目次
  • 訪問看護ステーションで働くリハ職の割合
  • 利用ニーズが必ずしも高くない高齢者にサービスが繰り返し提供されている?
  • リハ職による訪問看護指示書の記載内容の見直しで何が変わるのか?
  • 利用者が適切なケアを受けられるようになる

YouTube「訪問リハ&訪問看護&介護保険【制度マニア】」の運営者であり、ブログ「訪問リハビリ・訪問看護情報サイト」の管理者、書籍『リハコネ式!訪問リハのためのルールブック【第二版】』著者の杉浦良介です。

2022年4月1日に、令和4年度診療報酬改定がありました。

訪問看護においていくつかの改定がありましたが、今回はリハ職による訪問看護の訪問看護指示書にフォーカスします。

普段から訪問看護のサービスを受けている人や、これから訪問看護を受けたいと思っている人にとってどのような影響があるのか、解説します。

訪問看護ステーションで働くリハ職の割合

在宅医療のニーズが高まり、訪問看護ステーションが増加しています。

一般社団法人全国訪問看護事業協会による「令和3年度訪問看護ステーション数調査結果」では、全国には1万3,000以上の訪問看護ステーションがあると発表されました。

その中で、いつも議論に挙がるのが「リハ職による訪問看護」の問題です。

厚生労働省が実施した「令和2年介護サービス施設・事業所調査」によると、訪問看護ステーションで働く訪問看護を提供する職種別人数は下記の通りです(2020年10月1日時点)。

  • 看護師、保健師、助産師:81,632人
  • 准看護師:7,999人

看護師等の合計:89,631人(約67%)

  • 理学療法士:21,093人
  • 作業療法士:9,043人
  • 言語聴覚士:2,678人

リハビリ職員の合計:32,814人(約25%)

このように訪問看護ステーションという名前であるにもかかわらず、理学療法士などリハビリ専門職が約25%を占めています。

また、厚生労働省が公表している「在宅医療(その2) 訪問看護ステーションにおける理学療法士等従事者数の割合の推移」では、2017年9月の段階で、訪問看護ステーションにおいて、「理学療法士等の割合が80%以上の事業所」は0.4%、「60~80%未満の事業所」は4.3%、「40~60%未満の事業所」は10.9%と報告されています。

利用ニーズが必ずしも高くない高齢者にサービスが繰り返し提供されている?

こうした状況によって「医療ニーズを有する高齢者のさらなる増加が見込まれる中で、理学療法士等による訪問割合が増加する傾向が続くと、訪問看護の役割が十分に果たせなくなる」と警鐘を鳴らす有識者もいます。

また、それほど必要性が高くないにもかかわらず、過剰なリハビリサービスが高齢者に提供されている可能性も指摘されています。

そこで、令和3年度介護報酬改定では、リハ職が行う訪問看護においては、医師が作成する訪問看護指示書に「1日あたり◯分を週◯回実施する」という明確な記載が必要となりました。

これにより、一度の訪問看護の提供時間や週に訪問できる回数は、訪問看護ステーションの事業所の判断ではなく、医師が決めるようになりました。利用ニーズが高くない高齢者に繰り返しサービス提供される事態を招かないように制度改定が行われました。

この介護報酬改定が、今年の診療報酬改定にも適用されたのです。

そもそも訪問看護は、介護保険と医療保険の双方で提供されるサービスのため、年をまたいで改正されるに至ったのです。

リハ職による訪問看護指示書への記載の見直し。訪問看護のサービ...の画像はこちら >>

リハ職による訪問看護指示書の記載内容の見直しで何が変わるのか?

次に、令和4年度診療報酬改定における「リハ職による訪問看護指示書の記載内容の見直しポイント」について解説します。

今回、厚生労働省からは「医師の指示に基づき、医療的ニーズの高い利用者に対する理学療法士等による訪問看護が適切に提供されるよう、理学療法士等が訪問看護の一環として実施するリハビリテーションに係る訪問看護指示書の記載欄を見直す」という通知がありました。

改定後、リハ職に訪問看護の指示をもらうときは、訪問看護指示書に、「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が行う訪問看護1日あたり〇分を週〇回」という記載が必要となりました。

これにより、介護保険と医療保険の訪問看護におけるリハ職の訪問看護指示書のルールが統一されることになりました。

訪問看護は、疾患や年齢などにより介護保険か医療保険のどちらが適用されるかが決められます。

介護保険における訪問看護のサービスを受けるときは、ケアマネージャーが訪問介護の必要性を判断し、サービスのスケジュールが組まれます。

その際、下記のメンバーによって訪問看護の回数や時間が決められます。

  • ケアマネージャー
  • 利用者、家族など
  • 医師
  • 訪問看護ステーション

一方、医療保険で行われる訪問看護は、下記のメンバーによって訪問看護の回数や時間が決められます。

  • 利用者、家族など
  • 医師
  • 訪問看護ステーション

このように、医療保険における訪問看護では、ケアマネージャーのような第三者が関わりません。今までは、利用者や家族などと相談して、訪問看護ステーション側の意見によって回数や時間が決められていたケースもありました。

その中には、先述したような過剰なサービスを提供する訪問看護ステーションもあったのかもしれません。

利用者が適切なケアを受けられるようになる

医療保険の訪問看護の場合は「1回の訪問看護が30~90分間が同額の料金設定」という料金体系となっています。

例えば、利用者の負担が1万円であったとき、訪問看護の時間が30分でも90分でも訪問看護ステーションが受け取る金額は変わりません。

つまり、これまでは訪問看護ステーションの判断によって、30分間の訪問看護を繰り返し実施するようなケースがあったと考えられます。

しかし、今後は訪問看護指示書に時間と回数を明確に記さなくてはならないため、こうしたケースを未然に防ぐことができます。

リハ職による訪問看護指示書への記載の見直し。訪問看護のサービスにどんな影響がある?
時間と回数の明記で悪質なケースを防ぐ目的がある

医療保険における訪問看護は、制度の特性上、小児疾患、難病、終末期、精神疾患の方が多くいます。医師の指示に基づいた適切な回数や時間で、リハ職による訪問看護が提供されるようになり、医療ニーズの高くない高齢者に多くの労力が割かれないようにしたいものです。

しかし、今回紹介したような「医療保険の訪問看護を30分間の訪問で高頻度に提供している」といった方法を行う訪問看護ステーションはごく一部だと思います。

訪問看護は医師の指示に基づいて実施されるサービスですので、これからは医師と訪問看護ステーション側が連携をとり、より良いケアを利用者に提供できるようになると、利用者のメリットが大きくなるでしょう。

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