▶︎すべての画像を見る「偏愛さんいらっしゃい」とは……エア マックスと聞いて脳裏に浮かぶモデルのひとつやふたつはあるだろう。それほどに、ナイキの中でも認知度の高いシリーズである。
ただ、“お初”な人にとっては、何が定番で、どういう基準で選べばいいか分からないはず。そんな迷えるルーキーたちの指針となりうる5つのモデルを、ナイキが認めるエア マックス愛好家、G-KEN先生に聞いてみた。
話を聞いたのは……ファッションデザイナー・G-KENさん G-KEN●某ストリートブランドのショップスタッフとしてキャリアをスタートさせ、その後は人気スニーカーショップ、アトモスのプレスとして獅子奮迅の活躍。昨年独立し、スニーカーの魅力を伝えると共に自身のブランド、トゥエルブパーセントを展開する。業界内ではエア マックス好きとしても知られ、日本国内で3人しかいないMASTER OF AIRの称号を持つ。
エア マックスの登竜門的モデル
【1足目】エア マックス 1
今回、5モデルを紹介するにあたり、G-KEN先生はとあるテーマを立てたという。「エア マックスといえば、やはり1990年代がもっとも盛り上がっていた時代だと思います。それをあえて“旧”と呼ばせていただき、2000年以降を“シン”とカテゴライズ。“旧”が3足、“シン”が2足の計5足を選ばせていただきました。ここには、1987年に発表されたモデルから2022年の最新モデルを並べています。エア マックスの歴史も紐解きながら、魅力をお伝えしたい思います」。そんな気になる一足目は、
第一回にも登場したあの名モデル。
「まずは、やっぱりエア マックス 1。
1987年に発表されたエア マックスのファーストモデルです。マテリアルや機能面においては時代性によって変わってくると思いますけど、フォルム自体は35年経った今でもほぼ変わっていません」。
今もなお不動の人気を誇るため、時代を問わず履けるモデルと断言する。「幅がやや細いので足幅が広い人にはサイズ的に難しいかもしれませんが、スタイリングを邪魔しないモデルなので扱いやすいはずです。ナイキ側からしても外せない一足だと思いますし、エア マックス好きとしても欠かせません。まさに、登竜門的なモデルだと思います」。普遍性を特徴としてあげながら、スタイルのテイストを選ばないオールマイティさも魅力とG-KEN先生。
「太めのパンツだろうが細身だろうが対応してくれます。ハイテクシューズの部類にはなりますが、そこまでハイテクすぎないルックスなので女性でも気兼ねなく履けると思いますよ。ワンピースに可愛らしい配色のものを挿し色として合わせるのもいいですね」。--{}--
ハイテクスニーカーブームの火付け役
【2足目】エア マックス 95
お次は、エア マックス史上もっとも有名なこのモデル。
「やはりエア マックス 95は外せませんね。これはOG(オリジナル)カラーで、絶大な人気を誇りました。
僕的には、配色よりもモデルそのものに注目してほしいと思います。1987年に出たエア マックス 1はエア マックスの一発目になりますけど、その8年後にこのデザインが誕生するという面白さ。もちろん、デザイナーが変わったなどいろいろな要素はあるかもしれませんが、エア マックスの無限の可能性が垣間見えます」。1995年の発売当初は、その革新的なデザインから物議を醸したエア マックス 95。しかし、異例の大ヒットを記録したことで、“エア マックス狩り”と呼ばれる社会現象にまで発展した。
「エア マックスといえば、このイエローグラデが主流ですが、今履くならブラックがおすすめです。レギュラーカラーだからいつでも手に入れられる色ですし、これがひときわ格好良い。すごく大人っぽいので、オーシャンズ世代にもぴったりな一足でしょうね」。初登場から長い月日が経っているものの、その威光はいまだ色褪せない。そして、黒がまたさまざまなスタイルに合うと太鼓判を押す。
「僕ならスポーティなスタイルに合わせたいですけど、カジュアルなセットアップとも相性はいいですね。女性でも履いている方をよく見かけます。
エア マックスの定番が欲しい、ボリュームのある靴が欲しいとなったら、このエア マックス 95は視野に入れておくべきでしょう」。
発売から20年後にバズった傑作
【3足目】エア マックス 97
3足目もまた、オーシャンズ世代にとってはノスタルジーを誘うモデルである。
「リリースされた当時、僕は小学生だったのでリアルな時代感やシーンの温度感は分かりかねますが、他の諸先輩方や有識者の方から伺ったところによると、まったく売れなかったらしいんですね。『ワゴンセール行きになった』なんて話も聞きました。でも、20年後、2017年に20周年ということでこのOGカラーが復刻されたんです。そのときにめちゃくちゃバズったんですよ」。
これもまたスニーカーの不思議なところ。そして、エア マックス 97を薦める理由もそこにある。「これは僕なりの解釈なのですが、このデザインを出すのが早過ぎましたね(笑)。当時の若者たちは、ついていけなかったのかもしれません。ただ、形はほとんど変わっていないにもかかわらず、20年後に売れるというのは、時代性にもマッチしたのだと思います」。まさに、2017年の靴を1997年に持っていったかのような、バック・トゥー・ザ・フューチャー的ストーリー。
「今履くのにふさわしいエア マックスだと思います。
近未来的な見た目ですが、エア マックス 95に比べるとボリュームはやや控えめ。程よく洗練されている分、スタイリッシュに見えると思います。女性なら、マキシワンピや長丈のスカートといった女性らしい服装のハズしとして合わせている方をよく見かけたりしますね。多種多様な使い方ができるのがエア マックス 97の魅力なのかなと」。--{}--
履き心地を重視するならコレ!
【4足目】エア マックス プリデイ
そして、いよいよここからは“シン”のエア マックスを。こちらは履き心地においてさらなる高みに上った感のある一足だ。
「2021年に発売されたモデルになります。僕がこの色を手にした理由は、大人っぽいシブいカラーだったから。そして、いちばん注目してほしいのがソールですね」。そもそもエア マックスは、エアを可視化したビジブル エアという独自の衝撃吸収システムを初搭載したモデルとしても知られる。こちらにもその名残は感じられるが……。
「ここをご覧ください。エア マックス 1と比べるとよりエアを視認できる窓が大きくなっています。
さらに、ミッドソールの白い部分が、めちゃくちゃ柔らかいんですよ」。
「歩行時、ソールがかかとから地面に接地するときに、まずヒールのエアの反発性を感じられ、そこからトゥへ行く際に、ミッドソールの柔らかさを感じられるという、歩きやすさを考え抜いた構造が素晴らしい。もちろん、エア マックス自体、ナイキの中では履き心地に優れたモデルではありますが、僕が従来抱いていた履き心地のイメージを凌駕しましたね」。その感触たるや雲上の心地良さ。ぜひとも試してほしいとG-KEN先生は熱弁する。
「見た目はもちろん大事ですけど、歩行時のサポートシステムは重要です。プリデイは今すぐ手に入れられないかもしれませんが、ちょうど先日、アッパーがフライニットになったモデル『エア マックス フライニット レーサー』が販売されました。プリデイと同じソールを採用しているはずですから、ぜひ、この履き心地を体感してみてください」。
アウトドアでも存在感を出せる一足
【5足目】エア マックス テラスケープ プラス
トリを飾るのは、現代社会を象徴したようなモデルだ。
「これは、一部にリサイクル素材を使ったサステナブルなモデル。これを手にすることにより、地球環境の改善に協力しているような心持ちになります」。ただ、このモデルをオススメするキモはまた別のところにある。
「ベースは、1998年に発売された『エア マックス プラス』というモデル。フットロッカーという、海外ではポピュラーなスニーカーショップがあるのですが、その専売アイテムだったんですね。ナイキとフットロッカーの共同開発でエアを作っていましたしね。ようやくアトモスでも販売できるレーベルになり、今は徐々に普及してきたかなという印象です」。
「エア マックス プラスって、ヨーロッパのストリートではちょっとしたステータスになっていて、これを履いていると周りから一目置かれるらしいんですよ。そういうのも相まって僕も普段から履いていたりするんですけど、その上位互換というか、こちらはさらにレベルアップした一足。見た目もアウトドア感がありますし、今の空気にハマりやすいですよね。個人的にはエア マックス プラスも、BW同様、再評価されてもいいと思っています」。さらに、気の利いた配色が着こなしに取り入れる際のハードルを下げているとG-KEN先生。
「独特なパーツを採用してますけど、配色にガチャつきがないので、スタイリングにすんなり馴染んでくれます。アウトドアが注目を集める中で、ストリート出身のエア マックスでも存在感を出せる一足なのかなと思いますね」。◇G-KEN先生曰く「エア マックスは日々、進化しているシリーズ。だからこそ掘り甲斐があって、飽きさせず、コレクター魂を触発する」とか。ひとまず、この5足の中のどれかを一度履いてみてほしい。そうすれば、彼の言っていることがより分かってもらえるだろう。