執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
ストレスフルな現代生活。身体だけではなくココロにも負担がかかり、不調や疾病に陥る人も少なくない状況になってきました。

かつては縁も少なく敷居が高かった精神科系の診療科ですが、最近では受診者も増えて、患者数は年間300万人を超えています(厚生労働省調べ)。
メンタルな不調や病気が疑われるとき、精神科と心療内科と、どちらに受診すればよいのでしょうか。
ココロもカラダもケアする心療内科
ココロの病気というと、現在の医療機関の診療科には「精神科」「心療内科」、そして「神経科」「神経内科」などもあります。
かいつまんでいえば、統合失調症や双極性障害、うつ病など精神病の診断と治療を専門とするのが「精神科」です。
これに対して、自律神経失調症や認知症、パーキンソン病など、神経障害による病気を専門とするのが「神経科」や「神経内科」などです。
一方、「心療内科」はもともと、心身症と呼ばれる病気を専門とした内科でした。

気管支喘息、本態性高血圧症、胃・十二指腸潰瘍、円形脱毛症、夜尿症、インポテンツ、メニエール病などの中には、症状は身体に出てくるのですが、その原因がココロ――その人の考え方や人間関係のあり方など――にある疾病もあり、これを心身症と呼んでいます。
そんな心身症の治療から始まって現在では、「人を身体面だけでなく、心理面や社会面などを含めて、全人的に治療しようとするのが心療内科です」(特定非営利法人:日本心療内科学会HPより)とされ、心療内科がカバーする疾病は、かつてよりも多岐にわたっています。
心療内科はいわば、「気(ココロ)も含めて病いを理解し治療する内科学」とでも言えるでしょう。
精神科と心療内科:人々のイメージは?
以上に述べたのは、医学において精神科と心療内科などが、どのような専門性を担っているかの違いでした。
しかし、患者さんや私たち素人には、そんな区別を理解するのは難しいかもしれません。
歴史的にいうと、心療内科が日本に創設されたのは50年ほど前のこと。
まだ、新しい診療科ともいえます。
これに対して、精神科は古くからあります。
日本初の公立精神病院「京都癲狂院(てんきょういん)」が設立されたのは1872年(明治5年)のことでした。
ですから、一般の人にとっては精神科も心療内科もココロの病いを治療する医療機関であること、そして、心療内科の方が新しいイメージがあるのではないでしょうか。
加えて、精神科には、歴史も古いだけに心の病に対する偏見などもあって、暗いイメージが伴っているかもしれません。
その意味では、心療内科の方がライト(軽い)なイメージで、アクセスしやすいと感じているかもしれません。


精神科や心療内科へのコンタクト:情報収集の2つの方法
ココロの不調や病気の疑いがあるとき、精神科の方がよいのか心療内科の方がよいのかは、判断が難しいところです。
そこで、選択の際の参考に2つの方法をお奨めします。
クリニックや病院のホームページを閲覧する
現在、クリニックや病院ではホームページを開設して、診療科の特徴や担当医の専門性を公開している場合が多いです。
統合失調の治療に詳しいとか、うつ病の治療を専門とする医師がいるとか、睡眠外来とか不安障害の症例を多く手掛けているなど、参考になる情報を得ることができるようになっています。
相談機関を活用する
地域の保健所や精神保健センター、あるいは、学校の医務室や企業の健康管理室などには、不調や疾病の疑いに相談に乗ってくれる専門職として、保健師やソーシャルワーカーなどがいます。
場合によっては医師が相談に応じてくれることもあるでしょう。

このような相談機能を活用することで、自分に合った医師や医療機関と出会えず、どんどん医師を変えてしまう「ドクターショッピング」を回避することが可能となります。

心療内科への受診勧奨:一つの実例
「心療内科」と「精神科」を併設するある病院のホームページには、「心療内科」が次のようにオリエンテーションされています。どうぞ参考にしてください。
「さまざまなストレスが原因でおもに『からだ』に症状が現れる場合、その症状や病気を治療するのが心療内科です。
たとえば、強い動悸(心臓がドキドキ)が続いたり、お腹の具合が悪くなったり(下痢・腹痛)、血圧が高くなり、ぜんそくの症状が現れてくるといったことがあります。
それで内科の病院を受診して、いろいろな検査をしても『全く異常ありません』と言われて帰ってきたが、その後の症状がずっと続いているといった場合です。」
医療法人玉越病院HP(http://www.takumikai.jp/qanda.html)より
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。
立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供