【かぶオプコラム】
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【格言かぶオプコラム】第1回:十人が十人片寄るときは決してその裏来るものなり | 東証マネ部!
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前回に引き続き、今回も江戸時代の相場師、本間宗久にまつわる格言をご紹介します。本間宗久はローソク足を活用した「酒田五法」という5つのテクニカル分析の体系を考案した人物として知られていますが、同時に、投資家が陥りやすい心理的な落とし穴を避けるための教えも数多く残しています。
「何程利運を得ても、この休むことを忘るるときは、商い仕舞いのときはきわめて損出ずると心得べし。但し、商い仕舞い休むというは、何心なく休むにあらず、その気の強弱を離れ、日日通い高下を油断無く考うべきなり。」
現代語にすればこうなります。
「たとえどれだけ利益を上げたとしても、“休むべき時に休む”ことを忘れてしまうと、結果として大きな損失につながると心得るべきである。ただし、売買を終えて休むというのは、無目的に休むのではいけない。相場の上下には深入りせず、日々の値動きを油断せず冷静に観察し続けることが大切である。」
どんなに腕の立つ相場師でも、常に売買を繰り返しているわけではありません。「休む」という判断もまた、立派な投資行動の一つなのです。この教訓は、明治・大正・昭和の三代にわたって綿糸相場で活躍した田附政次郎の言葉にも表れています。
「予は断じて幸運を信ぜず、成果はすべて研究と努力の賜物である。売るべし、買うべし、休むべし。」
投資の世界では、時代や対象が変わっても、冷静さを保ち、無理に動かないことの価値は変わりません。現代では「休むも相場」という格言として広く知られています。
確かに、相場がどちらに動くか見通しづらく、売っても買っても利益が出にくい局面では、無理に売買するよりタイミングを見極めて「一呼吸」置くほうが賢明かもしれません。とはいえ、ただただ休んでいては利益は得られません。本間宗久も、「休むべし」といいつつ、「値動きは油断なく見よ」と説いています。それならば、適度に相場とは距離を置きながらも多少の利益は狙える戦略をとってみるのはどうでしょうか。そこでおすすめなのが、「かぶオプ」を使ったOTM(アウト・オブ・ザ・マネー)のプットを売る「ターゲット・バイイング」です。
「ターゲット・バイイング」は読んで字のごとく株を「値段を決めて株を買う」ことを意識した戦略です。ここでは特に、現在の株価よりもずっと低い行使価格のプットを売って、株価がそこまで下がったら買ってもよいという心構えで臨みます。
非常に低い買い指値注文を出していてもなかなか約定しないことがありますが、それと同じように、現在の株価よりもずっと低い水準の行使価格を選んでプット売れば、株を買う可能性は低くなり、逆に「買わされるかも」と日々ハラハラする必要もありません。一方で、プットの売り代金は必ず受け取れますから、相場に一喜一憂せず、ゆったり構えて満期日まで過ごすことができます。(「ターゲット・バイイング」について詳しく知りたい方は、かぶオプコラムを御覧ください。)
2025年4月後半から5月上旬の日本株市場は、大きな方向感もなく比較的落ち着いた相場でした。4月に発表されたトランプ政権の相互関税措置が90日間停止され、5月1日の日本銀行の政策決定会合でも金利据え置きが発表されるなど、先行きの不透明感はあるものの、短期的には静かな市場でした。
例えば4月22日の時点でレーザーテック(6920)の株価は12,000円前後でした。同銘柄の直近安値は4月7日の10,245円で、2021年以降10,000円を割ったことはありません。そこで、今後10日ほどの間に10,000円を割り込む可能性は低いと考え、レーザーテックの5月限行使価格10,000円のプットを売る戦略をとりました。この日のプットの清算値段185円です。これを100株分売れば、18,500円(=185円×100)のプレミアムを受け取れます。実際、5月8日の限取引最終日、レーザーテックの株価終値は13,995円でした。プットは行使されることなく、18,500円がそのまま利益となりました。
この戦略では、プットが行使されたときに備えて100万円(=10,000円×100株)を用意しておく必要はありますが、16日間で1.85%のリターンと考えれば、まずまずの収益です。しかも、取引後はほとんど何もすることなく過ごせたのです。もちろん、すべてがこの例のようにうまくいくとは限りません。想定以上に株価が下落して株を買うことになる可能性もあります。
「休むも相場」とは、何もしないことではなく、力を抜いて市場と付き合う姿勢でもあります。最近うまく取引できていないと感じたら、深呼吸してしばし相場を見守り、冷静な自分を取り戻しましょう。とはいえ完全に市場から離れるのは寂しい…そんな方は、「かぶオプ」で遠いOTMプットを一枚売ってみるのも一つの方法です。気楽に満期日を待ちながら、ちゃっかり利益も得て、心身をリフレッシュ。そうしているうちに市場にも新しい風が吹き始めるかもしれません。新たなトレンドが見えてきたら、また本腰を入れて相場に向き合いましょう。きっと、今までよりも集中して取り組めるはずです。
(株式会社シンプレクス・インスティテュート)
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