矩子幸平[ライター]

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今年の「第66回NHK紅白歌合戦」の出場者と楽曲が異様だ、と話題だ。

「NHK紅白歌合戦」といえば、その基本コンセプトは「その年を代表するアーティストを紅白の組に分け、対抗形式で歌・演奏を披露」であることはもはや説明するまでもない。


しかし、今年は例年以上にそのコンセプトに合わない番組構成になっている。

出場する51組のアーティストのうち、「2015年を代表するアーティスト」は何人いたか? を見てみたい。「その年を代表するアーティスト・楽曲」の指標には、必要条件として媒体が何であれ「その年のランキング1位取得」が求められるだろう。

そして今年の紅白歌合戦で披露される楽曲のうち、2015年に発売してランキング1位を獲得した曲は、わずかに以下の5曲にすぎない。

・SEKAI NO OWARI「プレゼント」
・μ’s「それは僕たちの奇跡」
・三代目J Soul Brothers「Summer Madness」
・椎名林檎「長く短い祭り」
・Sexy Zone「ニッポンCha-Cha-Cha チャンピオン」

わずか5曲のヒット曲しか放送しないような状態で、「その年を代表するアーティストの歌合戦番組」と言えるだろうか?

それに対して目に付くには、2015年とは無関係だが安定的な動員力を持っている鉄板クラスによる「メドレー」だ。ヒット曲で組み上げた「紅白バージョン」なのだろう。


さらに気になるのが、レベッカ「フレンズ」、今井美樹「Piece of My Wish 」、近藤真彦「ギンギラギンにさりげなく」、松田聖子「赤いスイトピー」など、過去の伝説的ヒット曲のオンパレードだ。もはや「懐メロ」の域に入っている曲が10曲以上、すなわち全楽曲の5分の1以上を占めている。

「2015年を代表していない」楽曲とアーティストばかりであることは明白だ。

もちろん、音楽を聴いている若い層がネットでの音楽視聴にシフトして、CDなどは買わないので、若者の流行や感性がランキングには反映されづらいという現実はある。それに加えて、そもそもアーティストが抱える固定ファンを除けば、若者たちはテレビで歌番組などを見ないのだから、若者のリアルな感覚を番組に反映させる意味もないのかもしれない。

そうなると、自ずとテレビを見る層、すなわち中高年をターゲットにした「ほぼ懐メロ」に力点を置かざるを得ないのは理解できる。
しかし、そんな偏った「今年の代表」が果たして「国民的か?」と問われれば、間違いなく「ノー」だ。少なくとも、見ている側には違和感しか残らない。

ここまで著しく番組コンセプトと実態が異なっているのであれば、いっそ番組自体を取りやめるか、根本的に変更する必要がある。

「NHK紅白歌合戦」は「大晦日の国民的番組」を名乗るには、公共放送であるにもかかわらず、あまりにも公共性を伴わない不自然な番組だ。

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