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「Camp Gear Note」とは……

格好いいけどイマイチ不便。もしくはすごく便利なんだけど見た目がイマイチ。

こういうギアって、案外少なくない。

カナダのオンタリオ州に暮らすジョージ・リスカラも、手持ちのアウトドアギアに僕らと同じようなジレンマを抱えていたひとり。でも、不満を言ってばかりの僕らと違って、彼は「ないならば、作ってしまえホトトギス」とばかりに思い切った行動に出た。

今回は、そんな彼が立ち上げた新進気鋭のアウトドアブランド「ウルフ&グリズリー(Wolf & Grizzly)」のお話。


日常的に使うには、デザインと機能の両立が不可欠

デザインエンジニアが設計すると、グリルと焚火台はこんなにスタイリッシュになる!
焚き火の上に広げて設置するだけ。使い方は至ってシンプルだ。

ブランドの立ち上げ時、ジョージはデザインエンジニアとして働きながらアウトドアを楽しんでいた。必然、道具のデザインや造りへのこだわりは人一倍強かった。

「当時、私の地下室に眠っていたBBQグリルは、大き過ぎて武骨でデザイン性に欠けていました。

使う機会も少なく、1年のほとんどをガレージで埃をかぶって過ごしていました」。

そこで彼は、「もっとデザインに優れ、耐久性の高さと持ち運びやすさを兼ね備えたギアなら、フィールドでも庭先でも年中使う機会が増え、日常からアウトドアを楽しみながら生活できるようになるのではないか」と考えるようになった。

デザインエンジニアが設計すると、グリルと焚火台はこんなにスタイリッシュになる!
美しくシンプルなデザインに、デザインエンジニアならではのこだわりが垣間見える。

思い立ったら即行動。

しかし、資金がない。

そこで、2017年の夏にキックスターターを利用して開発資金をファンディングしてみることにした。まず、思いついたのは焚き火にかぶせて使うシンプルなグリル。

彼が掲げた「バックヤードからバックカントリーまで使える」というテーマに対し、まさにグリルは打ってつけのギアだったのだ。

デザインエンジニアが設計すると、グリルと焚火台はこんなにスタイリッシュになる!
キックスターターを活用したことで、資金だけでなく、大きな注目を得ることにも成功した。

結果は大成功。目標額に対し、220%以上もの基金が集まり、数多くのメディアでも取り上げられた。そして、このグリルがブランドとして初の製品となったのだ。

さらに、エンドユーザーから集まった製品に対するたくさんのメッセージにより、ジョージは自身のブランドと製品の方向性に自信を深めることとなる。

ちなみに、この製品は「グリルM1」と名付けられた。

Mは、Mobility(モビリティ=可動性・移動性・機動性)の頭文字で、その初号機ということで「1」が付けられたそうだ。


製品化第2号はグリルの用途をさらに広げる焚火台

デザインエンジニアが設計すると、グリルと焚火台はこんなにスタイリッシュになる!
シンプルな焚火台として単体として使ってもいいし、グリルと組み合わせてクッキングシステムとして使ってもいい。

グリルの発売から2年後、ビジネスが軌道に乗り始めると、次は「グリルM1」をベースに何か“システム”を提案できないかとジョージは考え始めた。

そこで製品第2号として手掛けたのが、グリルの下に置く焚火台「ファイヤーセーフ」だ。

「グリルM1を初めて展示会に出展した際に、現在の日本のパートナーであるエイアンドエフがブースに立ち寄ってくれました。『焚火台は作らないのか? 日本は直火禁止のキャンプ場が多いので、焚火台があるとよりこのグリルも生きてくるはずだ』と言われたのを今でもはっきり覚えています」。

カナダのキャンプ場にはファイヤーピットが設置されており、そこで直火を焚く文化がある。山や川など自然の中でも同様で、指定されたキャンプエリアであれば直火で焚火ができるのが普通だった。

しかし、近年は山火事の危険性から焚き火禁止のトレイルが徐々に増え、今では大半のトレイルで直火が禁止されている。

「バックパッカーが持ち運べるサイズの焚火台があれば、グリルM1との親和性もあり、コンパクトな焚火料理のシステム提案ができるのではないかと思いつきました」。

デザインエンジニアが設計すると、グリルと焚火台はこんなにスタイリッシュになる!
グリル同様、所有欲を満たすスタイリッシュな装いも魅力だ。

「製品化にあたって、携帯性、汎用性、耐久性、デザイン性の4大要素を融合させた形を見つけるのがとても難しい。焚火台も携帯性とそれに相反する耐久性を最小限のパーツで両立させることが、もっとも苦労したポイントです」。

そう話すジョージだが、グリルに続き、仲間のインダストリアルデザイナーらの助けを得て、焚火台でもこの難題をなんとかクリア。結果、この製品は昨年のグッドデザイン賞を受賞するほどの完成度に仕上がった。

同じコンセプトの製品があれば、使える用途やシーンはさらに幅が広がる。日本にも一昨年に上陸を果たし、ウルフ&グリズリーの思いと製品は世界中に広がり始めている。


現在のラインナップは潔く3点のみ!

デザインエンジニアが設計すると、グリルと焚火台はこんなにスタイリッシュになる!
グリルの支点に使われているケーブルは、耐荷重性に優れた航空機用ステンレスケーブルを採用している。

今シーズンからは調理の幅を広げる新ユニット「クックセット」がラインナップに加わった。

3つの製品はどれも、耐腐食性、耐熱性、耐久性に優れた食品グレードの304ステンレススチールを100%使用している。また、耐久性と環境的な観点から余計なコーティング処理はしていない。

このスタイリッシュなステンレス感とシンプルなデザインが、なんとも言えない男っぽさと高級感を演出している。

デザインエンジニアが設計すると、グリルと焚火台はこんなにスタイリッシュになる!
新製品「クックセット」の詳細は、後編にたっぷりとお伝えしよう。

クックセットを含め、現在のラインナップは3点しかない。

しかし、それぞれの組み合わせを考えてみると、3製品だけないとは思えないほど多彩な使い方ができることに驚かされる。むしろ、この3つでできることを工夫する、アウトドア本来のおもしろさに溢れている。

デザインエンジニアが設計すると、グリルと焚火台はこんなにスタイリッシュになる!
これ一台で、焼く・炒める・蒸す・茹でる・煮る・燻すといったさまざまな料理が作れる。

今後は「バックヤードからバックカントリーまで幅広いフィールドで日常的に使えるアウトドアギア」という観点から、徐々に製品点数を増やしていく予定だそう。

どの分野のラインナップが増えるのかは未知数だが、独自の視点とデザインの美しいギアを作ってくれることはギャランティだろう。M2、M3と新たなアイデアが生まれる日が、今から待ち遠しい。

デザインエンジニアが設計すると、グリルと焚火台はこんなにスタイリッシュになる!

 

[問い合わせ]
エイアンドエフ
03-3209-7575
https://aandf.co.jp/brands/wolf_grizzly

「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る

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池田 圭=取材・文 宇佐美博之=写真