「Camp Gear Note」とは……
春休み、GWと楽しみなイベントが続き、外に出る機会が増えてくるこの季節。仲間が集まったら、物置からBBQグリルを引っ張り出して、ビール片手に味付き肉やソーセージをワイワイ焼くだけでも楽しい。
でも、せっかくならもうワンランク上のアウトドア料理も作れるようになってみない?
そこでこの春におすすめしたいのが、焚き火を活用した「焚き火料理」なるジャンル。焚き火を囲みながら美味しいご飯も作れてしまうという、一石二鳥な料理なのだ。
木の燃える香りや焦げ味を料理に生かす
焚き火料理について教えてくれるのは、アウトドアコーディネイターの小雀陣二さん。今月上梓したばかりの『焚き火料理の本』をはじめ、これまで数々の料理本を出版してきたアウトドア料理のプロフェッショナルである。
そもそもガスバーナーを使ったほうが料理は簡単に作れそうなものだが、あえて小雀さんが焚き火料理をすすめるのはなぜだろう?
「焚き火と料理を同時に満喫できるのが、焚き火料理の魅力です。火を自在に操る焚き火の醍醐味を楽しみながら、木が燃える香りや食材の焦げ味を料理に生かせる欲張りな楽しみ方なんです」。
「焚き火料理と言っても、BBQのように直火で焼くだけではありません。
なるほど。キャンプ用にダッチオーブンやスキレットを買ったのに、すっかりタンスの肥やしになってしまっている人が、自宅で練習するのにもちょうどいい。早速、焚き火料理のコツを聞いてみよう。
火加減が命。薪が燃えているうちは、料理にはまだ早い?
「BBQも含めて、皆さんが失敗しやすいのが火加減です。炎が落ち着いたいわゆる『熾火(おきび)』の状態が、料理にちょうどいい火加減の目安。薪が燃え盛っているところで食材を焼こうとしても、すぐ真っ黒に焦げてしまいます」。
熾火とは、薪が燃え切って炭のようになった状態のこと。炎がないと食材が焼けないように考えてしまうが、炭化した薪は十分調理ができる熱を持っている。焼こうとし過ぎないことが、火加減のポイントだそうだ。
小雀さんは料理を進めながらも定期的に薪を焚べ、この熾火の状態を上手に保っていく。
「炎を思うままに操れるようになるのも、焚き火料理の魅力です。回数を重ねるたびに、焚き火が上手になり、思い通りに燃やせるようになります。
慣れないうちは料理と並行してではなく、まずしっかりと熾火作りに集中して、それから料理を始めると良いでしょう」。
ポイントは、細い薪ではなく火持ちのいい太い薪を使うこと。選べるならば、針葉樹よりも長く燃え続けてくれる広葉樹がおすすめだ。
調理方法は実に多彩だ。網焼きだけではなく、こんなにいろいろな料理に焚き火が使えるのかと驚かされる。
「網焼き(グリル)以外にも、ロースト、ソテー、ホイル焼き、吊るし焼き、煮込みなど、道具と火の使い方でいろいろな調理ができます。料理や食材ごとに使い分けられるようになると、焚き火料理が一段と楽しくなりますよ」。
炭火に食材を直に置いて焼く調理法なんて、使いこなせたら仲間に一目置かれること間違いないだろう。
塊肉を焚き火で焼いてみよう
ちなみに、小雀さんのおすすめ焚き火料理とは?
「豪快に塊肉を焼いたローストビーフなんてどうでしょう。
小さめの肉から始めてみると失敗が少ないそう。早速、コツを教えてもらおう。
用意する食材はお好みの塊肉と塩のみでOK。
「常温に戻しておいた肉全体に塩をすり込みます。あとは焚き火の上に針金などでぶら下げて、のんびり遠火で焼いていきます。
実際に見ると、本当に焼けるのか心配になるくらいの位置にぶら下げていたが、手をかざしてみるとしっかり熱が当たっているのがわかる。
「これくらい焼けたらいいんじゃないかな」。
火から下ろした塊肉を10分ほど休ませてからカットすると、中は見事な焼き加減! どうして小雀さんは、カットする前に中の焼け具合がわかるのだろう。
「表面にいい焼き色がついてきたら、吊るしたままの肉を指で押してみてください。カットしなくても感触で焼け具合がわかります。薬指と輪を作った親指の付け根の固さが、ちょうどいい焼き加減の目安です」 。
これは自宅でステーキやローストビーフを焼くときにも使えるスキルなので、覚えておこう。
「焚き火は炎が燃え上がるのを眺めているだけでも気持ちが癒やされます。その時間に手軽に料理も作れるレシピを考えてみました。
こんな時代だからこそ、ルールとマナーを守りつつ、外で気持ち良く焚き火料理を楽しんでください」。
「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る
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池田 圭=取材・文 矢島慎一=写真