていさんの気持ちを表すメタファーになりすぎても良くないかなと思って。全体像を見られている演出が、ここでやってもくどくないと思ってくださったシーンで、クイッとさせる動きなどを指示してもらってやっています。
― 祝言のシーンでは眼鏡を取ったときに周りが綺麗で驚いて「掛けていた方が落ち着く」という描写がありましたが、橋本さんご自身はいかがですか?
橋本:私も掛けている方が落ち着きます(笑)ていさんの扮装になると、「眼鏡がないとなんか恥ずかしい、見ないで」という気持ちになります。
― 第28回の「お口巾着」シーンも話題を呼びましたが、ていの可愛い部分はどう表現していますか?
橋本:脚本に書いてあったので「こんなシリアスな流れでやるのか」とは思ったんですけど(笑)真面目だからこそ面白いんだと思います。実は演じる前は「これ、本当にやっていいのかな?」とびくびくしてたんですけど、結果「あのシーンで救われた」と言っていただけてよかったです。
― 今後、ていさんが笑顔になる場面は出てくるんでしょうか?
橋本:あったようななかったような気がするんですけど、もし笑うんだったら「絶対にここだ!」というタイミングで笑いたいのでまだまだ試行錯誤中です。
◆橋本愛、ていの声で意識したこと「色香を消したい」
― 1人の人物を、年齢を重ねて演じていく中で心がけていることは?
橋本:いつも心がけているのは声と姿勢です。年齢を重ねるにつれて重心が低くなって余計な力が抜けていく感覚です。声について、最初はすごく緊張感のある低くて迫力のある声を意識しました。ずっと花魁さんたちと触れ合ってきた蔦重さんが相手だからこそ、全く色気のない声の方が「こんな人と関わったことがない」という印象を持つと思ったので逆に色香を消したいと思って。これから先はいろいろな声色が出てくると思っていて、今でも少し柔らかさが出てきてはいると思うし、どんどん蔦重さんのユーモアがうつってちょっと茶目っ気が出てくるのかなと思うので試行錯誤しています。
― 今作を経て、今後の女優人生に活かしていきたいことを教えてください。
橋本:所作や着物の着こなしは他の作品でももっともっとブラッシュアップしていきたいです。これはまだわからないのですが、今まで大河ドラマで最終話まで立ち会えたことがないので、途中参加も初めてですが、最後まで立ち会えたらそれも初めてとなるので、とても楽しみにしています。きっと言葉にし難い感慨に襲われるだろうなという予感があるし、本当に大きくて長い川を流れてきたような体験が絶対に今後に活かされると思いますし、長くやってきたスタッフ・キャストとともにゴールテープを切ることができたらすごく嬉しいです。
★インタビュー後編へ続く。
(modelpress編集部)
◆「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第31回「我が名は天」(8月17日放送)あらすじ
利根川決壊で大洪水の江戸。蔦重(横浜流星)は、新之助(井之脇海)らを気にかけ深川を訪れる。
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