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「Camp Gear Note」とは……

SNSを中心に、アウトドア好き以外にも認知を広げ続けているシンプルなアルミ製クッカー「メスティン」。特集を組む雑誌やレシピ本が次々登場し、今や100円ショップでも売られる(500円コーナーにあり)ほどの人気ぶりだ。

長年アウトドアで使われ続けてきた名品だが、実は案外間違った使い方をしている人が多い。そこで今回はこのクッカーの特性を再確認し、メスティン向きなキャンプレシピを検証してみたい。

[超初級〜上級]話題のメスティンに最適なキャンプ料理を検証してみた
「メスティン」とは商標ではなく、「MESS+TIN」=「食事用の缶」を意味する言葉。

メスティン最大の特徴は、軽量かつ強靭なアルミを用い、薄手に作られていることにある。アルミは熱を素早く均一に伝えられる素材。つまり、持ち歩きに便利かつ、中身を素早く温めることができるつくりなのだ。

この特徴はメスティンの長所であると同時に短所でもある。

熱伝導が良い薄手の素材なので、火が当たる部分だけが焦げつきやすく、決して万能な調理器具ではない

食材を焼くこともできなくはないが、よほど火加減に注意しないときれいに仕上げることは難しい。つまり、焦げを気にしなくてもいい使い方こそが、メスティン向きな調理法と言える。

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温め直せる弁当箱として使うも便利。写真のモデルは山形のアウトドアショップ「ディセンバー」のオリジナルカラー。


【超初級編】
できあいの惣菜を蒸してみる

もっとも簡単かつ間違いのない使い方は、できあいの惣菜を蒸すことだろう。

肉まんや餃子、焼売などをサッと蒸すだけ。このひと手間で立派な一皿が出来上がる。特にキャンプで焚き火をつけたり、食材を準備したりしている間にささっとこんな1品が出せれば、仲間に一目置かれること間違いない。

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できあいの惣菜でも、アウトドアで熱々の出来たてを食べると十二分なご馳走になる。美味しそうでしょ?

蒸し方は簡単。鍋底に網状のトレイを敷き、少しだけ水を入れ、お好みの食材を並べて蓋をして火をつけるだけ。数分あれば、あっという間に温まる。

網状のトレイはオフィシャルのものが発売されているし、キッチン用品コーナーでぴったりサイズのものを探してみるのもいい。

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網状のトレーは、鍋底に置いたときに少しだけ高さが出る構造になっている。


【初級編】
いろいろな食材を蒸してみよう

もう少し踏み込んでみたいなら、次はお好みの素材を揃えて蒸してみよう。

おすすめは季節の野菜+お好みの肉の組み合わせ。肉にだけ塩で軽く下味をつける。

野菜にも先に味をつけると余計な水分が出てしまうので、野菜はカットしたらそのまま蒸す

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食べるときに好みの調味料でいただく。塩胡椒だけでも美味しいし、ポン酢やマヨ+柚子胡椒なんて組み合わせもあり。

基本は惣菜を蒸すときと一緒で、蓋をして火をつけるだけで出来てしまうが、より美味しく仕上げたいなら火の通りにくい食材から順番に蒸すといい。

例えば、根菜などをある程度蒸してから、肉やキノコ類など火の通りやすいものを追加する。小さなことだが、食材に火が入り過ぎず、美味しくいただける。

底に蒸した水分と食材から出たスープが溜まっているので、食材を蒸したあとは麺やご飯を追加しての〆もあり。

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根菜類から蒸し始める。水を入れ忘れて空焚きしないように注意したい。

 


【中級編】
蒸し煮に挑戦してみよう!

さらにレベルを上げてみよう。次なるステップは蒸し煮。

この調理法もメスティンに向きな調理法のひとつである。

メスティンは、安定感はあまり良くないため、スープや鍋もののような汁気の多い料理は注意が必要だが、水分量の多くない蒸し煮なら吹きこぼしてしまう心配も少ない。

とはいえ、水分がなくなると焦げついてしまうため、火加減と水分量の見極めが大事なので、中級者向きとしておきたい。

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醤油やラー油をかけてみたり、アレンジは自由自在。

用意する食材は、豚バラの薄切りと白菜だけでOK。干し椎茸や干しエビもあると、より旨味が濃くなる。

塩胡椒をした豚肉と白菜を交互に鍋に詰め、和風顆粒出汁、日本酒少々を全体に振りかけて、蓋をして蒸す。

手順は以上。

干し椎茸を使う場合は、戻し汁も一緒に入れてあげよう。白菜からたっぷりと水分が出るので、水を入れる必要はない。

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火が入ると食材が縮むのでみっちりと詰めよう。水を入れないほうが旨味が濃い。

豚肉に火が通れば食べられるので、蒸し時間は10分もあれば十分。

火力は沸騰するまで中火で温め、沸いてからは弱火にしてじっくり蒸し煮にするイメージで。

下の写真のように蓋に箸やスプーンを当てると、蓋を取らずとも中身が沸騰したかが確認できる

玄人っぽい仕草なので、ぜひお試しいただきたい。

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沸騰し始めると、スプーン越しにクツクツと沸いている感覚が伝わってくる。


【上級編】
お米を炊いてみる

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コツさえ抑えれば炊飯も可能だが、アウトドアではちょっと上級者向き。まずは自宅でコソ練を積んでからデビューしたい。

最後に上級編としてお米も炊いてみよう。

よく「お米が美味しく炊ける」と紹介されているが、そもそもメスティンはお米を美味しく炊くことに特化した構造の製品ではないことをお忘れなく。

特に風が吹いたり、寒い時期のアウトドアでの炊飯は至難の技である。このことを念頭に置きつつ、メスティンでの炊飯のコツを考えてみよう。

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ハンドルのリベットの真ん中が1合分の水分量の目安。今回はトマトを一緒に炊いたので、基準点より若干少なめにしてちょうどよかった。

お米1合を炊くのには通常サイズがぴったり。ハンドルのリベットが入れるべき水分量の目安となるので覚えておこう。

アウトドアで炊く際のポイントは、まずじっくりと浸水する時間を取ること。炊き初めは強火→沸騰したら弱火で10分→火を止めて10分蒸らすが基本工程となる。

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バーナーは火口が広いタイプとの相性がいい。バーナーパッドの併用も有効。

前述の通り、熱伝道が良いため、火口が狭く点で温めるバーナーでは焦げてしまう。火口が広いタイプが望ましい。さらに、火力を分散させて全体に広げてくれるバーナーパッドを組み合わせるとベターだ。

火の当たる面を動かしてみたり、沸騰したタイミングで一度蓋を開けて、全体をかき混ぜて熱の入りを均等にするのも効果的。

蒸す際にも冷えやすいため、厚手のタオルなどに包むといい。

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熱しやすい=冷めやすいので、蒸らしの工程はいかに熱を逃さないかがポイント。

と、ここまで実践してみて分かったのは、やはり決して簡単になんでも作れる道具ではないということ。

しかし、特徴を考慮して、シンプルな調理法を選べば、手軽に美味しいものが作れることも事実。出来上がった料理をそのままテーブルにサーブすると見た目も可愛いく、温め直しも利くのでキャンプにはあると便利だろう。

調理法や火加減などを考えねばならない点は、裏を返せば料理の基本を身に付けるには最適な道具だとも言える。料理の腕を上達させてくれる調理道具と考え、試行錯誤をしながら末長く付き合っていただきたい。

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[取材協力]
OUTDOOR SHOP DECEMBER
http://december.shop-pro.jp

「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る

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池田 圭=取材・文・写真